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運命開花 :光る君へ 32回「誰がために書く」

 光る君へ 32回「誰がために書く」

 今回、個人的にはいちばん心惹かれたのは安倍晴明さんのことなんですが。
 このかたについて語ると長くなりそうなので、後日、また稿を改めて書きたいと思います。

 それ以外のことでいうと。
 いろんなことが少しずつ動き始めたな、と。

 まひろちゃんの原稿執筆と出仕。
 まひろちゃんと道長さんの関係。
 一条帝と彰子さんの関係。

 別項としては公任さんの昇進(でいいかな? 位階が上がるのはまた別の言い方がありそう)。
 細かいことだけど、公任きんとうさんと斉信ただのぶさんと、我らが「黒光る君」実資さねすけさんとで
従二位じゅ に い、従二位、正二位しょうにい
 という謎の掛け合いが楽しかったですね(笑)
 大真面目なドラマ中に、こんな「息抜き」があるのも楽しみの一つ。

 いろいろあって、それぞれに思うことも言いたいこともありますが。
 今回の一番の「柱」は、まひろちゃんのアイデンティティの確立とその表明だったと申せましょう。

 一条帝にお読みいただこうと差し上げた「桐壺」(源氏物語)が、帝のお気に召さなかったと思い、それを知らせにきた道長さん。
 力になれず申し訳ないと言いつつ、なおも執筆は続けるというまひろちゃん。
 書きたいものを書くと決めた。
 その心を掻き立ててくれたのは道長さん。
 ――そのことを深く感謝すると言われて、道長さん、嬉しさはあったのではないでしょうか。

「それが、お前がお前であるための道か」
「さようでございます」

 まひろちゃんがきっぱり言ったとき、カメラは道長さんの真正面に回り、その表情を捉えていましたね。(カメラ目線ではない)
 互いに引き立て合い助け合う、ソウルメイトの光が双方に差し込んだ場面だったのだなあと思います。

 自分の存在が、相手の存在の中でたしかに確立し、助け合っていること。
 大袈裟な表現はとらなくても、それは喜びそのものでありましょうね。

「俺が惚れた女は、こういう女だったのか」

 という道長さんの心の声は、まひろちゃんの「開花」をみる驚きと喜びと、そして戸惑いに満ちていて、みている側としてはうふふふふふと笑ってしまいました。

 蕾のときと、実際に花が咲いたときとではやはり姿が違う。
 それがいずれ花になることを知っていても、実際にその姿を見ると、今までとは違うから戸惑いはある。
 でもそれは「惚れ直す」に等しい喜びでもありましょう。
 
 
 晴明さんはそんな道長さんに
「ようやく光を手に入れられましたな」
 と、臨終まぎわの面会で語りかけました。
 まひろちゃんのことだと悟ったときの道長さんの表情がなんともいえないものでしたね。

「これで中宮さま(彰子さん)も盤石でございます」――という言葉から、単なる色恋の話ではない、もっと深く「広い」縁なのだということが浮き彫りにされていく。

 通常の、恋人だったり夫婦だったりという意味では「手に入れて」はいないんだけど(この点が道長さんの心境としては複雑なところでしょうが)、でも、遠く離れていた日々を思えば「ようやく」――、その感慨は道長さんの胸にも灯っていたでしょうね。

 晴明さんと道長さんについては冒頭に申しましたようにまたあらためて、ゆっくり書きたいと思います。

 さても一条帝。
「桐壺」を読んで
「自分への当てつけか?」
 なんていうから、気に入らなかったのかと思いきや
「続きを読んでから、作者に会おう」
 さりげなく何気なくいうから、聞いた側は「え?!」でしたね。

 え、気に入らなかったんじゃないの? 続き読みたいの?
 ――と、道長さん、驚き、次の瞬間には「やった――!」と言いたいところだったでしょうがそれを抑えて平静に「承知つかまつりました」と。

 あとはもう弾むような足取りでまひろちゃん宅にきて、出仕しないかとリクルートして、いうだけ言って帰っていく。
 やはり、まひろちゃんとからむ時の道長さんは最高だな♡ と思いました。
 たとえ言葉や表情を抑えていても、出てくるんですよねえ彼の「素」が。

 とはいえ、その出仕、宮仕えが過酷な道であることは視聴者誰もが知っている……
 というところで今回は幕となりました。
 
 毎回毎回、あっという間の40分。
 またさらに、次回を楽しみにしていきたいと思います。


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