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願多パーラー

うちなーんちゅは、とにかく話し好き、とくに本土からやって来た人間に沖縄の魅力を紹介することには意識してなかったとしてもとても熱心だ。


いってらっしゃいませ




近所を流れる川沿いの遊歩道をぶらぶらと散歩していたら、小さな灯りがついている店先でお姐さんがひとりベンチに座っていたので、果たしてこれはなんの店なのだろう、と立ち止まったところ、

「ここのビール、美味しいわよ」
と。

ビール?ここ飲み屋さんなんですか?と聞いたら、「あがりえさーん」と店の奥の店主を呼んで「お客さん、ビールだって」と勝手に注文してしまったので
まあ、そういうのもよかろう、とベンチに座る。

なんかビールが美味しいって聞いたんですが。と出て来た店主のおじさんに聞いてみたら
「そうよー、ここはあの知名商店から樽貰ってるからさー」

知名商店というのは、名護のオリオンビール工場の目の前にある酒屋。
そこで供されるサーバーのビールは、工場から直送して来た出来立ての一杯ということで大変評判で人気なのだ。

「お兄さん、どこから来たの?」

どこからって話をすると長いですが、生まれは北海道です。と枝豆をつまみながら答えると、
一様に「北海道!」と。

店主のおじさんが、「50年前にさー、スキー旅行で連れて行ってもらって、それはそれは楽しかったわけよ」と思い出話をはじめる。
「なにしろ雪を見るのも生まれて初めてだからさー。というか、その時一度きりしか雪なんか見たことないんだけどねー」

「寒いとこなんでしょー?」とお姉さん。

はあ、まあ、でも北海道生まれとしてはですね、東京の方がむしろ寒く感じました。

「ああ、雪国は家の断熱とかがそもそも違うからねえ」と店主。



「そうね、東京寒いわね、銀座とか」と、お姐さん。

ん?
銀座?!

銀座?

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