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「タマシイレボリューション」 (リーグ第8節・柏レイソル戦:1-0)

■(追記:4月13日)柏戦で得た「タマギワレボリューション」

 リーグ第3節・ガンバ大阪戦前だから、あれは3月初めの時期だ。

 練習後のオンラインの囲み取材に対応したのが遠野大弥だった。
直近の浦和レッズ戦では左ウイングで今季スタメンを果たし、まずまずのパフォーマンスを披露。それを踏まえて、ガンバ大阪戦に向けた意気込みを語ってくれていた。

 昨シーズン、期限付き移籍から復帰した彼は、初めてとなったJ1の舞台でリーグ戦27試合に出場した。途中出場も多かったが、チャンピオンチームの選手層で5位となる6ゴールを記録したのは立派である。

 チームが採用する4-3-3のシステムでは、左右のウイングやインサイドハーフなど複数ポジションで起用された。ただ攻撃的なポジションを幅広くプレーした一方、自分の勝負できる適正ポジションには悩んでいたような印象も受けた。もちろん最適解を導き出すのは鬼木達監督の仕事なのだが、まだまだ彼の最大値は出力されていなかったようにも感じた一年だった。

 そして今シーズン。
同じアタッカータイプとも言えるチャナティップが加入した中、遠野大弥をどう起用していくのか。指揮官のみが知る領域だが、遠野自身にとっては去年の経験をどう糧にしていくかもテーマになっていくはずだろう。そんな疑問を尋ねてみると、彼はこう語ってくれた。

「去年1年は自分もいろんなことを学ばせてもらったシーズンになりました。今年は、その学んだものを生かすシーズンにしたいと思ってます。どこのポジションで出ても、自分の良さを出せることが自分の強みだし、そこは去年よりも増えているかなと思います」

 とはいえ、である。
遠野大弥がやりやすく、そしてもっとも輝ける役割は、やはりトップ下なのではないかというのが、去年一年を通しての個人的な見解だった。

 今季の開幕戦を覚えているだろうか。

寒空の等々力競技場で行われたFC東京戦だ。この試合終盤はその思いを抱かせるに十分だった。0-0のまま時間が進んだ76分、鬼木監督がベンチにいた遠野大弥を投入してからの展開のことである。

 脇坂泰斗に代わって入った遠野が起用されたポジションは、ウイングでもインサイドハーフでもなかった。指揮官は4-3-3から4-2-3-1のシステム変更を打ち出し、セカンドストライカータイプである遠野がもっとも機能しやすいであろうトップ下に配置したのである。ワントップにはレアンドロ・ダミアンがおり、彼と縦関係になるような役割だった。

 そう。期限付き移籍で在籍した2020年のアビスパ福岡時代、コンビを形成していたフアンマとの関係性を思い出させるような距離感でのプレーだ。この年、遠野大弥は41試合に出場し、チーム最多の11ゴールを記録。トップ下に君臨するセカンドストライカーとして猛威を振るい、J1昇格に多大な貢献をした輝きぶりは、やはり眩しいものがあった。ターゲットマンとなるストライカーの近くでプレーしてお互いを生かす関係性はお手の物だ。

「自分が入って点を取ることをオニさんが期待してくれた。ダミアンは相手を背負えて強い。ダミアンの近くにいてサポート、追い越していくことを意識していました」

 試合後の遠野は、そう話している。
実際、それまで苦心していた攻撃が循環し始め、ダミアンと遠野大弥のコンビからチャンスの匂いが漂い出し、早速、遠野がエリア内のフィニッシュまで持ち込んでいる。

 このシュートはGKスウォビィクに弾かれるも、そこに知念慶が反応。相手にクリアされるが、そこからCKを獲得した。そしてご存知のように、決勝弾はこのCKから生まれた。キッカーは遠野大弥で、決めたのはレアンドロ・ダミアンである。

 開幕戦で仕事をした遠野は、試合後にこんな頼もしい言葉も残している。

「僕らの世代、ケント(橘田健人)など若い選手がチームを引っ張らないといけない。どんどん気持ちを出してやっていきたい」

三笘薫、旗手怜央、田中碧・・・・東京五輪世代はチームを離れたが、遠野も年齢的には東京五輪世代だ。

 ここで冒頭の話題である。
こうした経緯もあり、オンラインの囲み取材に対応してくれた遠野大弥に、「チームは4-3-3ですけど、トップ下があるシステムがやりやすいんじゃないかと勝手に思ってます」と、トップ下願望について、水を向けてみたのである。

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