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「支援学」(Helping)への招待 #4 - 信頼とは何か

今回から「Chapter 2 経済と演劇」に入っていきます。

シャインさんは、人間関係には経済(価値の交換)の側面があると考えました。本の中でも挙げられているように、日本語にも英語にも「注意を払う(pay attention)」や「敬意を払う(pay respect)」といったお金のやり取りを想起させる表現があります。

人を助けることにおいても、「助ける↔︎感謝する」という価値の交換が行われているというのです。支援による価値の交換を通じて、人と人の間に信頼が蓄えられていく、そんなイメージです。

では、信頼とは何か。信頼には次の二つの要素があると言います。

一 その人間との関係の中で、自分がどんな価値を主張しても、理解され、受け入れてもらえること
二 相手が自分を利用したり、打ち明けた情報を自分の不利になるように用いたりしないと思うこと

『人を助けるとはどういうことか——本当の「協力関係」をつくる7つの原則——』 p.49

この定義は、個人的にはとてもしっくりきます。自分にとって信頼できる人の顔を思い浮かべてみても、これらの点が当てはまります。

誰かに助けを求めることは、程度の大小はあるにせよ、「自分だけでは解決できないことがある」という事実を相手に示すことでもあります。助けを求める側は、自分の弱みをさらけ出したり、相手に頼みごとをしたりするわけですから、気持ち的に一段低い立場に置かれているように感じるかもしれません。

そうした状況で、信頼の二つの要素が満たされないとしたら。自分の助けを受け入れてもらえないのではないか、握られた弱みを悪用されるのではないかと不安に感じて、本当のことを言わなくなります。本当のことが率直に語られなければ、支援が成功する可能性は低くなることでしょう。

シャインさんは、信頼の二つの要素を通じて、支援関係の本質を端的に示してくれているとも言えると思います。

次回も引き続き、「Chapter 2 経済と演劇」の内容に触れていきます。

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