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『書けばわかる!わが家にピッタリな住宅の選び方・買い方』を読んで絶望したが最後には希望が残った話

標記の本を読んだら絶望したけど希望が残ったので、そのことについて書きます。

本の内容

タイトルに「書けばわかる」とあるとおり、収入・住宅費・生活費などを表に書き出してみて適切な家の選び方を考えようってスタイルの本で、著者はファイナンシャル・プランナー。家を選ぶという問題を越えて、人生のことを根本的に考えるきっかけになるような本でした。

本の商品ページはこちら。

・家を買う? 一生賃貸?
・買うなら新築? 中古?
・マンション? 戸建て?

……みたいな、よくある疑問はほぼすべて本の中でシミュレーションされてて、今後自分はどの道を選んだらいいんだろう?って問いに対して、丁寧に答えてくれていました。

いろんなパターンの人生シミュレーションが入っていることに関しては「自分の人生と関係ないシミュレーションのページは無駄じゃん?」と思ってしまうかもしれませんが、それは早計で、そうではなくて「今まで考えてなかったけど、こういう人生や住居の選び方もありでは?」という感じで新しい可能性を見つけるのに役立てるとよいと思います。

ただし、この本を読む上で次の二つの注意点があります。
①消費税率が8%から10%に変わる頃に書かれた本なので、本の中の情報は古くなりつつある。2021年10月時点の、大学が遠隔授業になったり会社がテレワークになったりといった「新しい生活様式」的なことは一切書かれていない。
②いちおう、住宅の賃貸と購入を並列に扱っているが、実際問題として購入のケースはたくさんの関連事項があり、そちらの説明に費やされるページがどうしても多くなる。なので賃貸派の人にとっては関心の薄いページがちょっと多いかも。

まあでも、①については、こんな状況になるなんて知りようもなかったので仕方ないし、まだ本の情報は新しめなので大きな問題ではないと思います。むしろテレワークとか終わってこの本の状況に戻るのかな。②については、賃貸派の人も、住宅購入の可能性をこの本で一度検討してみるのもいいと思います。ということで、あくまでちょっとした注意点というくらいです。

この本を勧めるけど、絶望に気をつけて

この本を誰かに勧めるとしたら、これから家の購入を検討する人にはもちろん勧めたいですが、そういった人たちはすでに同種の本や情報を持っているから、むしろまだ家をどうするかとか考えてない若い人(10代後半〜20代前半)にこそ、この本はオススメかもしれませんね。

家の選び方の本なんて、もうちょっと大人になってから読んだらいいのでは? なぜ若い人に勧めるの? と思われるかもしれませんが、私自身はもっと若いうちにこの本を読んでおきたかったと切に思います。

それはなぜかと言うことを説明します。

まずですね、「こんな家に住みたい」みたいな希望って多くの人が割と若いうちから持ってると思います(そうじゃない人がいたらすみません)。で、住居にはお金がかかるわけです。買うにしても一生賃貸にしても。

だから希望の家に住むための資金が必要なわけで、何も考えずに人生を過ごして、ある時突然「よし家を買うぞ」と思っても全然資金が足らないとか、ローンがどっかの時点で払えなくなるとか、住居に金をかけすぎて老後の生活費が足らないとかいう困った事態が起こってしまうわけです。

お金が足らないならもっと稼げばいいじゃないか、と思ったとしましょう。その時のあなたの職業・職場があまり稼げないものだったら、その場合は転職を考える必要が出てくるかもしれません。

しかし年齢を重ねると、職業の選択肢は普通少なくなると思うんですよ。そうじゃない人もいるのかもしれませんが、普通の人は人生が進むにつれて選べる未来の可能性は少なくなると思います。となると収入を上げるためにとれる手段が少なくなるわけです。そしてだんだん気づき始める、希望のお家には住めないんじゃね?と。

なので若いうちから、
(自分が稼げる金額)−(生活費)−(住居費) ・・・(式1)
みたいな引き算ができるようになっているといいのだと思います。この式の結果がちゃんとプラスになるか見ないといけないわけです。

この式、見た目は簡単そうですよね。でも実際計算しようとすると結構難しいと思います。将来の収入くらいは推計できるとして、生活費はどれくらいを見込めばいいか、住居費ってどのくらいかかるのか。さらに、老後の年金はいくらなのか、その時はローンを払い終わっているのか、とかいうことも考えないといけないわけです。

そういった計算をやるのに標記の本がめちゃくちゃ役に立ちます。実は(式1)は私が適当に書いたもので、もっとちゃんとした計算の仕方が本の中にばっちり解説されています。将来のお金のことを書き出すフォーマットが本の中にあるし、いくつかエクセルデータも用意されています。自分の収入(予定でいい)を入れて、生活費はこれくらいを見込んで、そうしたら住宅にかけられる金額はこれくらいだから、買えるor借りられる家はこのくらい、って計算ができるようになっています。年金額の調べ方とか住宅関連の税制や特例に関する情報も紹介されているので、自分の人生に適した住宅の買い方も分かると思います。

だから自分が希望する住居、それにかかる費用をフォーマットに入れてみて「自分はどれくらい稼げばいいのかな」とか、逆に「自分の収入はこれくらいだろうから家のランクはこれくらい」みたいな見当をつけられるようになると思います。

そういうことを若いうちに考えておけば、希望を叶えられるように人生の選択もやりやすい。だから若い時にこそ、この本を読んでおきたかったなと思うし、まだ若い人にぜひ読んでほしいなと思うわけです。

……ただし、勧めておいてこういうことを言うのはちょっと憚られますが、私はこの本を読んで少し絶望してしまいました……

どういうことかというと……この本はですね、家を選ぶ時には人生の終わりをどこで過ごすのかという視点も持て、と言ってくるのですよ……

つまり自分が死ぬ時のことを考えないといけない……

家の選び方を考えていたのに、いつの間にか、これからの人生が大体どういったルートを辿り、どんな終わりを迎えるかが見えてきてしまうのです……

私は今まで割と自由を求めて生きてきたつもりでしたが、家選びを考えた瞬間、本当はあり得たかもしれない無限の可能性がただの1通りの人生にきゅっと収束してしまうような感覚があって、ああそうか、自分には無限の可能性なんてなくて、既定路線を死に向かって歩んでいくしかないのか、と。そういった絶望を抱いてしまったわけなのです。

でも最後に希望が残った

自分の人生の終わりがなんか見えた気がして、それは結構ヘビーな現実だったし、そもそも、住宅取得のために貯蓄や節約のことを考えるのは気が滅入る感じもあって、何か絶望しちゃったのですが、鬱々としてても仕方ないので思考を変えることにしました。

人生の終わりまでを考えることは可能性を減らすのではなく、なるべく多くの可能性を残しておくための準備なんだ、と思い直すことにしました。

私は今まで何となく、将来のことはあまり決めないでおいた方が選択肢は多く残せるのでは、と思っていました。今から将来の行動を決めてしまうとその時点で他の可能性が消えてしまって、もしかしたら消えた可能性の方に何か面白いことがあったかもしれないのに、もったいない、みたいなことを漠然と感じていました。

でもそれは甘い考えというか、間違いだったかもしれませんね。だって、将来、何か新しい人生の可能性が出てきて、そっちに進んでみたいと思った時、生活の基盤がしっかりしてないとやりたくてもやれないかもしれません。可能性を残そうとして人生のことを何も決めずにいると、逆にそれが可能性を殺すことになるのかもなって……

ということで、私は次のように思うことにしました。つまり、私は住宅取得を考える時、自分の人生の終わりまでも検討する。それは人生を確固たる地盤の上に築こうとする行為で、そのために必要なコストをあらかじめ見積もっておくのである。そういった必要な費用はとっておいて、ただし人生のどこかの場面でこれはと思う瞬間がくれば、その費用以外の資産(お金という意味でもあるし、体力とかの意味も含む)をつぎ込んで、その瞬間の興奮を全力で享受する準備をしておくのだぞ、と。

死ぬまでの居場所=住居をちゃんと用意しておき、人生を楽しむべき時はしっかり楽しめるようにする。

そんなふうに考えれば、死ぬ場所のことをあらかじめ考えておくことも可能性をつなげておくための大事な準備なのだなと思えてきて、ちょっと希望が持てる気がしてきました。

なので、この本を読んでよかったです。

おしまい。

(なお、念のために言っておきますが、本に書いてあることはすべて正しいものと鵜呑みにしていいわけではなく、適切な判断力を持って読むのがいいです。)



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