#06　『アルパインライトパンツ』

いきなりユニクロの話していいかなぁ？

なんだかんだ言ってユニクロによく行ったりするんだけど、で結局何も買わずに帰ることが多いんだけどそれでもまたユニクロに行ってしまうのは激安のワゴンをチェックするためだったりする。

この話もしかしたら必要無いかもしれないけど、ここまでしちゃったから話すね。

ごく稀に、これならいいかもという商品にであったりするわけ、ワゴンの中で。何度も値下がって900円くらいになったボトムスとか。そんなユニクロのボトムスが家に5本くらいある。

うわぁ、この話、いらんわ！でも消しちゃうと行数稼げないからこのまま残して続けるね。

で、いつも思うことがあって、安いやつ5本買うなら高くてもいいやつ1本買った方がタンスがすっきりしていいやって…。

というわけで満を持してTHE NORTH FACEのアルパインライトパンツ（15000円くらい）を購入した。デザインはもちろん機能性も抜群で動きやすさ山の如し！（山は動くか知らんけど）

もうこの1本を大事にしていこう、そう思った矢先に、起こったのである。

バスケットボールの試合にアルパインライトパンツを履いて出場したのだが、すってんころりんして膝の部分に穴があいてしまったのである。

ナイロン90％、ポリウレタン10％のパンツ。伸縮性はすこぶる快適でスポーツにも最適な素材ではあるが、摩擦に弱いのだ。

転んで床と擦った部分は溶けて固まっていた。満を持して買ったばかりのパンツの膝の部分に早くも穴があいてしまったのである。

打ち付けた膝はどうってことなかったが、胸が痛んだ。激痛だ。何の花に例えたらいいのかって感じだ。

とりあえずショックを紛らわすために体育館に備え付けられた自販機でジンジャーエルを買って飲んだ。

「こんな味だったけな…」旅にも出たい気分だった。

これが購入して数年後に起こったことならまだショックは小さかったかもしれない。でも、ユニクロのボトムスでさえ買えなかった自分が満を持して買ったばかりのパンツの膝に穴が開くのは相当ショックが大きい。

穴があいた部分は溶けているので単に縫って塞ぐことは難しそうだ。心に空いてしまった穴はなおさらだ。でもそんなことを言っていられないので、なんとか修繕することに。

ワッペンはダサすぎるし、普通に縫うと形がおかしくなる。さて困ったぞと思い何気にインスタを見ていたら、「ダーニング」というおしゃれな補修方法が目に飛び込んできた。詳しくはググって欲しいが、カラフルな色の糸で衣類の穴などを補修する技法で、タテ糸とヨコ糸を何というか、カゴみたいに編むやり方のやつのことだ。（ものすごい説明！）とにかく糸をもすがる思いでダーニングにチャレンジしてみた。

穴があいたパンツの色はネイビーなので、穴を目立たないように補修するためにはネイビーの糸を使えば良い。しかしダーニングはあえてカラフルな糸を使っておしゃれにすることが、ダーナーの間では常識なのである。上級者は蛍光色をうまく取り入れる傾向があるが、家に蛍光色の糸がなかったので諦めた。買いに行けば良いのだが、それは上級ダーナーのやることだから、家にある糸でやることに。選んだのは私の好きなグリーンとベージュだ。アースカラーというか意志雄カラーだ。

２時間くらいかかっただろうか。とりあえずダーニングが完成した。初めてにしては上手にできた。穴もしっかり塞ぐことができたし、いい感じである。しかしである、私はあるミスを犯していたのだ。それは糸の色だ。ネイビーの生地にグリーンとベージュの糸。完全に浮いている。しかもダーニングした長方形の形によりそこが”畳”にしか見えないのだ。THE NORTH FACEの膝の部分に畳である。こんなことならワッペン付けても変わらなかったんじゃなかろうか。

とにかく私のアルパインライトパンツの左膝には、小さな畳が付いている。気にしないで欲しい。

話はこれで終わりかと思うかもしれないが、もう少しだけ続く。私がダーナーになってから２ヶ月位たった頃のことだ。膝の小さな畳も馴染み、アルパインライトパンツに再び愛着が湧いてきた。実はバスケの練習には懲りずに履いて行っているのだが、ハッスルプレーを避けることですってんころりんはせずに済んでいる。もう完全にパートナーである。

私の仕事は石形という民藝品を作る仕事であるが、その仕事にもアルパインライト”畳”パンツを履いている。石にペンキで色をつけるのだがその際に再び事件が起こった。ペンキの泡がはじけ、1mmくらいの小さなペンキの粒が、アルパインライト”畳”パンツの上に付着したのである。しかも割と大切な部分に！
焦った私はすぐに濡れたタオルでこすった。しかしペンキの威力が高くてなかなか落ちない。これ以上アルパインライト”畳”パンツをいじめないでくれ！心の中で泣きながら必死でこすった。するとどうだろう、うっすらと、うっすらと繊維が溶けていたのである。

！！！！！！！！！

こすって起こった摩擦のせいで溶けたのだ。上級ダーナーならこれさえもダーニングでおしゃれに装飾するのだろうが、場所が場所だけに無理だ。

はぁぁぁぁぁぁぁ…誰か私の心をダーニングしてくれないだろうか。