見出し画像

「空と君のあいだに」 (リーグ第21節・ベガルタ仙台戦:1-0)

等々力陸上競技場でのベガルタ仙台戦は1-0で勝利。

決勝弾を決めたのは、小林悠です。

仙台守備陣はしっかりとした4-4のブロックを構えていましたが、背中を取ってしまう動きで相手のマークを「外す」ことで、三笘薫との二人だけの関係でも崩してしまいました。あの密集しているエリアでも、高い技術を持っている出し手と受け手の呼吸が合えば、二人で攻略できる。どちからといえば、風間前監督時代によく見ていた崩し方でしたね。

それにしても、小林悠は仙台戦でよくゴールを決めますね。今年はアウェイゲームでも2得点を決めています。そしてホームでも得点を挙げました。

ちなみに今年から仙台を指揮している木山隆之監督。小林悠にとっては、恩師なんです。

話は今から12年前の2008年。

当時拓殖大学の3年生だった小林は、JFA・Jリーグ特別指定選手で水戸ホーリーホックのユニフォームに袖を通してプレーしているのですが、その時にオファーをしたのが木山監督だったんです。

 その頃の小林は、関東大学サッカーリーグ2部でやや目立ち始めた程度の存在だ。ただ当時の水戸のチーム事情もあって、特別指定の打診を受けたというわけです。その経緯を、小林はこう振り返ってます。

「拓殖大学と水戸で練習試合した時に、僕がけっこう活躍したんですね。ちょうど水戸のFWがケガ人だらけで、荒田くん(荒田智之)ぐらいしかいなかった。そこで木山監督から『ぜひ力を貸して欲しい』と言われました。ちょうど前期が終わって大学リーグが休みで、僕からしたら『よろしくお願いします』という気持ちだけでした」

夏休み限定の所属ということもあり、水戸での試合出場は5試合だけ。それでもプロ選手とともに練習場での日常を過ごし、Jリーグという舞台で経験を積んだ濃密な1カ月は、彼のキャリアの中で大きな糧になっていると言います。

「リーグのスカウトも見に来てくれるようになりましたし、自分にもプロになるチャンスがあると感じるようになりました。水戸での経験は自分にとって大きかったです」

 あれから12年。
Jリーグでの小林悠の存在は、語るまでありません。2017年にはチームを初優勝に導き、自身はJ1得点王にも輝きました。その年のJリーグ年間最優秀選手を受賞し、Jリーグの歴史にも名前を刻む選手になっています。

そんな恩師との対戦で見せた小林悠の決勝ゴール。ある意味で、「恩返し弾」だったと言えますね。木山監督からすれば、「ここで決めるなよー」と思ったかもしれませんが・笑。

・・・とまぁ、昔話を長々と書いてしまいましたが試合のレビューはここからが本題です。今回のラインナップはこちら。

■「いつ動く、いつ立つのか。そこは試合を重ねると、もっとよくなるという感覚が自分にはある」(中村憲剛)、仙台戦も彼にしかできないプレー、彼のところで難しいボールが収まる。狭いスペースで受けながら、プラス、味方の狭いスペースに出せる」(鬼木監督)。今や最激戦区のインサイドハーフ争い。そこで「違い」を見せたケンゴの挑戦

■「チャンスがあれば、中からオーバーラップをかけていいと言われています。個人的にも中でプレーするのは好きなので、うまくボールを扱いながら、自分らしくプレーできたと思います」(ジオゴ・マテウス)。いつになくボールが集まってきた右サイド。ビルドアップのリズムを担ったジオゴが示したポジショニングと、潤滑油としての役割。

■「ボールホルダーのカオル(三笘薫)がフリーだったので、動き直す時間があってうまくスペースに走り込めました」(小林悠)。守備ブロックも無力化したチャンスメーカー・三笘薫とラインブレイカー・小林悠が見せつけた呼吸。そして、鬼木監督が目指している領域とは?

■「途中から出てくる選手は疲労の中で戦った選手。なかなか後半にパワーを出せるかは半信半疑でした。逆にいうとパワーが出なくても、なんとか勝ちに持っていかなくてはいけない」(鬼木監督)。指揮官が感じた、中二日のタフ過ぎる一戦に臨む采配の難しさ。

■「ロッカールームの雰囲気を見ても、みんな勝ち慣れている。たくましくなったなと感じていますね」(中村憲剛)。「誰一人浮かれていない。それは大事だと思ってます。勝っても、負けてもそんなに気にせず、次、次というのはできるようになってきている」(鬼木監督)。常勝チームに変貌を遂げている鬼木フロンターレ。指揮官とバンディエラが証言する、試合後のロッカールームの光景とは?

以上、5つのポイントで全部で約11000文字です。今回は証言中心のレビューにしてみましたが、たっぷりと書いたので、ぜひ読んでみてください。

なお、プレビューはこちらです。→試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ第21節・ベガルタ仙台戦)

では、スタート!

ここから先は

9,699字 / 1画像

¥ 300

ご覧いただきありがとうございます。いただいたサポートは、継続的な取材活動や、自己投資の費用に使わせてもらいます。