【連載】「いるものの呼吸」#7 演技と幽霊 町屋良平『生きる演技』
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社会性とは演技で、友達の前のわたしとひとりでいる時のわたしは全くの別人なんだよね、なんて言ったりすると「そんなんみんなそうだよね」と返されそうだけど、だけど、なんで「そんなんみんなそう」なのだろうか。わたしたちはなにに要請されそういう「演技」をしているのだろう。その「演技」を要請するなにかを、読者を全く新しい視座に立たせることで現前させる小説、町屋良平の『生きる演技』(河出書房新社)。フィクションの「ほんとう」を胃液すらでなくなるまで吐かせた一つの到達点であった。