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現役内科医、”Dr.Eggs”を読む

先日、お世話になっているセカニチ #世界最速で日経新聞を解説する男|noteさんに、”Dr.Eggs”を読んだ感想を現役医師の立場から書いてみては?(三田先生に送るよ~)とまさかの機会を頂いたので、アカウントだけ作って2年間放置していたnoteにログインすることとなった。

”Dr.Eggs”は、グランドジャンプに好評掲載されている、三田紀房先生が描く、医師の卵、つまり医大生を主人公にした漫画である。本年2月23日に単行本の第1巻が発売されたばかりだ。


三田紀房 Dr.Eggs  VOL.1 ヤングジャンプコミックス

私は、これまで漫画をたくさん読んできたわけではなく、特に青年漫画とは無縁であった。しかし、新コロ流行により、ステイホーム中に漫画をよく読むようになった。たまたま他の連載をきっかけに、グランドジャンプを拝読していたため、昨年”Dr.Eggs”の連載が始まってから、毎号楽しみにしていた。世に医療漫画は多くあれど、医大生、それも駅弁大学(地方の大学)の医大生を題材にしたものは、おそらくなかっただろうからだ。


まず始めに、声を大にして言っておきたい。私は、女医は女医でも、世間の皆様がTVCMやinstagram等のSNSでよく見かける、キラキラしている女医ではない。大都市のある病院で、粛々と外来や病棟業務をこなす、内科医だ。つまり、皆様が発熱(新コロを含む)や腹痛で病院を受診した際、診察室に座っているような、いわばキラキラしていない女医である。外来診察を終えて病棟に行けば、重症な入院患者さんの診察が待っている。


”Dr.Eggs”の主人公である円千森は、成績がいいというだけの理由でなんとなく、山形県・出羽医大に入学する。


入学式、本当にこんな感じ
まだ不安気な円千森

一方、私の人生の主人公である私は、田舎の私立中高一貫の進学校に通っていて成績もそこそこ良かった。高2の文理選択の際(英語や国語などの文系科目が得意だったにもかかわらず)、”せっかく〇〇高校に行ってるんだから・・”と両親や親戚にそそのかされ、理系に進んだ。(苦手だった数学で悪戦苦闘していたにもかかわらず)、”理系に進んだなら医学部目指してみたら?”とまたそそのかされ、医学部を受験し、何とか合格した。高校の担任から言われるまま医大に入った、千森と同じである。


成績いいと医学部目指しがち

出羽医大の入学式翌日のオリエンテーションで、千森の指導教官である古堂教授は、千森達にこう言う。”諸君は、国民が納めた税金で、国から4億円の出資を受けて、医師になる。”と。


医師1人養成するのに4億円かかる


そのほとんどが税金で賄われる

デジャブであろうか。私も教官に”君たちは、県民の血税で、医師になる。”と言われた。今でもよく思い出す言葉だ。血税。何て野蛮な言葉を使うんだ。と若干18歳であった私は思ったが、医師になり、税金を納める側になってみて初めて、血や涙がにじむ思いで仕事をして納める税金だから、血税と言うんだ、ということに気がついた。今やもう、医大生を見ると血税の二文字を突き付けたくなる、すれた大人になってしまった。


医大生は、勉強・試験漬け

患者にとって最良の医師とは、亡くなった患者に感謝される医師だ。”これもまた古堂教授が千森達に言った言葉だ。この言葉で、一気に古堂教授のファンになった。というのは、私も古堂教授の言う”最良の医師”を日々目指しているからである。


最良の医師とは?
古堂教授の教え


少子高齢化社会の真っただ中で医師となり、特に高齢の患者さんを担当することが多い内科医の私は、常日頃から死と向き合わざるを得ない。もちろん亡くなった患者さんからは感謝の言葉を聞くことはできない。しかし、患者さんの家族が、患者さんが思っていたであろうことを、代わりに私に伝えてくれる。家族が、患者さんの死を受け入れ、納得し、こちらに少しでも感謝の意を表してくれていれば、あぁ、私は、最良の、とまではいかずとも、良い医師でいられたかもしれないな、と感じ、少し報われた気分で、ご遺体となった患者さんに両手を合わせ、最期のお見送りをすることができるのだ。そして、また髪の毛を振り乱し、白衣を翻して、次の患者さんの生と死に、向き合っていくのである。

常に生と死に向き合うのが医師

”Dr.Eggs”という漫画に出会えて、私は本当に幸せだ。新コロが、普段漫画を読まない私をこの漫画に引き合わせてくれた。禍転じて福と為す、とはまさにこのことだ。そして、”感想を書いてみては?”とセカニチ #世界最速で日経新聞を解説する男|noteさんにとんでもない機会を頂き、この拙い投稿が生まれた。セカニチさんには、感謝してもし切れない。

円千森の医大生ライフは始まったばかり。彼は、まだまだ医師の卵である。この漫画を読み進めていきながら、私も自分の”キラキラしていなかった医大生ライフ”を振り返っていきたいと思う。そして、”Dr.Eggs”の読者として、その辺にいる現役医師として、微力ながらこの作品を盛り上げていくことができれば、これまた幸いである。




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