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青春とスピード感

音楽に興味を持って、いろんなものを聴くようになったんだけど、結局10代の時に好きになった音楽に結局戻っていくということもよく聞く話ですよね。今こんな文章を書いているのも懐古趣味には違いないんだけれど、音楽だけでなく、あの時に感じていた空気、雰囲気、気分、といったどの言葉でも一言では充足できない、あの時代に感じていた感覚をもう一度よみがえらせたいな、とも思うからなんですね。

Heavy Metalの聴き始めの頃なんて、あの音のでかさと、リフとスピードに病みつきになるんですよ。それでいろいろ探し始めるんです、もっとすごいものはないかと。Motorheadから始まった当方のMetal体験でも、80年の初頭なんて、それより速いバンドを探すなんて無理なんですよね。今から振り返るとそんなバンドは少なかったんだけど、そういう事情も分からないほど情報の量が今とは違う。おまけにバンドの数も違う。しかも経済的に恵まれない中坊ですよ。出会えないですよね。日曜の深夜(早朝か)のラジオ日本でやってたRock Todayでマイナーなバンドたまに放送してたけど、何せあの時間は眠いもんね。聴いていても忘れちゃう。

そこで一番役に立った情報源がMusic Life誌です。インタビューも写真もあったし、アルバムレビューもあったけれど、一番見ていたのは広告、Metal系新譜の広告ですよ。

ジャケ買いの一種でもあると思うんですが、よさげな広告見つけて、その作品のレビューを読んで、レコード屋に行ってジャケみて、買うかどうか悩む。という一連の行動をとっていたもんです。その中でこのMetallicaのKill’em Allは、小型Motorheadというレビューなんだか、売り文句があって、飛びついた覚えがあるんですよね。と言っても、このアルバムを買ったのは友人で、それをカセットにダビングしてもらったんですけれど。

スピードを求める当時の中坊はA面1曲目でガッツポーズするんですよ。今でいうところのエアギターも弾きましたよ。この時に感じた感覚をうまく言葉で表せると小説家にでもなれるのかもしれないですが、そういう言葉が出てこない。ギターも触ったことのない中坊が、ハマースミスオデオンのステージに立つことをいきなり妄想し、ギターがないからしょうがなしにテニスラケットをかき鳴らすという行動を引き起こすような、強烈に具体的なイメージをそいつの脳内に生じさせる、というような、妄想遠隔操作を引き起こすような強烈な曲だったんです。まさにMotorheadの生まれ変わり、いや、例の極悪ライブよりも聴きやすい音だったから、また違った、新時代のHeavy Metalという印象はありました。

これから少したってThrash Meetalというジャンルが隆盛を極めるわけですが、こうしたMetal内のジャンル細分化が起きる現象の発端ともいえると思います。確かにRattとかそういったヘアメタル勢とは違ったけれど、根っこのどこかでは繋がっていることを感じながらも、やっぱり違うという点を強調してジャンル分けをする、そういった時代でした。

このアルバムの中で語りたいものはまだあるのですが、Thrash Metalがメジャーになるきっかけを作ったこのアルバムを、ほぼオンタイムで聞けたというのは、今から考えるとかなり貴重な経験だったんだなと思います。

これってかなりの優越感ありますよ。先行していたと言っても、今から振り返ると別になんでもないんですけどね。




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