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『君たちはどう生きるか』読んだ

ジブリ映画のタイトルにもなった

ジブリの宮崎駿監督もこの本の影響を受け、同名のジブリ映画の誕生につながる。

その映画の作中にも、この小説が登場する。

しかし、この小説の中のシーンがそのままジブリ映画になっているわけではない。

長く読み継がれた名作

もとは1937年に発行された子供向け小説。

いろいろな版があるようで、私が読んだのは2017年発行のマガジンハウス版。この版には最初に池上彰の文章(「私たちはどう生きるか」)が収録されている。

90年近く読み継がれた作品であり、超名作ということになる。

どんな人におすすめか

作品の性格を素直に汲み取るなら、富裕層の中学生が読むべき本だ(その理由は後で書きます)。
また、読みやすい有名な小説なので、カフェでオシャレぶりながら軽く読書したい人向きだ。
ジブリ映画の『君たちはどう生きるか』について、今更ですが、何か考察したい人にもいいかも。成果が出るかわからないが。

逆に、子供っぽい作品が苦手な人にはおすすめできない
また、かなり単純化された理想論的な結末であり、そういったものが軽薄に感じる人も避けた方がよい

いきなりですが、私の感想を書く

この本への印象を率直に言ってしまうと、支配階級の子女向けに書かれた説教くさい作品だな、ということだ。

「あなたたちは裕福な家庭に生まれ、これからの社会を背負って立つのですが、生産者階級の人々への敬意を忘れてはいけませんよ」というのがこの作品が伝えたいメッセージのうちの一つだと思う。

そして、もう一つ、「自分を振り返って見る」ことの大切さを説くのが、この作品のより大きなテーマだったように感じる。

物語の内容(以下ネタバレあり)

主人公は中学2年生の男の子、コペル君こと本田潤一。

主に彼の中学校生活での出来事や、叔父との交流で物語が構成される。この叔父さんの話すことはいちいち説教くさい

しかも、この叔父さんは大学を出てから間もない法学士だが、その程度の身分でよくこんな説教くさいことが言えるな、と逆に感心した。

(そもそも叔父さんは働いているんだろうか?)

章の間に叔父の手記も挿入される。そこには叔父からコペル君への熱いメッセージが込められている。もちろん説教くさい

コペル君と叔父以外に重要なキャラクターは、コペル君の同級生であり、仲の良い友人でもある浦川君北見君水谷君だ。

そして水谷君の姉のかつ子さん(17歳か18歳)もストーリー上、大切な役割を果たす。

貧乏の章

物語は第4章の「貧しき友」から少し面白くなる。

貧しいクラスメイト、浦川君の章である。

そもそも、コペル君はじめ、この時代の中学生は裕福な家庭の子ばかりなのだが、浦川君だけは貧しい家の生まれである。

といっても、商売を営む家庭であって、中学に子供を通わせることもできない、もっと貧しい家庭もあった時代の話だが。

ざっくり言うと、浦川君は、家の商売を朝早くから手伝っており、そのために金持ちの家の子ほどは勉強に専念できない。

学業や運動はいまいちな浦川君は、学校でいじめられているが、家の商売を手伝っている時点で何かをこの世に生み出す側であり、まだ何も創り出すことのできないコペル君は彼に敬意を示すべきだよ、って話だった。

友情の章

そして、この小説の最大の見せ場が第6章「雪の日の出来事」。

コペル君の友人の北見君が上級生に殴られるシーン。浦川君と水谷君は北見君の側に立って、彼を守ろうとするが、コペル君は勇気が出ず、北見君を見捨てるような行動をとってしまう。そこから葛藤を抱え、それをどう乗り越えるか、ということが作品の中心に据えられているように思われる。

変なお姉さんの章

しかし、個人的には第5章の「ナポレオンと四人の少年」が最も面白かった。

かつ子さんが登場する章である。

この小説ではナポレオンの評価が異常に高いのだが、そのナポレオンに心酔しきっているのがかつ子さんである。

若い女性であるかつ子さんがナポレオンについて熱く語るシーンがあり、異様だなと思うが、その場にいたコペル君、浦川君、北見君、水谷君の4人の中学生男子にとって、それはかなり刺激の強いことである。しきりに「英雄的精神」と口にするかつ子さんの熱量が4人に伝染したのか、ついに4人は誓いを立てる。

北見君が上級生に殴られることになったら、他の3人も一緒に殴られよう、と。そして先述の第6章の話に繋がっていく。

このナポレオン狂のかつ子さんが私は面白いキャラだと感じたが、残念ながらかつ子さんについては、それほど深くは書かれない。

まとめ

まとめれば、将来が約束された富裕層の子供がちょっとした葛藤を一瞬抱える、というのが全体的なストーリーであった。

(私の見方はかなり捻くれたものであるということは認める)

(おしまい)

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