「ここにしかない景色 」 (リーグ第6節・セレッソ大阪戦:1-4)
最初の失点からキックオフまでの間。
等々力競技場に鳴り響く手拍子は、どんどん大きくなっていた。
声は出せない。
チャントも歌えない。
だから、力強い拍手で選手たちを鼓舞し続ける。
コロナ禍でのフロンターレのサポーターは、そんな姿勢でホームスタジアムでチームをサポートし、Jリーグタイ記録となる25試合無敗を支えてきた。
鬼木達監督になってから、攻撃だけではなく、守備の局面でもサポーターから拍手が起きる頻度は増えている。いわゆる、「守備でも魅せる等々力劇場」である。
例えば、新人だった時代の守田英正は、自分がボールを奪った際に鳴り響く拍手がたまらなく心地良いと話していた。
「等々力でやる雰囲気は他とは違いますね。ボールを奪ったときに拍手が起きたりするので、やる気が出るし、やりがいがあります。派手ではないプレーでもサポーターが沸いたりする。サッカーをやってない人じゃないとわからない部分でも、フロンターレのサポーターはわかっている」
そして2020年からはコロナ禍による制限で、声援やチャントはなくなった。だからこそ、だろう。試合中のプレーに対する等々力で起きるフロンターレサポーターの拍手には、よりメリハリがつき始めている印象だ。
例えば前回のホームゲームだった名古屋グランパス戦。
1-0でリードしていた72分。GKランゲラックが味方からのバックパスを処理しようとする場面で、知念慶が猛然とアプローチを仕掛けて行った時のこと。
間合いを詰めてボールを繋がせず、タッチラインにうまくボールを蹴らせてマイボールにすると、その守備に等々力がワッと沸く。すると次の瞬間、知念慶は観客席を煽る仕草を小さくしていた。
あまり慣れていないのか、どこか控えめな煽り方だったのが知念らしかったのだが、これに呼応しサポーターから大きな拍手が沸き起こり、手拍子のリズムも一層大きくなって響き渡っている。
サポーターがプレーに拍手でリアクションし、選手もそれに反応するアクションを見せ、スタジアム全体が盛り上がっていく。等々力らしい光景だ。
ちなみに等々力でのサポーターの煽りといえば、かつては中村憲剛の専売特許だった。でも、彼はいない。そんな精神を受け継いだのかどうかはわからないが、誰か1人だけがやるのではなく、いる選手の多くがやるようになり始めているのが面白いところだ。もっと、いろんな選手がやって欲しいと思う、個人的には。
このセレッソ大阪戦に向けたオンライン囲み取材でのこと。
負けなければJリーグ新記録となる、ホーム26試合無敗がかかっている一戦。現在の等々力で生まれているサポーターの拍手のメリハリについて、鬼木監督がどう感じているのかを尋ねてみた。サポーターの拍手の力もあってこその25戦無敗だと思ったからだ。
指揮官は「声を出せないのは、すごく残念ではありますよね。それに、この状況に慣れたくないという思いもありますが」と前置きした上で、こう述べた。
■(追記:4月4日)「意識と配置と憧憬」。佐々木旭の縦パスの背景にあった3つのポイントとは?
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