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2020年11月27日 佐々木!佐々木!佐々木!

今週の頑張りは、今日映画館に行く時間を作るためだった。


佐々木、イン、マイマイン

3月の初め、なんとなく世の中がコロナに支配され始めていた頃、なにやら雲行きが怪しいけど、この映画が無事完成し公開されることが希望となるようにと願かけするような思いで、このプロジェクトが募っていたクラウドファンディングに参加した。
それ以降、どこかでいつも、あぁ佐々木はどうなったかな、と気にかけていた。
創る側の方々が大きな想いをもって取り組んでいたことが伝わってきていたから、停滞がありながらも無事公開に至り、嬉しさもあるけどそれよりホッとしたという気持ちで今日を迎えた。

27歳である現実と高校生だった過去の二つの時間が交互に展開していく。
高校生男子の日常。それを通り過ぎてきた人や実際通り過ぎていなくても「epoch TV square 」や「THE3名様」にハマった人なら確実にニヤニヤしてしまうくだらないぬるい空気。客席から男性の笑い声が聞こえてくる。

期待に応えたい。
感じたものをそのまま言葉にしたい。
友達を後押ししたい。
自分の好きな歌を歌う人と一緒に歌いたい。
甘えたい、でも、そう出来ない。
誰もが心に抱いているもの。
ぬるい空気の隙間にはぬるくない抗えない現実があること。

ぬるくない抗えない現実は、案外大人になっても変わらなくて、そのことに鬱々としながらもその中で何とか生きていく。
自分の望む未来を諦め冷めきっているようで、何かきっかけがあれば溜め込んだ熱いものが噴き出してしまう、そんなギリギリの感じ、季節くんならではだと思って悠二を見る。
多田と再会した時、地上の多田と2階の悠二が交わした言葉、悠二の選んだ言葉とその温度、好きだなぁ。

そして悠二が、邪気も他意もなくただただ「生きる」、そのパワーの塊に触れ、圧倒されみるみるうちに心が動かされていく様子は、瞬きを忘れる程だった。
失いかけたものが蘇ったのか、忘れていたものを思い出したのか、全く新しいものが満ちたのかわからないけど、まるで化学反応のような変化だった。

圧倒されたまま、いや、また別の圧倒も加わって終わりを迎える。
人が集まる空間で声を出すことがタブーとされない状況だったら、絶対客席から佐々木コール上がってたよなぁと思いながら席を立つ。

映画館を出て、デパートの地下に向かい、クリスマスの催事で出ているらしき店で目に止まった普段買うことのない高いチョコレートを買った。そうしないと自分が大人でいる現実を取り戻せないような気持ちだった。
心の中の佐々木の引力に引っ張られたまま、無理矢理大人のふりをする帰り道だった。

製作に携わった方々は予想できなかった停滞に本来しなくてもいい苦労をされたことと思う。
でも、何だかそれすら運命だったと思うような、いろんなものを巻き込んで、抗えないものに飲み込まれながらもそれでも進んでいく、それを今やることに意味があるんだ、と感じる作品だった。
内容もタイミングも、今だから。苦労の大きさを知らずにこんなこと言ってはいけないのだけど。

クラウドファンディングに参加するという応援の仕方を初めて経験したのが、「佐々木、インマイマイン」でよかった。
また、上映期間に映画館に足を運びたい。佐々木に、悠二に、あの頃の自分に会いに。
佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!……!

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