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「ラストシーンに愛をこめて」 (天皇杯決勝・ガンバ大阪戦:1-0)

国立競技場での第100回天皇杯決勝戦は、ガンバ大阪に1-0で勝利。

天皇杯、初優勝しました!!

下馬評ではフロンターレ有利の声があったのは事実ですし、試合も優勢に進めました。ただ一発勝負の舞台は、やはり簡単ではなかったのを感じたファイナルでした。

 追加点が奪えず、仕留めきれずにいると、残り10分を切ってからははっきりと押し込まれる形になりましたからね。

 そしてあそこからが正念場でした。2019年のルヴァンカップ決勝ではラストプレーのCKで失点。4年前の天皇杯決勝では、セットプレーのセカンドチャンスから隙を見せてやられています。

 ここでどれだけ耐えられるのか。あの残り数分が、自分たちの成長を試される時間帯だったと思います。そこを見事に耐え切った。最後のセットプレーを車屋紳太郎がヘディングでクリアすると、木村博之主審のホイッスルが、ようやく鳴り響きました。

その瞬間を出場することなく迎えた中村憲剛は、近くにいた控えGKの丹野研太とハグをし、その後はベンチに下がっていた大島僚太と噛みしめるように抱擁していました。正真正銘の現役ラストマッチとなった中村憲剛を優勝で送り出すことができて本当に良かった。

現場にいたものとすれば、ピッチ脇にいる中村憲剛の様子を試合中もちょくちょく伺っていたのですが、いかんせん、記者席からだとベンチ越しになるので、うまく見えませんでした。

 ただアップし続けている姿を見ていて感じたのですが、他の選手よりも明らかに、ストレッチや柔軟をこまめにやり続けているんですよね。

 それにはちゃんと彼なりの理由があります。
自分の中で「しなやかなプレー」をイメージしているので、その稼動域を広げるために、試合前は特に柔軟をこまめにしていると話してくれたことがあります。

 思えば、中村憲剛の繰り出すプレーの秘密もそこにあったはずです。
例えば現役ラストアシストを記録したリーグの浦和戦。その小林悠に出した周囲を驚愕させた反転パスがまさにそうで、あれは彼の技術を支える身体の柔らかさがもたらしたものでもあると思います。ピッチ脇でストレッチや柔軟をやり続けている姿を見て、そんなことを思い出していました。

さて前書きを長く書いてもあれなので、本題に入ります。ラインナップはこちらです。

■メンバーを変えなかった鬼木達監督。変えないと見せかけて、巧妙に変えてきた宮本恒靖監督。スタメンとゲームプランにあった両指揮官の思惑とは?

■「相手の5枚のところで、誰を食いつかせていくのか。そこを明確に出来れば良かったと思います」(鬼木監督)、「サイドに蓋をしてくる感じはあった」(家長昭博)。封鎖された両ウイングによって苦戦を強いられた幅を取り方とニアゾーンの攻略。前半にゴールネットを揺らせなかった理由。

■「チャンスを逃したチームだということで自分を奮い立たせてこの試合に臨んだ部分もありました」(大島僚太)、「GKもうまく釣ることができたので、逆サイドに流し込めてよかった」(三笘薫)。4-3-3の新たな機能性を示した中盤3センターの共存。そして旗手怜央の展開から始まり、三笘薫が冷静に仕留めた決勝弾。

■「4年前であれば、もしかしたら、我慢し切れずに最後の10分間で、失点していてもおかしくなかったシーンだったと思います」(鬼木監督)。耐えて勝ち切る強さを示して掴んだ初優勝。そして「守り切るためのケンゴ」ではなく「勝ちに行くためのケンゴ」だったからこそ、中村憲剛を投入しなかった指揮官の思い。

「どうしてもこの試合は勝ちで終わらせたい理由があった」(家長昭博)、「自分が引っ張ってく覚悟を持って戦っていきたい。ケンゴさんには感謝しかない(大島僚太)。ケンゴの魂は、確かにそこにあった。

■「言うことなし。こんな素晴らしいサッカー人生の終わり、誰も予想していないと思います」(中村憲剛)。決勝当日の振り返り。そして、最後の選手コメント文字起こしを終えて。

■(※1月7日追記)「だから、自分なんですよ。自分で自分をモチベートしていくしかない」。成長を語る時、ケンゴが語ったこと。そして、あの時に書いてくれた不思議な言葉。(中村憲剛の回想記:2017年)

■(追記:1月10日)。天皇杯優勝から約10日後に思うこと。

以上、8つのポイントで全部で約20000文字のボリュームになっています(読み逃さないよう、追記分はタイトルを太めにしてます)。いろんな思いを込めて、たくさん書いた天皇杯の優勝レビューです。ぜひ読んでみてください!

なお、プレビューはこちらです。優勝に向けて、どんな準備、雰囲気づくりをしていたのか。そんな話を書いてます。→試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(天皇杯決勝・ガンバ大阪戦)

では、スタート!

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