見出し画像

オッサン女子、あるいは女子化したオッサン

長かった時短要請期間を終えて、ラストオーダーに追われるように慌ただしく飲む必要がなくなり、満を持していつもの立ち呑み屋に入る。

待ってましたとばかりに若い店主が
「そういえばこのあいだ」と、切り出してきたので
ちょっと身構えて、最近は注文せずとも黙って自動的に出てくるホッピーの瓶を、キンミヤと氷の入ったジョッキに注ぎながら聞く。

画像1


「20代後半から30代半ばくらいかなぁ、仕事帰りらしい女性がふらっと入ってきましてですね」

ほうほう

「表のホッピーのステッカーを見かけて入ってみた、ということで白ホッピーを注文したんですよ」

へえ、それはこのへんでは珍しいねぇ。関東での生活が長かったヒトなのかな。

「それがですね、生まれも育ちもこっちで、実は立ち呑み屋も初体験だったみたいですよ」

ふーん。立ち呑み屋に入った事ないのにホッピーは好きってやや不自然だなあ。
それほんとにそんな若い女性だったの?と半信半疑な私。

「ええ、それで2杯目にそのカウンターの電気ブランが気になったらしくて、飲みたいって言うのですが、割と好みの分かれるお酒なので、ちょっとひとくち味見してからにしたらどうですかって」

ふむふむ。

「そしたら、おいしい!コレくださいって一杯飲んでいきましたよ」

ますます不自然だなあ、それ実は中身はオッサンなんじゃないの?

「(笑)は?どういう事ですか?」

朝起きたら自分が女の子になってしまっているのに気づいたオッサンの話、みたいな

「(笑)なんなんですか、それ」

その超常現象が割と気に入ってさ、色々街に出歩いて試してみたりしてんじゃないの?オッサンなのに、見た目は女の子ってシチュエーションを心底楽しみながらさ

「そ、想像力が凄いっすね、相変わらず」

だいたいね、そんなオッサン趣味の女の子がね、そうそういるかっつーの
今時そんなハニートラップは宗教かネズミ講を疑うね

「なんかやなことあったんすか(笑)」

小熊の皮を被ったトネ・コーケンかよ!

「はい?何ですか?それ」

女子高生を装ってさ、私には何もないとか言って急に脈絡なくカブに乗ってみたり、突如自動二輪免許取ってみたり、電子制御のバイクをディスるわ警官に悪態をつくわ、原付で富士山登るわ、コルトパイソンのモデルガンやらオヤジ趣味丸出しで作者の言いたいことをキャラに投影させてるっていうそうゆうオッサンの事だよ

「はあ、そうなんですか。よくわかんないっすけど」

もうラノベだ、ラノベの世界だよ、そんなものは

「はあ、ラノベですか。読まないんでわかんないっす」

画像3


ラノベといえばさ。

「これこれ、このような時刻にうら若きおなごがなにをしておる」

「オジサン、てかお坊さんか。まあどっちでもいいや、今晩泊めてよ」

「ほほう、そなた泊まる宿がないと申すか、しかし家族が心配しておるであろう」

「でも電車ないし。ヤラせてあげるから泊めてよ」

「いやいや。成る程そこもとの事情、あいわかった。拙僧が悪いようにはせぬ。ご安心召され」

「は?
ちょ、ちょ、ちょっと待って、オジサン何する気?ちょ、助けて!
え?髪?それバリカン?オジサン、な、何するの?
やだやだやめてよ!」

「なに、この地はあの瀬戸内寂聴が生まれた地でござる。
かの尼僧も出家以前は破天荒な人生を歩んできた女性(にょしょう)。
そこもとも今夜からは世俗のしがらみを忘れて修行に励むがよろしかろう。
南無南無」

という
「髭を剃る、そして女子高生も剃る」
というストーリーを思いついちゃったんだけど、どうかな?

・・・?
あれ?ちょっと、聞いてよ。
世知辛えなあ。
あ、あと、ナカおかわりお願いします

画像2


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?