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Live AidでのStyle Council

※本当はライヴ・エイドの日、7月13日にアップする予定でしたが、いろいろと用事が重なってしまい、一か月以上遅れてのアップです。ステイタス・クォー、ザ・フーに続く、ライヴ・エイドネタ第三弾です。有料ですが、ご興味ある方はぜひ!

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 スタイル・カウンシルがアルバム『Our Favourite Shop』をリリースしたのはライヴ・エイドの2ヶ月前。多面的なポップ音楽を志向していたポール・ウェラーの豊かな音楽性が散りばめられたこのアルバムはまさしく創作意欲の爆発を感じさせるばかりだった。しかし、このころの彼のアクティブな行動はバンド活動だけにとどまらなかった。自身のレーベル、Respondレコーズの運営に、新人アーティストの発掘、そしてそれら所属アーティストへの全面的なプロデュース。さらにウェラーは政治的なイベントへの積極的な参加や、ビリー・ブラッグらとレッドウェッジでの活動に乗り出そうとしていた。そんなタイミングで彼らはライヴ・エイドに参加したのである。

 バンド・エイドに参加し、さらにライヴ・エイドにも出演する。それはウェラーの信条からして当然の行動だったと思える。ジャムのころから社会的な歌詞を直情的にうたってきた彼も、『Our Favourite Shop』では、その社会的メッセージを、幅を広げた音楽性に載せ、あたかもドラマのように担々と紡ぐようになった。その軽やかな曲調とは裏腹に、弱者の現実を静かに語る彼の言葉には現代社会で生きることの息苦しさがあふれていた。劣悪な社会制度のもと、食べるものに困窮するエチオピアの人々の姿が彼の目にどう映っていたのか。彼にとってチャリティの誘いを断る理由はなかっただろう。
 ライヴ・エイドを主催するボブ・ゲルドフにとって、全英チャートのトップに立ったばかりのスタイル・カウンシルの出演は望むところだったはず。ただ、彼はウェラーに対してある強い懸念をいだいていた。

 話しはバンド・エイド結成時にさかのぼる。ゲルドフはこのプロジェクトの参加者にこれがあくまでもチャリティを目的にしたものであることを強調した。飢えに苦しむ人たちに食べ物を提供するためのプロジェクトであり、それ以外の何物でもない。飢餓の問題について個人的な意見は少なからずあるだろうけれども、このプロジェクトでそういった政治的な意思表示は一切しないでほしいということを周知徹底した。ゲルドフは特に、この当時、社会活動に積極的に乗り出し、自身の立場をより明確にしていたウェラーにそのことを念押ししたという。そしてウェラーはその言葉を受け止めた。「Do They Know It's Christmas?」のビデオに映るウェラーが、どことなく小さく、遠慮がちに見えるのはそのせいだろうか。彼の姿はプロジェクトのなかでのウェラーの立ち位置を象徴しているように見える。


 そしてライヴ・エイドだ。スタイル・カウンシルは2番手の出演。意外にも早い出番となった彼らは4曲を演奏した。既発のDVDソフトでは2曲が収録されただけだったが、近年、YouTubeの公式チャンネルで4曲すべてがアップされている。すべての演奏曲を順にみてみると、この4曲に当時のウェラーの思いや姿勢があらわれているように思えるのだが、そのあたり、少しばかり検証してみよう。

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