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「ゴールだけ見つめてる」(リーグ第6節・ベガルタ仙台戦:3-2)

 ユアテックスタジアム仙台でのベガルタ仙台戦は3-2で勝利。

 2点のビハインドをひっくり返しての逆転勝ち。リーグ戦5連勝となりました。

さて。

試合前の話ですが、連戦が続くと、スタメン予想だけではなく、戦前の展望もなかなか読みにくいところがありますね。

 例えば今節であれば、試合当日のエルゴラッソやスタメン予想のサイトを見ると、仙台の3トップの真ん中は長沢駿ではなく赤崎秀平が先発する予想もありました。連戦で選手を入れ替える木山監督の傾向を踏まえての予想だったと思いますし、自分は仙台の練習を取材しているわけではないので何も言えませんが、その可能性も十分にあったのだと思います。

 ただプレビューで長沢駿をキーマンに挙げたように、自分としては彼をスタメンで起用するのではないかと思っていたんですね。

 なぜかというと、木山監督が2年前の2018年天皇杯・川崎フロンターレ戦で勝利した時の戦法を、多少なりとも採用してくると思ったからです。

 J2のモンテディオ山形が、J1連覇目前のフロンターレに勝つのは大会の番狂わせでした。3-0とリードして2点追撃をされたものの、山形が逃げ切った形ですが、当時の試合後の会見で木山監督はこう振り返っています。

「フロンターレさん、皆さんお分かりだと思いますけど、日本で一番質が高いチームだと思います。そのチームに対して我々がやれること、しっかり頑張って全員で守備をして、粘り強く戦っていく。それを選手たちがピッチで実践しましたし、ゴールもそこの部分に関しては我々がなんとか活路を見いだすために、カウンターとセットプレーにパワーを注いでいこうと言っていたので、それで取れたのもよかったのではないかなと」

 つまり、この時の勝因はセットプレーとカウンターでした。立ち上がりにセットプレーでリードを奪い、その後は狙い済ましたカウンター。そのカウンターの中心になっていたのが、サイズのある阪野豊史(現・松本山雅)のポストワーク、そしてそこからドリブラー・汰木康也(現・浦和レッズ)のスピードでした。

 もちろん、当時の山形と現在の仙台は戦力も戦術も違いますし、フロンターレも2年前とは違います。ただ木山監督は、セットプレーはもちろんのこと、長沢駿を起点にしたポストワークと、スピードのあるジャーメイン良を生かしたカウンターは「勝利するための戦法」として、プランに組み込んでくるという予感はありました。

そう考えると、動き出しで勝負する赤崎秀平より、ポストワークが得意な長沢駿は外せないのではないかとの読みです。ただ赤崎秀平は、ワントップではなく左ウィングでゲデスに代わって先発する可能性はあるとは思いましたが、いざ蓋をあけると、ベンチ外だったのは意外でした(西村拓真がスタメンに入りました)。

 ただ試合では、去年に続き長沢駿に決められて、今季初めてとなる2点のビハインド。一方の木山監督とすれば、あの時の天皇杯と同様に、前半だけで2点のリードを奪う展開に持ち込めたわけです。

・・・とまぁ、そこからもたくさんの思惑が交錯したゲームでしたが、詳しくは本文でたっぷりすぎるほど語っています。

今回のラインナップはこちらです。

■「センターバック同士のパスも距離があって上手いタイミングで回された。まずは真ん中にいて、アンカーの選手を消すようにバランスは意識していた」(長沢駿)。4-5-1で構える仙台守備陣と、ボールを動かしながら打開策を探り続けた川崎CBコンビ。我慢比べの中で試合を動かしたもの。

■なぜ脇坂泰斗はあの位置でボールを持っていたのか。ビルドアップに変化を生み出そうとした位置取りから読み解けるもの。

■後半の逆襲を生んだ、中盤の流動性。縦横無尽のトップ下・家長昭博が作り出した攻撃の拠点と絶妙なアクセント。

■「自分がゴールを決めて、チームを勝たせる。それをピッチ全員に伝えたかった」(小林悠)。圧巻の2ゴール1アシスト。何かを掴んだ去年のターニングポイントと、今年の彼が見据えているもの。

■あれから2年。恩師・木山隆之監督との再戦で、小林悠が示した恩返し弾の意味。

以上、5つのポイントで全部で約13000文字です。書きすぎましたが、その分、ボリュームたっぷりです。よろしくどうぞ。

なお、プレビューはこちらです。答え合わせにどうぞ→試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ第6節・ベガルタ仙台戦)

では、スタート!

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