石原書房

2023年春創業の出版社です。 取次経由でのご注文はJRCより、別途直取引も承ります。 ご連絡・お問い合わせはinfo(a)ishiharashobo.jpまで。(a)→@  HP:https://www.ishiharashobo.jp/

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マガジン

  • 代表社員・石原が書いたもの

    代表社員・石原が書いたもの

  • 【連載】「いるものの呼吸」金子由里奈

    幽霊、場所、まだ生まれていないものーー。目に見えない、声を持たないものたちの呼吸に耳を澄まし、その存在に目を凝らす。わたしたちの「外部」とともに生きるために。 『眠る虫』(2020年)、『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』(2023年)など、特異な視点と表現による作品で注目を集める映画監督・金子由里奈さんの不定期連載エッセイ。

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最近の記事

業務日誌20241115_街裏ぴんく著『虚史平成』(と書籍版『奇奇怪怪』)

 先日、『虚史平成』(街裏ぴんく著、CDジャーナル)をご恵贈いただいた。  TBSラジオで放送された街裏ぴんくさんの同名番組を書籍化したものだが、収録された虚実ないまぜの平成史はもちろん、脇を固める図版や企画や仕掛けの一つ一つにいたるまで素晴らしく技が決まっており、番組を超えて街裏さんの芸の精髄やそのたたずまい――同番組プロデューサー・松重暢洋さんが本書跋文で絶妙に言い当てているところの「存在のトロみ」と「生温かさ」――が見事に書籍化=本という形で表現されている、ちょっと類

    • 【『改元』刊行記念イベント第2弾】畠山丑雄×円城塔「歴史≠小説の生成」開催決定

      イベント概要 新刊『改元』の刊行を記念して、著者・畠山丑雄さんと作家・円城塔さんのトークイベントを開催します。  「歴史≠小説の生成」と題し、歴史(古典)の読み直し、その小説における書き直しについてなど、円城さんのご近作『コード・ブッダ』にも通じる小説制作の方法を中心に語っていただきます。  終演後には畠山さんのサイン会もございます(会場での『改元』販売あり(数量限定))。奮ってご参加ください! ◆日時  2024年12月7日(土) 14:30-16:00(14時開場)

      • 【『改元』刊行記念イベント第1弾】畠山丑雄×樋口恭介「小説という自由(をもう一度獲得するために)」開催決定

        イベント概要 新刊・『改元』の刊行を記念して、著者・畠山丑雄さんとSF作家・樋口恭介さんのトークイベントを開催します。  SF作家としてのご活動の他、畠山さんが短篇「とにかく大きい洪庵先生」をご寄稿された独自の文芸プラットフォーム「anon press」の運営にも携わる樋口恭介さんと「小説という自由(をもう一度獲得するために)」と題して語り合って頂きます。 ◆日時  2024年11月30日(土) 14:00- ◆参加費  無料 ◆定員  25名 ◆会場  正文

        • 【連載】「いるものの呼吸」#8 散歩をすると

          ***  街にはあらゆる存在者がいる。家を出ると、今日も隣の家の木が煙草を吸っていていた。  挨拶するけど返してもらえたことはない。多分、フルリモートなんだと思う。ほんとうにいつでも車の前でタバコを吸っている。家の中で吸えないのが少しかわいそうだ。  木とすれ違ったあとは、波打つ坂道がやってきて、傾斜に負けないようにつま先は意気込む。ゴミはまだ回収されていない。この駐車場の管理されていない植物たちは終わりという言葉をきっと知らなくて、揺れる葉っぱだけを見たら200年前。最初

        • 業務日誌20241115_街裏ぴんく著『虚史平成』(と書籍版『奇奇怪怪』)

        • 【『改元』刊行記念イベント第2弾】畠山丑雄×円城塔「歴史≠小説の生成」開催決定

        • 【『改元』刊行記念イベント第1弾】畠山丑雄×樋口恭介「小説という自由(をもう一度獲得するために)」開催決定

        • 【連載】「いるものの呼吸」#8 散歩をすると

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        • 代表社員・石原が書いたもの
          3本
        • 【連載】「いるものの呼吸」金子由里奈
          7本

        記事

          【試し読み】「改元」畠山丑雄

          ***

          【試し読み】「改元」畠山丑雄

          【試し読み】「死者たち」畠山丑雄

          ***

          【試し読み】「死者たち」畠山丑雄

          【畠山丑雄著『改元』レビュー】「継承者として 」  磯﨑憲一郎

          *** 継承者として   磯﨑憲一郎  毎月初に出版社各社から届く文芸誌のページを捲ってみても、物書きたる者は同時代的な、流行の課題を扱わねばならないという強迫観念に取り憑かれたかのような文章ばかりが目に付き、辟易させられることが多いのだが、ときおりは希望にも出会す、恐らく明確な決意と共に、しかしそれを喧伝することなく慎ましやかに、小説の長い歴史のわずかな一部分として文章を書いている若い作家もいる。その内の一人は乗代雄介だが、本作『改元』の作者である畠山丑雄もまた、過去に書

          【畠山丑雄著『改元』レビュー】「継承者として 」  磯﨑憲一郎

          【連載】「いるものの呼吸」#7 演技と幽霊 町屋良平『生きる演技』

          ***  社会性とは演技で、友達の前のわたしとひとりでいる時のわたしは全くの別人なんだよね、なんて言ったりすると「そんなんみんなそうだよね」と返されそうだけど、だけど、なんで「そんなんみんなそう」なのだろうか。わたしたちはなにに要請されそういう「演技」をしているのだろう。その「演技」を要請するなにかを、読者を全く新しい視座に立たせることで現前させる小説、町屋良平の『生きる演技』(河出書房新社)。フィクションの「ほんとう」を胃液すらでなくなるまで吐かせた一つの到達点であった。

          【連載】「いるものの呼吸」#7 演技と幽霊 町屋良平『生きる演技』

          【連載】「いるものの呼吸」#6 TIKI BUN映画『悪は存在しない』と『ぼのぼの』

          ***  モーニング娘。の『TIKI BUN』という楽曲にこんな一節がある。  数年前、コロナになってホテル療養してなぜかモーニング娘。の楽曲しか魂に注入できなかった時期があった。わたしはこの曲を聴いて「人でごめん」と泣いた。人がいなければコロナなんて蔓延しなかったこの地球で、人がコロナになって、人が騒いで、人が苦しい。人で苦しい。わたしはどうして人間に生まれてきてしまったのだろう。このどうしようもない資本主義社会に、どうしようもない家父長制(天皇制)国家に。景色は権威が

          【連載】「いるものの呼吸」#6 TIKI BUN映画『悪は存在しない』と『ぼのぼの』

          【連載】「いるものの呼吸」#5 本気の図

          ***  人は思考するときその身体の中で、外で、一体何が起きているのだろうか。以前一緒に住んでいた高島鈴に「金子は風景で思考する人だよね」と言われてハッとしたことがある。言われるまで自分の思考方法を意識したことが全くなかった。確かに私は「考える」という敵に挑むとき、まず最初に頭の中に混線した有線イヤフォンが現れる。それを解いていく作業をする。脳みそに自分の指先が侵入してきて、一本ずつ、解いていく。そういうふうに、頭の中でビジュアルを繋いでそれをタイピングに落としている。なる

          【連載】「いるものの呼吸」#5 本気の図

          【連載】「いるものの呼吸」#4 視線人(しせんびと)の語彙集

          ***  言葉とわたしは一生別れることができない。言葉一切を捨てても、その片鱗は脳味噌の内側にへばりついて取れないだろう。常に言葉がある。わたしはこれからも映画を作ることをやっていきたいなあと思っている。風景で思考しても耳からちょっと出たフィルムを引っ張り出してそのまんま映画館で上映することはできない。風景を人と人が共有できる「言葉」にする。そうした時に、言葉は輪郭を持って来るけど、形や色や手触りをどこかに置いてきてしまう。わたしは言葉が好きで、言葉が嫌い。  いま話してい

          【連載】「いるものの呼吸」#4 視線人(しせんびと)の語彙集

          【前編】大森時生×品田遊(ダ・ヴィンチ・恐山)『IMONを創る』復刊記念対談「IMONを再起動(リブート)する」

           2024年2月17日、いがらしみきお著『IMONを創る』(石原書房)の復刊を記念して行われた大森時生さんと品田遊(ダ・ヴィンチ・恐山)さんの対談「IMONを再起動する」(於・SCOOL)の模様を二回に分けてお届けします。  2023年末、30年の時を経て復刊された『IMONを創る』。デビューから近作『人間一生図巻』に至るまで、人間とその世界の実相を描き続けるいがらしみきおさんの時代をはるかに追い抜いた思想の核心が書き込まれた本書を、大森さんと品田さんとともに読み解きます。

          【前編】大森時生×品田遊(ダ・ヴィンチ・恐山)『IMONを創る』復刊記念対談「IMONを再起動(リブート)する」

          【後編】大森時生×品田遊(ダ・ヴィンチ・恐山)『IMONを創る』復刊記念対談「IMONを再起動(リブート)する」

           2024年2月17日、いがらしみきお著『IMONを創る』の復刊を記念して行われた大森時生さんと品田遊(ダ・ヴィンチ・恐山)さんの対談「IMONを再起動する」(於・SCOOL)の模様を二回に分けてお届けします。  2023年末、30年の時を経て復刊された『IMONを創る』。デビューから近作『人間一生図巻』に至るまで、人間とその世界の実相を描き続けるいがらしみきおさんの、時代をはるかに追い抜いた思想の核心が書き込まれた本書を大森さんと品田さんとともに読み解きます。(前編はこちら

          【後編】大森時生×品田遊(ダ・ヴィンチ・恐山)『IMONを創る』復刊記念対談「IMONを再起動(リブート)する」

          【連載】「いるものの呼吸」#3 まどのそとのそのまたむこう

          ***  私はいま冬のベルリンにいる。朝7時。あたりはまだ真っ暗で、朝日の気配はない。外に出る。歩道の真ん中に堂々と立つ自転車が私を見ている。タバコはそこら中に落ちていて、植物は枯れたまま大きくなっている。灰色の湿度。風が爽やかに肌を刺す。そういえば、とふと思い出す。大江健三郎著『取り替え子』の登場人物である長江古義人はこのベルリンで「quarantine」を過ごした。自殺した友人・塙吾良の魂からできるだけ遠ざかるために。  その吾良のモデルになった伊丹十三監督の『タンポ

          【連載】「いるものの呼吸」#3 まどのそとのそのまたむこう

          【連載】「いるものの呼吸」#2 山登り納得派

          ***  山は登れる墓である。隆起した古墳のように、それはある。わたしはいつも半分死にに行くつもりで山に登るのである。だって、山で人は死ぬから。つまづいたら死ぬ。この風がもう少し強かったら死ぬ。暗くなったら死ぬ。大きなザックには行動食、防寒着、それから死も詰め込んで、肌身離さず背負って歩くのである。安らぐこの場所。死の気配、幽霊と近い。喧騒からは遠い。  八ヶ岳の黒百合ヒュッテで会ったとある登山者がいた。季節は冬で、山小屋にはその人と私たちだけしかいなかった。熱い甘酒に舌が

          【連載】「いるものの呼吸」#2 山登り納得派

          【連載】「いるものの呼吸」#1 幽霊とわたし

          ***   小さい頃、見えないものの気配にもっと怯えていた。なにかに見られている気がして、悪さの手を引っ込めたりすることがよくあった。透明から向けられる視線があるということをわたしは「知っていた」のだ。「知っていた」はずの透明を、わたしはいつの間にか失くしかけている。見えることや事実に権威がある社会で、なんの科学的根拠もない、透明な存在たちの居場所はなくなっていく。透明な存在たち。仮にそれらを「幽霊」と呼ぶ。  幽霊という概念がこの世からなくなってしまったら。明日ふつうに目

          【連載】「いるものの呼吸」#1 幽霊とわたし