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「支援学」(Helping)への招待 #3 - 問いの深まり

今回は、Chapter 1から「人を助けるとはどういうことか」という問いが、深められていく過程を見てみたいと思います。

前回の記事で、支援には二つの意味が含まれていることを見てきました。一つは、支援行為そのものを、もう一つは、役に立つ支援行為が生まれ得るような人間関係(=支援関係)を築くことを意味していました。

「人を助けるとはどういうことか」=「支援関係を築くとはどういうことか」であると言えます。

そのうえで、人と人の出会いが支援関係へと発展するためにはどのような条件が必要なのか?と問いが深められていきます。

われわれが理解しなければならないのは、支援者になる可能性がある人と、クライアントになる可能性がある人との最初の接触から、支援を生み出す関係へどう発展していくかということだ。

『人を助けるとはどういうことか——本当の「協力関係」をつくる7つの原則——』 p.32

支援が成り立つには、支援が生まれたり、支援が受け入れられたりする人間関係を育むことが前提条件として必要なのだ。だから支援を提供しようと思う人は、関係構築について理解する必要があるのだ。そう言っているのでしょう。

そして、そうした支援関係を含む人間関係を築くことの究極的なルールは何か、と問うていきます。

関係を左右する究極のルールのいくつかを検証し、それが支援関係にどう適用されているかを検証するつもりである。支援関係における不公平さと役割の曖昧さを探りたい。

『人を助けるとはどういうことか——本当の「協力関係」をつくる7つの原則——』 p.33

関係構築の究極のルールのなかに、シャインさんは二つの要素を見ています。

一つは、支援する人と支援される人との「心理的な力関係」。シャインさんは、助ける人の方が、助けられる人よりも、心理的に上の立場に置かれると考えていました。そして、その力関係の不均衡が、支援関係の成否に影響を与えるのだと。

もう一つは、「役割の選択」。誰かと関わるとき、無意識のうちに、その場に相応しい応答が返ってくることを期待します。その期待が裏切られると、関係は築かれず、傷つけられたり貶められたと感じることすらあります。適切な応答をするのは、案外簡単ではなく、その場の状況、お互いの価値観や文化などに左右されるものだというわけです。

今日は、「人を助けるとはどういうことか」という問いの深まりを見てきました。シャインさんが支援行為そのものよりも支援関係を築くことに着目している論理を理解しておくと、彼の支援学を捉えやすくなるように思います。

次の「Chapter 2 経済と演劇」では、人間関係構築の究極のルールが考察されていく過程を見ていきたいと思います。

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