小さな・・・
2022年 1月
小さな映画館「シネマ・チュプキ・タバタ」は、東京・田端の商店街の一角にある。そこで新年早々、毎週水曜日に特集上映をやってもらった。『いまはむかし』『妻の病』『ゆめのほとり』の三本立て…。
オミクロン株の感染者が激増する中、10数人でいっぱいになってしまう映画館で上映し、毎回トークをやった。
こんな状況の時に誰も来ないんじゃないか、と思っていたら、さにあらず、どの上映も熱心なお客さんで埋まった。
映画を観て、毎回30分近い私の下手くそなトークを聞いてくれて、なおかつ、しっかり感想を書き、パンフレットまで買ってくれて、いい顔をして「ありがとうございます!」と言って帰って行く。もちろん私も「ありがとう!」と言い返す。
映画はいいな…、映画館はいいな…と思う至福のひとときだった。
二年前のコロナ禍から、多くの自主上映はほぼ止まった状態が続いているが、私は自分たちが企画・主催する上映だけは続けてきた。淡々と…。
たとえお客さんは少なくとも、こおいう時こそ、上映の場を、自分たちが提供していかなければ、と思って。
やればやるほど、上映すればする程、赤字が増えることは目に見えているけど、そおいう問題じゃ、ないんだ。
映画を、それもただでさえ毎度集客に苦戦するドキュメンタリー映画を、創り続けるナリワイを生きてきた私にとって、ここはゆずれない一線なんだ。
だって、映画を創り、観てもらうことしか、自分には出来ないのだから…。
小さな映画館での上映、小さな自主上映…、そして私が創ってきた映画の内容の多くは、人々の普通の日々を描いたヒューマンドキュメンタリー、小さな「映画」なのだ。それでいい。
「監督」という肩書きがどうもしっくり来ないので、私はクレジットタイトルにも「演出」と入れている…。
で時々、「伊勢さんは監督じゃないんですか?」とか、「ドキュメンタリーも演出があるんですか?」とか言われる。
立派な大げさな映画ではないけど俺のも一応映画なんだ…。小さなささやかな”物語“だけど、そんな映画を一本一本、こつこつと丁寧に創ってきたつもりだ。
いつもお客さんは多くはないけど、私の小さな映画に共感を寄せてくれる人も、いなくはない。お客さんが一人でも二人でも来てくれると、「アンタらしい映画を創ってていいよ…」と励まされた気がして、ついつい又、売れない映画を創ってしまう。ずっとそんな風にナリワイを生きてきた。
アーティストと言うよりアルチザン。“アルチザン”とは、「職人」というニュアンスがあるらしい。芸術家というより職人という感じの方が近いし、好きだな。
新作『いまはむかし』は同じようにアーティストというよりアルチザンだった映画人、父・伊勢長之助が生きた記録映画人生のヒトコマを撮り上げた内容だ。戦争の時代の物語…。「戦争」という大きなテーマを、私的な物語に矮小化し過ぎている…と批判されもしたけど、私には、小さな物語しか創れないのだ。
小さな物語をしっかり見つめて映像化することで、本当の物語にたどり着くに違いない、と信じている。
これからも小さな映画を創り続けよう。
そして、小さな映画館や小さな自主上映で観てもらい続けよう…。淡々と。
だから、観に来てほしい。
(かんとく・伊勢真一)
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\1月29日(土)〈東京〉 日比谷図書文化館/
《伊勢真一監督作品 バリアフリー上映会》
『いまはむかし』 英語字幕付き上映 11:00〜
★伊勢真一監督トークあり(英語通訳あり)
『えんとこの歌』 日本語字幕・音声ガイド(日本語)付き上映 13:30〜
★平塚千穂子さん(シティ・ライツ代表)ワークショップあり
会場:日比谷図書文化館 B1F 日比谷コンベンションホール
千代田区日比谷公園1番4号(旧・都立日比谷図書館)
問合せ:03-3406-9455(いせフィルム)
いせフィルム「上映情報はこちら」(いせフィルム公式サイト内上映情報)
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