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うたた寝に恋しき人を見てしより

光る君へ(3)「謎の男」

視聴後の感想です
ブログから転載しています
2024年1月22日


 今年の大河ドラマ「光る君へ」順調ですね。
 紫式部(=まひろちゃん)と道長さんの関係には恋愛は持ち込まれないだろうと予想していたのですが、がっつり持ち込まれていてハラハラしてます😅

 昨日は道長さんの正妻となる人が登場したので、なんとも言えない気持ちになりました。
(目下のところはお互いそれとはわからないわけですが)
 こうしてみると「身分の違い」の厳しさが沁みますわねえ……。
 現代人には想像もつかないような、絶対的な過酷さがあるなと改めて思ったり。

 男性の方が身分が上で女性が下位である場合は、正式な結婚はできないにしても、事実婚みたいなことはできるからまだいい。
 女性が身分が上の場合はもう絶望しかない。
 そういうパターンは架空の物語としてさえ語られることはないけれど、もしかしてそういうケースがあった場合(……あ。ベルばらだ)それは恋とも称されることはなかったのだろうと思います。

 それでふと思い出したのが小野小町。

 昨日もドラマの中で、登場人物たちの話題として登場しましたね。
 小野小町はその実在さえ疑われることがありますが、在原業平さん他との贈答歌が多く残っているので実在はしていたようです。
 紫式部さんなどは小町さんより100年くらい後の時代になるのかな。

 小野小町については生没年はもちろんのこと、出自さえはっきりしない。
「小町」という名前からして、自分の部屋を与えられていた女房クラスの人であることは間違いないと思われるけれども、身分が高い方ではなかったみたいですね。

 美人という評判ではあるのですが、なんせ実在が疑われるほどですから、伴侶も恋人の話も確実には残っていない。
 深草少将のアレはそれこそ架空の物語だろうし。

 しかし彼女の恋の歌は、昨日のドラマ中でちらりと語られた通りに名歌が多い。
 美人であるゆえ恋おおき女性でもあったろうかと思われるのは無理もないですが、しかし彼女の歌にはそういう痕跡がない。

 それどころかやたら「夢」が出てくる。

 大正から昭和初期くらいに流行った(?)おまじないの歌も小野小町ですが、これも夢。
「いとせめて 恋しき時は ぬばたまの 夜の衣をかえしてぞ着る」
 この小町の歌を3回唱えて、寝巻き(=パジャマ)を裏返して着て寝ると、恋しい人を夢に見ることができるというのですね。

 夢にまつわる歌が多いので、小町さんの「本命」はなかなか会えない人であったと見るのが妥当。

 その昔NHKの番組で見たんですが、単になかなか会えないのみならず、これはもう圧倒的な片思いだったのではないか、と。
 おそらくは身分に重さのない女房クラスであったことを考えると小野小町の「本命」は、ときの帝ではなかったか? という仮説です。
 
 番組中で具体的に名前を挙げたかは記憶にないんですが、であれば仁明天皇かなあ?
 仁明天皇の皇子を産んだ三国町(みくにのまち)という女性がいて(この人も〝町〟ですね)、この人が更衣だったそうですから、小野小町も更衣というくらいの身分だったのでは、と推測されるわけです。

 更衣は字を見て分かる通り、天皇の衣類のお世話をする係。宮中の女官ですが、源氏物語にもあるように帝の寵愛を受ける可能性はありました。

 が、小野小町のあの「夢頼み」っぷりから考えると、そういう機会はなかったと思われます。
 美人だし和歌は上手いし、なのに帝のお目に留まらなかったのかと思うとちょっとねえ、「あれ?」って思いますけどねえ。

 だから案外、彼女の本命は帝よりも難しい人だったのかもしれないなあ、なんて思ったりもするわけです。

 いずれにせよ美人だから幸せな恋をしていたかというとそうではないらしい、というあたりで、なんとなくしみじみしてしまいます。

 歴史の片隅で。
 そんなふうに、自分なりの人生を、それぞれの想いを持って生きていたひとがいた——、それを教えてくれる気がします。小野小町の歌や、その伝承は。

 なんせサッカーでも箱根駅伝でも、優勝争いはほぼ無視で(←)残留争いやシード権争いにばかり注意が傾き、そこで泣いたり笑ったりしているような人間なので。
 歌と伝説を残すだけの、幻のような「名もなき人」の方に心惹かれてしまいます。

 まあ、まともに名前も残っていないといえば、我らが紫式部も同様なんですけどね。
 紫式部さんはそれでも親が誰なのかわかっているだけ、小野小町さんよりはマシ。

 具体的なことがわからない分だけ、後世の人間には想像力を働かせる余地があるとも言えるわけで。
 今年の大河ドラマ、楽しんでいきたいと思います。


 
 

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