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海から来ました。(エッセイ)

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エッセイと写真。
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2019年8月の記事一覧

目を閉じて誰かに出会うこと、その手をにぎること。

なにか、の中にいるのだった。 ここはどこなのか。いや、それよりも、この身体の周りにあるものは一体何なのか。焦りはないけれど、緊張はしている。この状況は、異常だ。 浮遊感はある、が、明らかに空気でない何かに支えられている身体。ちょうど今は両肘が身体の外側に向き、手は身体の前にあって、足は、足は、これ足はどうなってんだろ。折りたたまれてる。たぶん。 肩から先を動かそうとすると、抵抗が大きかった。どこなら動かせるのだろう。試しに指先に力を込めた。 ずぬぬぬぬ。 左右の手

おとこをみつけた

仕事を終えて、保育園に向かって歩く。迷わず海沿いへ続くドアに手をかけた。足取りは軽い。晴れているけどそう暑くもない。眼前の海の湿った存在感に反して、髪をすすぐように向かってくる風はさわやかだった。 いつもより少し早く迎えに来ただけなのに、わたしの顔を見た双子は「おかーちゃん!」と跳ねて喜んだ。 靴をはいてリュックをしょった二人は、園庭で、上手になったという鉄棒の技を披露してくれる。「見て!ほら!」という声も表情も、わたしを安心させる。二人がこの園に入れてよかったと何度も思