影が視界を横切ると同時に音がした。どれほどかの時間ぼんやりと乾燥機のドラムをみていたと瞬間理解する。
それから影は視界の端で洗濯物を几帳面に全部同じ大きさの、正方形、
しかもかなり小型の正方形に畳みだした。
「正方形なんだ…」
(やべっ…声出たっ)
「え?… あ、ああ、はい」
居た堪れない緊張が体中に張り詰め指先が力一杯平静さを装っている。
「私…さっきまでそこに座ってたんです」
(え!文句?)
「でも雨に濡れてきました」
(⁈⁈)(はぁ?)
初めてチラリとその人本体を見るとなるほど濡れていた。
全てをたたみ終えるとすっと立ち上がりカゴを腕にかけて出入口から一歩踏み出した。
そして「虹が出てます」と言った。
「あ…あ…そう…」
何とも間抜けな返事だ…
「雨の後には…
…じゃあ、また」
聞き取れなかったが
そう言って出て行った。
「ふぅ…」
(虹だって?)
「(雨の後には)…虹がでる…か」
それにしても…
雨に濡れにいったって?
何があったのだろうか
泣いていたのだろうか
風邪ひかないといいけど
次にあったらなんて言おう
あの虹の日は
風邪ひかなかったかい?
とか?んー。
もう会うこともないであろうに
あれこれ考えていた
「じゃあ、また」なんていうから…
虹はもう薄れてきていた
-おわり-
今朝は少し寒い
春が第三だか第四だかの青春を1秒も無駄にするまいとしている
それが眩しくてかっこいいなといつも思う。
私は都会の煌びやかな人たちの中で自分だけが不安に嘆いているかのように感じて、贅沢してるくせに皆んないいなぁなどと思うのだ。
私だってその都会の一部だというのにな。
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