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ステイタス・クォーの「ロックンロール」

はじめに。いままでnoteに書いたもので、ステイタス・クォーの文章を覗きに来てくれる人が自分が思っていたよりずっと多いことに気づきました。クォーの文章は需要があるんでしょうか。日本のメディアに取り上げられることが極端に少ない彼らについて、これからちょこちょこ書いていけたらと思っています。日本のクォーファンの皆様、よろしくお願いいたします。

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"ロックンロール"という言葉がタイトルに使われた曲はいくつもある。ロックンロールの始祖チャック・ベリーの「ロックンロール・ミュージック」から始まった、"ロックンロール"を冠した曲は1970年代以降になると次々に登場する。​


 ただし、"ロックンロール"という言葉だけをそのままタイトルにした曲はそれほど多くない。「ロックンロール」というタイトル曲で最も知られているのはレッド・ツェッペリンの曲だろうか。激しいドラムから始まるこの曲はロックンロール黎明期にあった原初のロックンロールの定型をよりハードなかたちで表した名曲である。
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「ロックンロール」は正統的なロックンロールの構成にアレンジを加え、ポップなトーキング・ブルーズのようなものに仕上げられた。(ランナウェイズがこの曲を原初のようなかたちでカヴァーしているのもおもしろい)


2000年以降はロックンロールの定義が多様化し、こんな曲も生まれるようになった。


 そしてここからが本題、ステイタス・クォーの「ロックンロール」だ。クォーといえばロックンロールを知り尽くしたバンドである。ブルーズやブギを基調としたゴリゴリの重いロックンロールから、ソフトでポップな味つけをほどこした軽いロックンロールまで、ロックンロールというものにいまもひたむきに取り組んでいるのがクォーというバンドだ。
 そんなクォーが1980年、デビュー12年にして突如発表したのが、タイトルそのまんまの曲、「ロックンロール」である。自分はそのタイトルを初めて目にしたとき、「おっ」と唸らずにはいられなかった。なんといってもあのクォーが「ロックンロール」というきわめてストレートなタイトルの曲を、この年になってあらためて作ったのだ。
 はたして、彼らの「ロックンロール」はクラシカルなロックンロールを踏襲した温故知新なものなのか? はたまたいままで自分たちが築いてきたロックンロールを、ポスト・パンク/ニュー・ウェイヴに沸く時代に呼応した新しいスタイルで打ち鳴らすものなのか? ハードでエッジの効いたロックンロールでファンを魅了してきた彼らが1980年に放つ「ロックンロール」とは? いろいろな想像を膨らませながら、初めてこの曲を聴いたときのことは忘れられない。

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