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#01 『お名前を書いて』

家族でファミレスに行ったときのこと。

ランチタイムという事もあり、お店は少し混雑していた。入り口に備え付けられた票に、名前、人数などを記入し待合室のベンチに座ってメニュー表を見ながら名前が呼ばれるのを待っていた。

私はそういう状況に出くわすたびに思うことがある。もし名前の欄に「神(かみ)」と書いたらどうなるのだろうかと。みんなもそう思ったことがあるのは、1度や2度ではないだろう。

「四名でお待ちの、神様〜、神様〜」

考えるだけで最高である。待合室にいる人はみんな笑うに違いない。なにせ神様が4名もファミレスに来ているんだから。「神様、安ぅ!」とか突っ込んじゃう人もいることだろう。

しかし、実際はこんなイタズラは既に考慮済みで、店側にマニュアルがあるはずだ。もし名前欄に「神」と書かれていたら、「かみ様」ではなく「じん様」とお呼びすること、といった具合に。

では「仏」と書いていたらどうするのだろうか。

「四名でお待ちの、ほ…ほ…仏様〜」

どうだ、これならマニュアル対応できなかろう。でもあれだ、なんか「神様」のときよりもインパクトが弱い感じがする。それはきっと、仏様ならファミレスに来るんじゃないだろうかと心の片隅で思っているからに違いない。

他にも何かないか考えてみた。「おつかれ」「ごちそう」とか書いたらどうなるのだろうか。きっとこれもマニュアルがあるに違いない。こういった場合は、単なる落書きと認識して、呼ばなくても良いことになっているかもしれない。もしもそうだとしたら、「乙彼」とか「五地層」とか書いて対抗してみたい。

じわじわくる系も考えてみた。

「二名でお待ちの、夏様〜、夏様〜」

たいていの人はスルーしてしまうかもしれない。でも私は確実に拾うであろう。「サマーサマーか!」と。もう少し凝って「夏伊豆」と書いてみたらどうだろうかと妄想が膨らみ、「英会話教室か!」と心の中で突っ込んで処理をした。

そうこうしているうちに、我々の名前が呼ばれた。

「四名でお待ちの、石田様〜、石田様〜」

普通だ。これなら面白い名前を書いておけばよかったとほんの少し思った。が、席を立った瞬間、周囲から笑い声が漏れてきたのである。

「石田様」なんてどこにも笑えるポイントはないはず。それなのになぜ笑い声が漏れるのか。思い過ごしか?いや明らかに私の方を見て笑っている。

真相がよくわからないまま、店員が案内する席にそそくさと歩んだとき、私は赤面した。

肩にはサマーニット、足元はノーソックス。


完全に純一ではないか…


なるほど、そういうパターンもありだなと、私は再び妄想の世界へと羽ばたいていった。

100円くらい意志雄にあげてもいい、それすなわち、隠れイシシタン!