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「存在理由」 (リーグ第12節・清水エスパルス戦:2-0)

IAIスタジアムでの取材対応は、従来のミックスゾーンと近い形式だった。

十分な距離を取った上での柵越しなどいくつかの制限付きだが、チームバスに乗り込む選手を呼び止めて、対面で話を聞けるというものだ。

この日のミックスゾーンでの一番人気は、脇坂泰斗だっただろうか。

背番号14を身に纏った今年、ついに生まれたJリーグでの初ゴール。得点1アシストを記録し、この試合の主役と呼ぶにふさわしい活躍ぶりを見せた。

「自分の理想としては、チームが悪い状況でもチームを勝たせる。チームを助ける。そういう選手になれるようになりたいです。まだまだ程遠いですが、今日のようにゴールやアシストで貢献したい」

実はIAIスタジアムは、2019年にプロ初ゴールを記録した縁もあった。長く背負っていくであろう14番でプレーしていく決意を新たに口にする地ともなったわけ
だ。

■自分がチームに何をもたらせるのか。

攻めの主役が1得点1アシストを記録した脇坂泰斗だったならば、守りの主役は左のセンターバックに入った車屋紳太郎だろう。

 ACLで復帰を遂げていたが、リーグ戦での出場となるとFC東京との開幕戦以来だ。谷口彰悟とともにハイラインを形成すると、クリーンシートに貢献。マッチアップしたFWは前節1得点2アシストの鈴木唯人だったが、この試合はシュート0。ほとんどチャンスを与えなかった。

 ただし、こうした仕事ぶりは大前提なのだろう。むしろ攻撃でどんな違いをもたらすことが出来るのか。彼は「自分が出ている意味」を考えて、この日のピッチに立ったことを明かしている。

「僕自身で言えば、自分が出ている意味というか、リズムを作るところですよね。簡単にボールを動かすところは動かしながら、インサイドの選手に縦パスを狙いながら、ボールを回せていました。そこは良かったと思います」

 自分がチームに何をもたらせるのか。
開幕戦での右肩関節脱臼により離脱し、リハビリに取り組んでいた期間だけではなく、去年からそのことをずっと考えていたと明かす。チームとしての危機感も敏感に感じ取っていたからである。

「今のフロンターレに足りなかったつなぎの部分。4-3-3をずっとやっている上で、チームとして、昔に比べると落ちてきているかなという感覚はありました」

 現在採用しているスタイルは、相手を圧倒するために、鬼木達監督が2020年から打ち出した攻撃的4-3-3システムである。この戦い方でリーグ連覇を達成するだけではなく、様々なJリーグ記録を塗り替えるなど猛威を振るった。

 ただリーグ優勝を遂げた2020年のオフには守田英正、21年の夏には田中碧と三笘薫、そしてリーグ連覇を達成した今オフに旗手怜央など主力の入れ替わりによって、近年は攻守で圧倒し続けるサッカーは徐々に陰りが見えてきていた。それはプレーしている選手達も少なからず感じていたようだった。

 さらに車屋は言葉を続ける。

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