OpenSeaのロイヤリティ問題を考えるついでにNFTの仕組みも理解しよう(前編)

OpenSeaのロイヤリティに関する発表が物議を醸していますね。一部では、クリエイターに入るロイヤリティが廃止になるのでは、という声もあがっています。

OpenSeaの発表の原文が難解(英語だからとかではなく)ということもあり、ブロックチェーンに詳しい開発者やプロジェクト側の人ではない、多くの方が、もしかしたら置いてけぼりにされてしまっているのではないかと感じたので、少しでも理解の助けとなればと思い、このnoteを書くことにしました。

急がば回れということで、このnoteでは、少しNFTの技術や仕組み寄りの話にも触れていきます。ですが、中学生でも理解できるように心がけますので、ご安心ください。


まず最初に、私なりにOpenSeaの公式発表文をまとめると、以下のような感じにまとめることができると考えています:

大前提として、ロイヤリティに関することはクリエイターが決められるようになるべきだと思っている。今後新たに作成するコレクションにおいてロイヤリティが強制されるのは、NFTを作る際に、今回OpenSeaが新たに公開するオンチェーン・ツールのようなツールを使用した場合のみとする。

OpenSeaのオンチェーン・ツールに関しては、ロイヤリティが無しまたは任意化されている他マケプレでの売買はブラックリストとして指定する。

なお、既存コレクションについては、オンチェーンへの移行が難しいため、まだ検討中であるが、12月8日まではとりあえず現行のままとするが、それ以降どうなるかはまた発表する。みんなの意見も聞きたい。ただ基本的な考えとして、(一般論として、)オフチェーンでのロイヤリティ強制を継続的に実現することは難しいものと考えている。


概要をまとめてみて、私は思いました。

日本語でおけ。

そもそも難解すぎる。

難解すぎるから混乱が起きてしまっている。

一個ずつ紐解いていきましょう。

まず、ロイヤリティロイヤリティと言っているのは、NFTの転売(以下、二次売買と呼びます)が起きた時に、NFTの作成者であるクリエイターさんにも入るお金の報酬のことを指しています。(※これとは別に、OpenSea自体もショバ代として2.5%分とります。)

次に、「ロイヤリティ強制」というキーワードが出てきますが、これは主語が抜けていて、初見の方は意味不明だと思われたのではないでしょうか。

現状のOpenSeaでは、ロイヤリティをもらうか否か、もらうとしたらいくらもらうのか、というのは、NFTを作るクリエイターさんが(NFT二次売買価格の0%~10%の範囲で)最初に選ぶことができます。

そして、二次売買が起きたときは、ロイヤリティが設定されていれば、そのお金が「強制的に」クリエイターに行きます。

有名人が作ったNFTをあなたの友達が持っていて、あなたが友達からそのNFTを買うときに(=二次売買)、もしそのNFTにロイヤリティが設定されていた場合、「有名人にロイヤリティの手数料を払いたくない!」と拒否することはできません。強制的に払うしかない、払う義務がある。これが、「ロイヤリティ強制」です。

次に、「ロイヤリティ任意」というキーワードです。これは、ロイヤリティはクリエイターが設定するのではなく、二次売買で買う人が、払いたければ払えばいいし、払いたくなければ払わなければいい(任意にする)、という意味です。

さて、今回のOpenSeaのロイヤリティに関する発表は、強制か、任意化か、どっちなんだいっ!

答えは、超ケースバイケース。これがまたスーパーややこしい。いい加減にしろ!

答えの一部を先に言うと、

これから新たに作るコレクションのNFTについては、ロイヤリティに関するOpenSeaのオンチェーン・ツール等のツールを使った場合は、ロイヤリティ強制とする。

です。

はにゃ? ヾ(´ε`*)ゝ

まずオンチェーンってなんやねん。

On-chainって書いて、オンチェーンって読んで、On-Blockchainを意味するから、ブロックチェーン上って意味なんだよって学校で習ったでしょ?

習ってねーよ!ふざけんな!


ここからは少し、NFT自体の仕組みの話に移っていきます。急がば回れというやつです。お付き合いください。

まず、NFTはブロックチェーン上のアイテムというのはみなさんもご存知かと思います。

「誰々さんが、(厳密に言うと特定のウォレットアドレスが)、このNFTを持っています。」

という情報が、ブロックチェーン上に書き込まれているわけです。

ちなみに私は、ギャルバースというコレクションのNFTを持っています。Chanaさんという名前を持つギャルのNFTです。

OpenSea

このNFTは、ブロックチェーン上の具体的にどこにあるのでしょうか?

ブロックチェーン上の、ギャルバースという村の中にあります。

このギャルバースという村には、私のギャルが生息しているので、「場所」でもありますし、この村にはギャルが7,777体しか住めないよ、みたいな村の「ルール」も決められています。

この、場所でもあり、ルールでもある、村のことを、ブロックチェーンの専門用語で「コントラクト」と呼びます。(※スマートコントラクトの略です)

ひろーいブロックチェーンワールドの中の、いったいどこにギャルバース村があるのか、という、ギャルバ村の住所みたいなものが、「コントラクト・アドレス」です。OpenSeaからも確認できます。

OpenSea

※コントラクトを村と表現しましたが、その実態は、プログラミング言語で書かれたソースコードです:

Etherscanというサイトで見れる、ギャルバースのコントラクト

さて、村(コントラクト)に存在しているNFTたちは、いくつか基本性能みたいなものを備えています。

例えるなら、戦士が、基本装備として片手剣と、ヘルメットと、靴を装備している、みたいな感じです。

以下が基本装備の名前の一覧です。色々あるんやねと思ってもらえればいいです。

https://docs.openzeppelin.com/contracts/2.x/api/token/erc721#IERC721


NFTがこれらの基本装備を備えていると言いましたが、より厳密にいうと、

NFTが住んでいる村(コントラクト)が、これらの基本機能を備えています。

NFTはその村に住んでいるので、ある意味NFTもその機能を備えていると考えることもできると思います。

この村(コントラクト)の基本性能をいくつかピックアップすると、例えば、

  • 誰が何体ギャルを持っているのかが分かる性能

  • 特定のギャルを誰が持っているかが分かる機能

  • ギャルをブロックチェーンワールドの他の人にあげる(移動させる)ことができる機能

そして、これらは、ギャルバース村(ギャルバースのコントラクト)が備えている基本機能なのですが、実は、他のNFTコレクションの村も同じ基本機能を備えています。BAYCやCloneXなどの村も、同じ性能を持っています。

NFT(正確にはNFTおよびNFTが存在するコントラクト)これらの機能を持っているし、逆にこれらの機能を持っていないNFTは、そもそもNFTではないとも言えます。

なんで共通の機能があるかと言うと、そうすることで、ブロックチェーンワールドをより便利にしていけるからです。

例えば、私が作ったNFTは誰かに移せる機能があるけど、違う人が作ったNFTは誰かに移せない、というふうになっていたら、

OpenSeaさんは困っちゃうわけですね。

NFTは「誰かに送ることができる」という共通のルールがあるからこそ、NFTを売買するマーケットプレイスが、ブロックチェーンワールドに爆誕できるのです。

みんなで、ブロックチェーンワールドをより便利していくために、NFTは最低限この機能を持とうな!なんならむしろこの機能を持ってるやつをNFTと呼ぼうぜ!ということにしたのです。

そしてこれがとっても重要なのですが、この基本機能には、

「このNFTをいくらで出品して、購入のオファーを受けて、購入代金の一部をロイヤリティとしてクリエイターに分配し、残りの代金を受け取る」

というのが、含まれていません。

基本機能の「誰かにNFTを送る機能」というのは、送れるというだけで、別に売買の機能ではありません。

売買として取引がしたいのなら、まず誰かにNFTを送り、そしてその人からその対価のお金(ETH)を送ってもらう、ということをしないといけません。

口約束なので、NFTを送ったあとに、その人が購入代金を支払ってくれる保証はどこにもありません。

それでは、あなたがOpenSeaでNFTを誰かに売るとき、裏側ではいったい何が起きているのでしょうか?

まず、価格や期間などの条件を入力し、「リスティング(出品)」するボタンがあります。

OpenSeaでNFTを1ETHで売り出したとします。

この時、ブロックチェーン上で、「あなたが持っているNFTが、1ETHでの出品開始されましたー!」という情報が更新されるわけではありません。

そんな情報を記録する機能はNFTには備わっていないからです。

じゃあどうしているのか。

NFTの基本機能の一つである、「このNFTを自由に移す権利を、他の人に渡すことができる」というのがあります。

OpenSeaでNFTを出品するとき、この機能が使われています。

「OpenSeaさん、あんたに全権を任せた。私のNFT、好きにしてくれていいわよ。あとは任せた。」

とあなたは言うのです。

「生殺与奪の権を、他人に握らせるな!!」と言うお叱りの言葉が聞こえてきそうですね。

OpenSeaさん俺が来るまでよく堪えた。あとは任せろ。

(画像貼れないからあれだけど、伝われ・・・)

あなたのNFTに対する生殺与奪の権を手に入れたOpenSeaさんは、いつなんどき、誰にでも、あなたのNFTを移せちゃうわけです。(それを、あなた自身がMetaMaskで最初に承認しているのです。)

(余談ですが、NFTが盗まれるスキャムというのは、この仕組みを悪用しています。偽サイト等に接続させ、MetaMaskで署名させて、生殺与奪の権を持っていくのです。)

OpenSeaであなたが1ETHでNFTを出品したら、そのことは、ブロックチェーン上ではなく、OpenSeaさんが管理しているコンピュータの中に記録されます。(これはオンチェーンではないので、オフチェーンと呼びます。)

同額の1ETHを払うよという人が現れたら、OpenSeaさんはそれを受け取ります。(私1ETH払うよ!という挙手自体はオフチェーンで起きますが、その後のOpenSeaへの送金自体はブロックチェーン上で起こるので、オンチェーンです。)

次にOpenSeaさんはブロックチェーン上のあなたのNFTを購入者に移します。(この取引はブロックチェーン上で起きるので、オンチェーンです。)

OpenSeaさんは預かった1ETHからNFTを作ったクリエイターにいくロイヤリティの報酬分を除いてあげて(OpenSeaさんが内部的に計算してるだけなのでオフチェーン)、残りを出品者であるあなたに渡します(売上分を送る取引はオンチェーン)。

miinさんのnoteに分かりやすい図がありましたので引用させていただきます:

miinさんによるとこの画像は 消費者庁 資料「NFTの動向整理」 かららしい

このようにOpenSeaさんは、オフチェーンも活用することで(=ブロックチェーンを使わずに)、売買機能を実現しているのです。

1ETHで出品されてまっせという情報が、OpenSeaさんのコンピュータ内にあって、OpenSeaさんしか見れないということは、

私がOpenSeaで1ETHでNFTを出品したからといって、RaribleとかFoundationとか、他のマーケットプレイスでも出品状態になるわけじゃないということです。

(もし売買プロセスの情報が全て、誰でも見れるオープンなブロックチェーン上にあれば、マケプレはブロックチェーンを参照しているだけなので、1箇所で出品したら他の箇所でも出品されている、ということになりますが)

さて、ここらでOpenSeaの発表の中身に戻りましょう。

OpenSeaはロイヤリティを強制のままにするんか、任意化するのか、どっちなんだいっ!の答えの一つは、

今後新たに作成するコレクションにおいてロイヤリティが強制されるのは、NFTを作る際に、今回OpenSeaが新たに公開するオンチェーン・ツールのようなツールを使用した場合のみとする。

でした。

今までオフチェーンで実現していたロイヤリティの仕組みを、オンチェーンで出来るようにする。オンチェーン・ツールを、OpenSeaさんが用意しまっせ、ということです。

ここで鋭い方は、オンチェーンでできるようにするって、おかしくない?と思ったかもしれません。

そもそも、NFTの基本機能に、売買やらロイヤリティやらの機能が備わっていないから、今までオフチェーンでやっていたんでしょ?オンチェーンのNFT自体の仕組みにはロイヤリティ機能ないじゃん、と。

まさに!

ですが、今まで話してきたNFTの基本機能というのは、あくまでNFTがNFTとして認められるための最低限の基本機能のことです。

どんなNFTも最低限、片手剣とヘルメットと靴を持っているよと。

ブロックチェーンワールドに新たに村(コントラクト)を作る人は、新しい機能を作ってもいいのです。自分の村のNFTには、大剣も持たせちゃってもいいのです。

なので、OpenSeaが独自に、NFTの機能を拡張して、ロイヤリティ機能を新たに追加するというのが今回の発表の一部です。

さて、昨日こんなご質問をいただきました:

このツイートをされている方は、おそらく直感的に、もしNFT自体の仕組みが変わるのなら、OpenSeaだけの話ではなく、NFTを使っている他のマーケットプレイスにも同じ影響がある(今回の変更が全てのマケプレのNFTにも適用される)話だと思うけど、今回はそうじゃないよね?という問いを抱いたのいかと思います。

厳密に言うならば、OpenSeaが採用するブロックチェーン上のNFTの仕組みは変わるけど、共通の基本機能を拡張して新しくするのは今のところOpenSeaだけだから、他のマケプレは影響を受けない、だと思います。ややこしいですね・・・。

(※OpenSeaのオンチェーンツールでブラックリストに指定されているマケプレは、他の悪影響を受けますが、また別途説明できればします)

OpenSeaはNFTの基本機能を拡張して、オンチェーンでもロイヤリティを組み込むことを発表しました。そのツール等を使ってこれから新しく作るNFTについては、今までと同じでロイヤリティ強制にするよ(クリエイターがロイヤリティを設定できる)と。

さて、なんでOpenSeaはロイヤリティをオフチェーンからオンチェーンに移そうとしているのでしょうか?

そもそもロイヤリティの機能はNFTには無かったものですが、OpenSeaがクリエイターさんを応援する(+誘致する)ためにオフチェーンでこれを提供し始めました。これは実際に多くのクリエイターを惹きつけ、NFTの一大ムーブメント化に火をつけました。

OpenSeaが始めたロイヤリティ制度(強制の方)は、他のマーケットプレイスも追随しましたが、最近になって、他のマーケットプレイスがロイヤリティを任意化し始めました。

なぜかというと、けんすうさんのツイート引用:

「社長!周りがどんどん任意化していきます!このままでは持ちません!うちの会社だけオフチェーンでロイヤリティを続けるのは無理です!オンチェーンに移して、根本的に変えるのが解決策です!」(このロジックは私はまだよく分かっていません、すみません。)

という感じです。

疲れたのでここらでやめて、このnoteは前編とします。後日、時間と需要があれば続きを書きたいと思います。(ここまでの話に、共有コントラクト、独自コントラクト、ブラックリスト、という話も加わってくるので、スーパーややこしい。もうやめてくれ!)

前編をまとめておくと、

  • NFTはコントラクト(場所でもあり、ルールも決められている、ブロックチェーン上の村のようなイメージ)に存在している。

  • コントラクトおよびそこにいるNFTは、共通する基本機能を持っている。

  • 基本機能には、売買プロセスおよびロイヤリティの仕組みは含まれていない

  • OpenSeaのロイヤリティは、ロイヤリティ強制だった。

    • クリエイターがあらかじめ報酬を設定することができ、幾分か設定された場合、二次売買で買う人はこれを支払う義務があったという意味

  • 今までOpenSeaのロイヤリティはオフチェーンで行われてきた

  • 他のマケプレがロイヤリティを任意化し始めて、OpenSeaは、このままでは持たん!となった

  • OpenSeaはNFTの基本機能を拡張して、オンチェーンでもロイヤリティを組み込むことを発表した。

    • 新たに作るコレクションについては、この新しく拡張されたNFTであれば、ロイヤリティ強制となる(クリエイターがロイヤリティを設定できる。)


私のツイッター:https://twitter.com/ishicorodayo

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?