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アンジェラ・アキ

旅先での大阪の夜。

あてもなく高速道路の高架下をぶらぶらと散策中に、ふらりと立ち寄ったバーで割と気分良く呑んでいると、

「お客さん観光ですか?」

と暇を持て余したらしいバーテンダーが話しかけてきて

「どちらからですか?」
と聞くので、

徳島から来たと言うと
!徳島!と満面の笑顔に。



「実は徳島には思い出がありまして」

ほう

「ワタシ当時学生だったんですけど、相当病んでまして」

ふむ



「アンジェラ・アキさん、ご存知ですよね?
彼女のある曲を聴いて人生が変わるくらいの衝撃を受けまして」

ほうほう



「偶然故郷の徳島で凱旋ライブをやる、ということを聞きつけまして、矢も盾もたまらず深夜バスにのって瀬戸内海渡りました」

へー、なんて曲?と聞いたら

「最初のアルバムの最後に収録されてる曲なんですけどね。ぜひ聴いてみてください」



その晩は、へー、オイラいささか病んでるように見えたのかな?
などと思ってそのままお店を出たのだけれど、その後妙に気になって、その曲を聴いてみたくなった。

アンジェラ・アキ
彼女は、いわゆるメジャーデビュー後のファーストアルバムである「Home」以前に、「ONE」というインディーズアルバムをリリースしているらしい。



くだんのバーテンダーさんからは、最初のアルバムの最後の曲、としか聞いていなかったので(というかそれしか覚えていないので)果たして彼が指しているのが「ONE」収録の「愛するもの」なのか、「Home」収録の「Your Love Song」だったのかは、いささか判然としないのだけれど、実際両者を聴いてみると、後者が英語の歌詞であることと、歌詞の内容からおそらくは「愛するもの」の事を言っていたんだろうなと。



そんなわけでアンジェラ・アキ

実のところはオイラには、彼が言うほどには、つまり人生が変わるほどの衝撃を受けることは無かったんだけれども。
要するにそれはオイラがまだ心をそれほどは病んでいないということで喜ぶべきところなのかもしれない、と。



そんなことを、あの店名も覚えてないお店の記憶として思い出すのだ。

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