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戸籍法上の姓とは

「『選択的』夫婦別姓 -IT経営者が裁判を起こし、考えたこと ​-(青野慶久著 ポプラ社)」を読んで、この原稿を書きかけたのは2022年1月のこと。て、我ながら長らく温めていたものだ。

さて、青野氏の裁判のことは、そもそもネットニュースほかでリアルタイムに追いかけていたので、ざっくりと顛末は知っていたつもりだったが、ご本人がまとめられた記録ということで、電子書籍になった機会に入手し、改めて読んでみた。

この裁判にあたっての作花弁護士のたてたロジックを、当時作花氏のブログで初めて読んだときに、国際結婚の際には選択肢があり、別姓が選べることを知った。

さらに、この本を読んで知ったのは、「戸籍法上の姓」というのが、婚氏続称の正体だということ。作花氏のブログでも説明されていたのかもしれないが、気づいていなかった。

離婚すると、婚姻に際して姓を変更した者は民法上、婚姻前の姓に戻る。しかし、希望すれば、離婚後も婚姻中の姓を使い続けることができる。それが婚氏続称。婚姻中に使っていた姓は「戸籍法上の姓」と位置づけられる。離婚後の生活における不便さを考慮して規定されたとのこと。

結婚後の姓で社会生活を営んできた女性が、離婚により姓が変わることで生じる「生活上の困りごと」を、戸籍法によって解決策が考えられたのは1976年のこと。
そう考えると、これは結構大きなルール変更のように思う。民法改正というと、かなりのおおごとに思えるが、戸籍法のみの改正で、ひとまず目の前の困りごとが解消できるという名案だったのだろうか。

現在ビジネスネームとして旧姓使用をしている人のいわゆる「戸籍上の姓」(婚姻後の姓)と紛らわしいが、この概念は、国際結婚をした場合に、日本国籍を持たないパートナーの姓を名乗りたい場合にも適用される。
これがありならば、「結婚前の姓で社会生活を営んできた者が、結婚により姓が変わることで生じる不便さ」の解決策を検討しない理由が、いまとなってはわからない。「寿退社」が普通だった当時のこと、結婚前に「キャリアを築いた女性」が少なかったのか、離婚後の場合は子どもの姓にも関わるからだったのか、ひとまず1976年当時の状況を調べてみたいと思った。

事実婚に踏み切るまでは、いろいろと戸籍法についても調べたのだが、婚氏俗称とも国際結婚とも縁がなかったこともあり、この概念は全く知らなかった。
このロジックにせよ、平成8年の法制審議会の想定している方法にせよ、少しでも社会的な「不便さ」が解消することを望む。


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