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マルチ商法と私 〜友人をなくした話〜

当時私は育休中、娘は1歳だった。

日々の育児に追われ、独身女性が楽しむようなオシャレ、外食、お出かけとは無縁の生活を送っていた。

そんな時、既婚子なしの友人からランチに誘われた。

久しぶりだしランチだし嬉しくて、実家の母に甘えて娘を預け、お店に向かった。

子どもと離れて大人だけでランチ。

会話を楽しみながら食べるパスタランチ。

高級店でなくても、これが子育て中の人間にとってどれだけ贅沢な時間か。

幸せな時間だった。



ところが。

食事が済んで一段落すると、突然友人がマルチ商法の話をしだした。

ん?

なんだか雲行きが怪しい。

私のふわふわ幸せタイムがどんどん侵されてゆく。

一応友人だから話は聞くが、私はまったく興味がなかった。

すると彼女が、

「お金と時間と友達、どれが大事?」

と尋ねてきた。

「どれも選べないくらい大事だけど、あえて言うなら時間と友達じゃない?」

と答えたら、

「もし友達の生活レベルが高かったりしたら、付き合うのにお金が必要じゃない?」

と言うので、

「そんなに気を遣わなければならない友達ならいらない。そういうの抜きで付き合えるのが友達だと思うから」

と言ったら黙っていた。



私は腹が立っていた。

久々に会える友人との至福のランチタイムで、まさかマルチ商法に勧誘されるとは。

私は久しぶりに君に会えるから時間を作ったのだ。

実家の母に協力してもらってまで。

君がマルチ商法をしようがしまいが、それは勝手だ。

君が私を友達だと思うなら、最初から言えばよかったのだ。

「私は○○をしている。安いものでいいから何か買ってくれない?」

と。

それならば私は、一度だけなら何か購入した。

私を友達だと思うなら、そうしてほしかった。

お金と時間と友達の三角形のバランスを、彼女は自分で崩したのだ。



それ以降、私は彼女に連絡をしていない。

年賀状が毎年届いていたが、返事すら書かなかった。

しかしそれでも毎年届くので、年賀状くらいは返すか、と今は年賀状だけやり取りをしている。



後にも先にも、友人をここまで切り捨てたのは、これだけだ。

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