石原書房

2023年春創業の出版社です。 取次経由でのご注文はJRCより、別途直取引も承ります。…

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2023年春創業の出版社です。 取次経由でのご注文はJRCより、別途直取引も承ります。 ご連絡・お問い合わせはinfo(a)ishiharashobo.jpまで。(a)→@  HP:https://www.ishiharashobo.jp/

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  • 石原の記事

    代表社員・石原が書いたもの

  • 【連載】「いるものの呼吸」金子由里奈

    幽霊、場所、まだ生まれていないものーー。目に見えない、声を持たないものたちの呼吸に耳を澄まし、その存在に目を凝らす。わたしたちの「外部」とともに生きるために。 『眠る虫』(2020年)、『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』(2023年)など、特異な視点と表現による作品で注目を集める映画監督・金子由里奈さんの不定期連載エッセイ。

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最近の記事

【連載】「いるものの呼吸」#4 視線人(しせんびと)の語彙集

***  言葉とわたしは一生別れることができない。言葉一切を捨てても、その片鱗は脳味噌の内側にへばりついて取れないだろう。常に言葉がある。わたしはこれからも映画を作ることをやっていきたいなあと思っている。風景で思考しても耳からちょっと出たフィルムを引っ張り出してそのまんま映画館で上映することはできない。風景を人と人が共有できる「言葉」にする。そうした時に、言葉は輪郭を持って来るけど、形や色や手触りをどこかに置いてきてしまう。わたしは言葉が好きで、言葉が嫌い。  いま話してい

    • 【前編】大森時生×品田遊(ダ・ヴィンチ・恐山)『IMONを創る』復刊記念対談「IMONを再起動(リブート)する」

       2024年2月17日、いがらしみきお著『IMONを創る』(石原書房)の復刊を記念して行われた大森時生さんと品田遊(ダ・ヴィンチ・恐山)さんの対談「IMONを再起動する」(於・SCOOL)の模様を二回に分けてお届けします。  2023年末、30年の時を経て復刊された『IMONを創る』。デビューから近作『人間一生図巻』に至るまで、人間とその世界の実相を描き続けるいがらしみきおさんの時代をはるかに追い抜いた思想の核心が書き込まれた本書を、大森さんと品田さんとともに読み解きます。

      • 【後編】大森時生×品田遊(ダ・ヴィンチ・恐山)『IMONを創る』復刊記念対談「IMONを再起動(リブート)する」

         2024年2月17日、いがらしみきお著『IMONを創る』の復刊を記念して行われた大森時生さんと品田遊(ダ・ヴィンチ・恐山)さんの対談「IMONを再起動する」(於・SCOOL)の模様を二回に分けてお届けします。  2023年末、30年の時を経て復刊された『IMONを創る』。デビューから近作『人間一生図巻』に至るまで、人間とその世界の実相を描き続けるいがらしみきおさんの、時代をはるかに追い抜いた思想の核心が書き込まれた本書を大森さんと品田さんとともに読み解きます。(前編はこちら

        • 【連載】「いるものの呼吸」#3 まどのそとのそのまたむこう

          ***  私はいま冬のベルリンにいる。朝7時。あたりはまだ真っ暗で、朝日の気配はない。外に出る。歩道の真ん中に堂々と立つ自転車が私を見ている。タバコはそこら中に落ちていて、植物は枯れたまま大きくなっている。灰色の湿度。風が爽やかに肌を刺す。そういえば、とふと思い出す。大江健三郎著『取り替え子』の登場人物である長江古義人はこのベルリンで「quarantine」を過ごした。自殺した友人・塙吾良の魂からできるだけ遠ざかるために。  その吾良のモデルになった伊丹十三監督の『タンポ

        【連載】「いるものの呼吸」#4 視線人(しせんびと)の語彙集

        • 【前編】大森時生×品田遊(ダ・ヴィンチ・恐山)『IMONを創る』復刊記念対談「IMONを再起動(リブート)する」

        • 【後編】大森時生×品田遊(ダ・ヴィンチ・恐山)『IMONを創る』復刊記念対談「IMONを再起動(リブート)する」

        • 【連載】「いるものの呼吸」#3 まどのそとのそのまたむこう

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          2本
        • 【連載】「いるものの呼吸」金子由里奈
          4本

        記事

          【連載】「いるものの呼吸」#2 山登り納得派

          ***  山は登れる墓である。隆起した古墳のように、それはある。わたしはいつも半分死にに行くつもりで山に登るのである。だって、山で人は死ぬから。つまづいたら死ぬ。この風がもう少し強かったら死ぬ。暗くなったら死ぬ。大きなザックには行動食、防寒着、それから死も詰め込んで、肌身離さず背負って歩くのである。安らぐこの場所。死の気配、幽霊と近い。喧騒からは遠い。  八ヶ岳の黒百合ヒュッテで会ったとある登山者がいた。季節は冬で、山小屋にはその人と私たちだけしかいなかった。熱い甘酒に舌が

          【連載】「いるものの呼吸」#2 山登り納得派

          【連載】「いるものの呼吸」#1 幽霊とわたし

          ***   小さい頃、見えないものの気配にもっと怯えていた。なにかに見られている気がして、悪さの手を引っ込めたりすることがよくあった。透明から向けられる視線があるということをわたしは「知っていた」のだ。「知っていた」はずの透明を、わたしはいつの間にか失くしかけている。見えることや事実に権威がある社会で、なんの科学的根拠もない、透明な存在たちの居場所はなくなっていく。透明な存在たち。仮にそれらを「幽霊」と呼ぶ。  幽霊という概念がこの世からなくなってしまったら。明日ふつうに目

          【連載】「いるものの呼吸」#1 幽霊とわたし

          いがらしみきお著『IMONを創る』復刊

           石原書房の石原です。  この度、いがらしみきお著『IMONを創る』という本を復刊します。  1992年にアスキー(現・角川アスキー総研)から初版が刊行されて以来長らく絶版となっていたこの本を、なぜ30年も経った今、復刊することになったのか。その経緯は小社の創立にも関わることなので、書いて残しておきたいと思います。 1.乗代雄介さんのブログ『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』のこと 2016年の夏か秋のことだったと思います。私は作家・乗代雄介さんのブログ『ミック・エイ

          いがらしみきお著『IMONを創る』復刊

          創業と『奇奇怪怪』

          石原書房の石原です。今年の初めに出版社の国書刊行会を退職し、一人版元を始めました。 先日、ラッパーのTaiTanさんとミュージシャンの玉置周啓さんによる大人気ポッドキャスト番組を書籍化した『奇奇怪怪』を刊行し、現在各所で話題騒然・好評発売中となっています。 退職から創業一冊目の『奇奇怪怪』刊行まで(刊行してからも)いろんなことがあり、折角なのでその経緯について書き残しておこうと思います。 退職まで今年(2023年)の1月、国書刊行会の編集部から他部署への異動辞令が出ました

          創業と『奇奇怪怪』