手の他人

ふと
これは自分の手だなと思う
血管の浮き出る曲線や
爪の生える角度
深みのないシワや
悩みのない肌の質感も
この今
そうだと思った

いつもは
なんだかちょっと違う人の手だなと
感じたりしている

キーボードを叩く動きとか
コップを掴む指とか
何もしていない手の股も

ということは
そっちこそが本物で
今のが偽物かもしれない

ベタなミステリーを
抜け出せず
私は誰かと記憶に尋ねる
柔らかな冬の夜だった
#詩

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