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「世界中の誰よりきっと」 (リーグ第25節・ヴィッセル神戸戦:3-0)

 受け手が動きで相手を外すのか。それとも、出し手がパスで外すのか。

勝利を決定づけたこの日の3点目のゴールに関して言えば、出し手がパスで外して生まれたゴールだった。

 攻撃で大事なのは、相手を見ることである。そして相手の届かないところにパスを出せば、味方はフリーで受けられる。ごくごく当たり前のことだが、川崎の14番はそれが出来る選手である。

「横パスをもらう時に、山田新がフリーになればいいなと思っていました。オープンに(ボールコントロールを)置いたことで、(相手に)外を見せてどうなるかなと思ってて。ソウタ(三浦颯太)とヒナタ(山内日向汰)にちょっとなびいた感じがあったので、出しました。点差もあって相手を余裕を持って見れました」(脇坂泰斗)

 この場面、左足でボールを止めた瞬間、脇坂泰斗は相手守備陣の矢印を観察していたという。すると、左サイドにいた山内日向汰の流れる動きに釣られて、神戸のボランチとセンターバックの重心が真ん中から動いた。それによってパスコースも生まれた。いわゆる、閉ざされていた中央の門が開いた瞬間だ。

 それを、川崎の14番が見逃すはずがない。

 そこから山田新に届けたパスも絶妙なボールだった。

ゴール前の門は開いており、山田新のマークもすでに外れた状態である。ならば、強くて速いボールを足元に向けてトラップからシュートに持ち込ませるのではなく、そのままでも流し込めそうなほどのスピードに調整して足元に届けた。なぜなら、それが山田新の得意な形だからだ。

「あとはうまくターンしてくれれば。ボールをさわると、彼はミスをするので(笑)。そこにうまく通せて良かったです」

 脇坂泰斗は、そう満足気に微笑んでいた。この辺の「してやったり顔」は先代の14番にそっくりである。

 決めた山田新は、これで2試合連続2ゴールを記録した。

今シーズンは個で打開していくような得点が目立ったが、最近は味方とのコンビネーションでゴールネットを揺らすパターンが増えている。この場面もそうで、「自分がトラップしなくても、ターンできるボールをくれたので。ヤスくん(脇坂泰斗)がしっかりと自分を見てくれていました」と、出し手に感謝しきりだった。

 ちなみに前節の柏レイソル戦での2ゴールはヘディングによるもの。この試合も、自身の1点目はヘディングで押し込んだゴールである。足でゴールを決めたのは、いつ以来になるのだろうかと調べたら、第19節のアルビレックス新潟戦だった。

 そう。アディショナルタイムに逆転されたものの、そこからのパワープレーで起死回生なる劇的な同点弾を決めて敗色濃厚のチームを救った、あのゴールである。

 魂でねじ込んだようなゴールだったが、奇しくも、あの引き分けからチームはリーグ戦7試合負けなしとなっている。今思うと、新潟戦での山田新が土壇場で決めたゴールが、いかに大事だったのか。僕はそんなことまで思い出していた。

 これでチームトップの9ゴール。
チームの勝敗を徐々に背負いつつある男は、こう胸を張る。

「自分がチームのストライカーだという思いはあるので。しっかり結果、数字で引っ張っていければいいかなと思います」

そう言って、ミックスゾーンでの取材対応を終え、一番最後にチームバスに乗り込んで行った。

※8月9日、週末のFC東京戦に向けたオンライン囲み取材があり、三浦颯太が対応をしました。神戸戦の振り返りもあり、山田新のヘディングゴールに繋がったクロスの場面などを少し掘り下げて聞きましたので、追記しておきます。そしてこの神戸戦でチームが表現したボールを握るサッカーに関する感想を聞いてみると、大島僚太の存在にも触れてくれました。ぜひ読んでみてください。

→■(※追記:8月9日)「神戸相手でもボールを握れるっていうのはこのチームの強さですし、楽しいサッカーだなと思いました」(三浦颯太)。ボールを失わずに攻撃し続ける。久しぶりの等々力のピッチで三浦颯太が満たされたもの。


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