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こんな林業家になりたい

 晶文社さんのnoteで私の連載「山を買う」がいよいよが始まりました。

第1回のこちら、5000字近い長〜い作文の中で一番伝えたいことを最後に書いてしまったので、改めてそこだけを自分のnoteに転載して残しておきたいと思います。

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こんな林業家になりたい

日本の林業は、一言では語れないほど多くの問題を抱えています。特に「木材価格の低迷」はその中心にある問題です。現在より数倍も高い金額で木材が取引されていた時代を知っている山主が「やってられない」と嘆くのも当然のことですが、この人口減少社会において、今後木材価格が飛躍的に向上することはないと考えられています。

 となれば、木材価格の変動に一喜一憂しなければならない事業構造から脱却した、柔軟で力強い林業のやり方を考えていかなければなりません。

 林業経営の出口はだいたい、山で伐採した木を市場に運ぶところまでです。つまり、丸太の状態で売るところまでが林業であるというのが一般的な考え方なのですが、そこで取引された丸太が丸太のまま消費されることはほとんどありません。だいたい製材されて柱や板になったり、ベニヤやチップ、木工品などに加工されたりして使われていきます。

 木材産業の長いバリューチェーンの中で林業が担っているのは川上のほんの一部分に過ぎないので、一本の木が加工され、流通経路をたどり、河口でそれなりの売上げになったとしてもその木の元々の所有者である山主の取り分はほんのわずかになってしまうわけです。

 ここまで聞いてお気づきの方もいるかもしれませんが、木材産業の世界で一番強いのは「山と製材所を持っていて、発信力のあるきこり大工さん」みたいな人です(笑)。川上から河口までの事情を全部知っていて、ひとりでやっちゃってるみたいな。それは極端な例かもしれませんが、守備範囲が広いほど木材価格の変動に影響されにくいというのはある話だと思いますので、川上を担っている人ほど河口方面に歩み寄っていく努力は必要なのだと思います。

 私がやりたい林業は、平たく言うとそのようなものです。自分で伐った木を加工してユーザーに直接届けたいです。現状では製材所もなければ立派な機械も持っていないので、できることはかなり限られていますが、どんなに規模が小さくてもそのような考え方に基づいた林業経営はきっとできるはずです。機械がなければ、人力でもできることの中で作業をすればいいわけですし、木が物理的に重たくて運ぶのに困るのであれば、1円あたりの重さを軽くする加工方法や販売方法を考えればいいのだと思います。

 今回私が取得した山は前述した通り、経済活動をする山としては目も当てられないようなボサボサの状態でした。一本伐れば数十万円で売れてしまう立派な木がゴロゴロしているような山(そのような山は所有しているだけでもお金が入って来ると思います)ではありません。でもそんな状態はむしろ、今の私にとっては好ましいのかもしれません。自分自身が知恵を絞ってカラダを動かさざるを得ないからです。

 幸い、私は自分で木を伐ることが出来ます。自分で伐った木をできるだけ高く買ってもらえる方法を考え実践していくことが私のやるべきことだと思います。

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