見出し画像

色鬼

子どものころ、友達とよく遊んだあそびのひとつに、色鬼がある。

鬼は一人。みんなは、鬼から2メートルくらい離れて「色、色、何色」と鬼に問いかける。「あか」と鬼が叫んだら、一斉に赤いものを探して触れる。鬼はみんなを追いかける。赤いものに触れていない子は鬼にタッチされて、鬼交代、というあそび。

赤・黄色・青は遊具に使われていて、みんな結構かんたんに見つけられる。

鬼の子はなかなか交代できないので、うーんと頭をひねり「あおみどり」など、絶妙な色を指定するようになる。

そうなってくると、ややこしい。

人が触っているものは、もう触れられないので、別のものを探さないといけない。そういくつも「あおみどり」は見当たらず、どうにか、それらしい色のものを探して触って、得意げな顔をする。怪訝そうに近づいてきた鬼に咎められたら、そこから交渉だ。

私が触っていたのは、地面に広がるクローバー。

「それ、あおみどりじゃないやん。はい、タッチ。次、あいちゃん鬼ね。」

「え!あおみどりよ!ほら、こっちの草なんか…黄緑や!それに比べたら…はい、セーフ」

「えー」

微妙に青緑ではないと分かっていても、青緑と言い張って笑った。
遠い春の一日。

足元に小さく芽吹くクローバーを眺めて、思い出した。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?