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栄町市場
ゆいレール安里駅を降りて、賑やかな栄町市場の奥へと足を運ぶ。
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先輩、最近例のあの映画観てきたらしいですね。
「ああ、うん。そうね。観てきたよ。」
どうでした?
「うーん、そうだねぇ。極端にマザコンでロリコンの老人の白昼夢を、延々と見せられてたような、そういう2時間だったなあ。」
それはまた(苦笑)
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「想像するにね、あの映画は例によって絵コンテもまだ完成してない段階から、つまりラストまでの物語が形をなしてない状態で、作画などの制作をスタートせざるをえなくなって、途中で恒例の路線変更、極端な内容改変、大幅なシーンのカットなんかを繰り返して、本人にも辻褄が合わなくなったり訳がわからないシロモノになってしまったんじゃないかと想像するね。
試写会での監督コメントなんかもそういう印象だった。」
たしかにそんなニュアンスのことは言ってましたね。
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「むしろね、映画の内容云々よりも、近頃はネットに溢れてる感想を読んでゲラゲラ笑ってる。」
なんですかそれは。
「例えばね、
「途中で10分ほどうつらうつらしてしまったけど絵が綺麗だったので星5です!」
「内容は難しくて、ずっと頭の中が???でよくわからなかったですが、エンドロールに米津玄師の「地球儀」が流れてくると、涙がボロボロこぼれてきました。」
「どの婆さんが滝沢カレンか結局わからなかったけれど、彼女が最優秀賞です!」
「IMAXの音響が素晴らしくてよかったです。感動しました」
みたいなのだよ。」
それは流石にひどいですね(苦笑)
「それは、作品の内容とはほとんど関係ない、言うなればエアコンがとても良く効いていて、快適な2時間を過ごせました!とか、隣の客がマナー悪かったので評価1です!と言ってるのと同じでね。まあ、そういう感想が出てこざるを得ない映画なんだよ、つまりは。」
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そもそもどういう内容の映画なんですか?
「結局は、自分のやってきた事の後継者を求める我儘な老人と、永遠にわかり合えない息子の話かなあ。」
身も蓋もないですね(苦笑)
「そもそも彼は、自分を凌駕するかもしれない若い才能を次から次へと潰してきたような人物だからねえ。
結局血のつながった息子に跡を継いでほしい、という気持ちはあるものの、自分が一番、というエゴからは逃れられないアンビバレントな感情の発露みたいな。」
そう聞くと、相当ひどい人のように見えますが。
「そもそも作品そのものと、そのクリエイターの人格とは分けて考えるべきじゃないの?
素晴らしい作品を作った作者が必ずしも聖人君子である必要はないし、実際そういう事はないよ。」
なるほど。そうですね。
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「ただ今回思ったのはね、あの制作集団はかつて、このまま活劇だけを続けていては先が無い、ジリ貧だと考えて、テーマを広ろげてきた歴史があるのだけれど、ネット上の感想や評価を見ると、少なくない割合のファンが、最初期の作品が一番好きだと言っていて、ファンは依然としてシンプルな冒険活劇を求めているというのは皮肉なものだよね。」
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