見出し画像

レガシーコードが成功した理由その2(ゲーム性「選択性と自主裁量」)【無料】

前回は「コンセプトの作り方」をご紹介しました。
今回はゲーム性について踏み込んでいきます。

【目次】
コンセプトと目的を決める  (前回)
●ゲーム性について
 ・「選択性と自主裁量」(←今日はココまで)

 ・「想像可能、予知不可」「仮説と正解」
 ・「感情を動かす」
●ゲームの細かい部分について
 ・成長を感じさせるためには
●成功要因分析


ですがレガシーコードとはどういうゲームなのか、実際にやっていない人は分からないかと思いますので、簡単な概要を画像で貼っておきます。

説明書の概要部分

では記事を始めます!

■ゲーム性について

ここから色々書くかと思いますが、私がというよりは様々な本を読んだり、テストプレイでいただいたアドバイスに基づき気付き、重視した点となります。なので私だけでは到底ここまで思いつかなかった要素は多くありますので、表現上ちょっと偉そうに感じるかもしれませんが「なんかそういうことらしいから、あてはめたよ」って意味なので温かい目で読んでください。


では、今回ゲームシステムを作る上でかなり意識した点としては
・「選択性と自主裁量」(今日はココ)
・「想像可能予想不可」
・「感情を動かす」

です。
※「選択性と自主裁量」の当てはめる部分が非常に長くなってしまったので、本日分は「選択性と自主裁量」までの記事となります。

『選択性と自主裁量』

これはゲームの基本となる部分ですね。どんなゲームでも存在するのではないでしょうか。

レガシーコードにおける選択性は「①武器の選択」「②パラメーターの割り振り」「③探索場所の選択」「④成長点の選択」が主な要素となります。
加えて補足的な要素として単純化されたゲームにおいて「いかに自然に会話を発生させるか」も意識して取り込みました。これは要所要所で説明していきます。

このゲームでは他と比べると珍しく、戦闘時における選択は「スキルを使うか使わないか」程度の単純なものとなっており、他に楽しさの部分を注力しました(「感情を動かす」で後述)。
※「スキル」に関しては、少し複雑なので後日どこかで「リスクデザイン」として語りたいと思います。

画像7

※戦闘は攻撃判定と回避判定の2アクションのみで行われる。

この単純なデザインにした理由としては戦闘の楽しさの要点を単純化したのと、初心者がやれることの多さからその判断時間により他の参加メンバーを待たせないようにするという背景があります。

このゲームは現実世界での感情に強くリンクするように出来ております。
そんな中、「人を待たせた」という負の感情は、その人へ付きまとい次のステップ(別のTRPGなど)への阻害となり得るからです。

なので、戦闘における選択性というのは確かにあればあるほど難解で楽しいものではあるのですが、バランスを間違えると「情報過多」になりその人の処理速度を超えてくる可能性がでてきます。

そうするとその人は「このゲームよく分からないな」と思って、ゲームの評価は「なんか難しいゲームだった、自分には合わないかも」となってしまうかもしれません。

総じて言えることは「ゲームデザイナー」はそもそも制作物への盤面情報の処理に慣れている場合が多いということです。その感覚でゲームを作ってしまうと、もしかしたらライト~ミドルのユーザーへは「よく分からないゲーム」になってしまうかもしれません。

ではレガシーコードにおける、『選択性と自主裁量』について分解していきます。


「①武器の選択」

武器


これはシナリオ上「直感的に武器を選んでください」と指示がきます。どの武器でもクリアができる設定となっておりますので、後悔を生まずユーザーは単純に好きな武器を選択できます。

武器の種類も「太刀」「大斧」「弓」「魔法の杖」と選択に性格が出るものになっており、能力やスキルも各々にあるイメージの通りに近いものに設定しております。
ここでも選択時に「他の人と自然に会話が生まれる」ようになっております。


「②パラメーターの割り振り」

武器_パラメータ


武器を選んだプレイヤーは、武器に予め設定されている4つの基本能力値に加え「自由に3点」を「個性値」部分へ割り振ることができます。
3点とも「攻撃」に振るのも、平均的に能力を上げるのも自由です。
ただ、3点と設定しているので「全ての能力を上げることは出来ない」システムです。「どこかを切り捨てる」選択か「どこかを重視する」選択かが発生します。

さらに、このゲームはダイスを2つ振ってその出た出目と能力合計値を足して判定を行っていくゲームなので実は「1点分」が非常に重要になっていきます。確率でいうと大体1点分だけで10%くらい成功率が変わるようになっています。


ただ、この時点ではそれが全く分からない状態なのでその1点分の重要性に気付くのは中盤以降となります。仮にゲームオーバーした場合は「反省点」としてプレイヤーへ還元されます。
ちなみにここでも「誰かのパラメーター割り振りを見てから、自分の割り振りを決める」等のコミュニケーションも発生しうる箇所となります。


「③探索場所の選択」

画像4


画像のようにフィールドが山のような形状で、MAP上の一番上にある(0-0)という山頂から下りて山を脱出するのが目的のゲームとなります。

その中で「どこの場所へ進むか」はパーティの自由となっております。なので、そのパーティ独自のシナリオが展開され、それぞれのエンディングを迎えるというシステムです。


探索をしていると「場所の名前」が出てくる情報を入手することが出来たりして、「あそこはなんか居そうだな」と思ったり、単純に裏面の場所の名前から「この森ヤバそうじゃない?」と思う要素もあります。

更に、このゲームは「感知度」という表示があり、これは「探索者が直感的に感じるヤバさ」と定義しています。これもプレイヤーの選択における判断材料となります。

感知度


もちろん、進む場所を選ぶときは「必ず会話が発生します」
これにより「自分達で選択して、シナリオを進めている感」が演出できる仕組みとなっております。



「④成長点の選択」

武器_パラメータ

画像6


これが、このゲームを単純なシステムながら高難易度にしている肝となります。

通常のTRPGですと1つのシナリオを1~2時間くらいかけてクリアして、やっとレベルアップ処理に入ります。
ですが、このゲームはモンスターを1体倒すと成長点を獲得できて、その場で能力値に加えることが出来ます。一部のモンスターを除き「自由な能力値に1点加える」というレベルアップ処理になります。
ビルドや成長要素をサクサク味わうことが出来て楽しくはあるのですが・・・

ここで、選択肢は複雑になります。

というのも、先ほど記したとおり1点分が成功率10%分の数値をどこに振るかにより、今後の進展が大きく変わってきます。そしてかなり「その人の性格」や「今までの別のゲームの経験則」が色濃くでる箇所となりオリジナル性が出てきます。

その「成長の選択」はプレイヤー自身の責任となり、今後の展開がどうであれ享受する納得性にも繋がります。



---------------------------------
以上、『選択性』を用意したことにより「ゲームを自分で操っている感」を強く感じるシステムとなっており、失敗しても自分の選択によるものと捉え、次回への成長の糧となります。

そしてそれは、短いスパンの「成長点の選択」で挽回できるような仕組みになっておりますのでプレイヤーはすぐに「今度は上手くいった!」と自身の成長も感情で感じることができます。


と、いったように「プレイヤーの感情で選択を行うのが正しい」というデザインに落としこんでいるわけです。


このゲームは「感情を動かすゲーム」としての側面も大きく持っており、強くシステムデザインとして意識したところでもあります。このあたりは後日また、書いていきたいと思います。


ちょっといきなり難しい話になってしまったかもしれませんが、要は「プレイヤーに選択性を持たせ、自分がゲームをコントロールしている感をいかに演出するか」がゲームへの没入感や楽しさになってくるということです。



そしておまけ的な選択要素として、「シナリオ」もプレイヤーたちがどちらを知りたいかという感情のもと、選択を行っておりました。

画像8



では次回は【想像可能、予知不可】(仮説と正解)から始めていきます!
お楽しみに!!


-------------------------------------------------------
今回のおまけトピックスはありません!
ご支援いただく場合は、前の記事からお願い致します!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?