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<伊勢滞在記>興梠 優護 | KOHROGI Yugo

元伊勢の一つ幣立神宮のある旧蘇陽町出身の僕にとって、伊勢は特別な場所であり憧れの地でもありました。ちなみに、この幣立神宮の主祭神は神漏岐命・神漏美命(かむろぎのみこと・かむろみのみこと)これが転じて興梠(こうろぎ)姓となったと言われています。もう一つのルーツは高千穂にあって、神漏岐山のふもとにある荒立神社。ここは興梠姓を氏神として、祭祀されて来た神社でもあり、主祭神は猿田彦命と天鈿女命。内宮横にある猿田彦・天鈿神社へと繋がっています。
僕にとってこの地での滞在は、自身のルーツを辿る時間でもありました。

興梠2

初冬とは思えないほど暖かく(というか暑い)天候にも恵まれた2週間の滞在は、振り返るとあっという間。特に印象的だったことの一つが上の「神馬見参 しんめけんざん」。毎月1日、11日、21日に外宮・内宮それぞれの神馬が御社の前に立ちます。拝礼している様子が神々しくもかわわいらしい。 
馬は幼少の頃まで実家で飼っていて、特に親近感があるんですね。僕にとっては犬猫と同じ感じで、この神馬と、神宮徴古館で見ることのできた鶴淵毛御彫馬から着想を得た作品をこちらに帰ってきてから制作中です。

興梠3

気に入って何度も訪れたのは内宮近くの五十鈴川。緑の木々が映りこむ澄んだ水のなかで泳ぐ魚と、遅めの紅葉の赤色が映えて、とてもきれい。
水中と水面に反射される光と木々、それぞれにピントを合わせているうちにその風景のなかに溶け込んでいくかのようで心地いい。あとは横丁の中華そばが、まじうま。

興梠4

これまで世界各地で滞在し制作を行ってきましたが、基本的にその地で出会ったものにインスピレーションを得て、制作が始まっています。これを成り行き任せとも言うのですが、これまでと同じ作品を同じように作るならアトリエに籠もっていればいいと思うので。
今回は素材やモチーフとの出逢いに恵まれ、帰ってきてからいくつかの作品を制作しています。下にその経緯など、まとめました。

麻福 
アトリエとして空間を使用させて頂いた麻福さんで、生産されている麻の布地を提供して頂く。普段キャンバスに絵を描いている自分にとって、実は麻布は最も身近な素材。こちらで大麻の歴史に関する資料などを見せて頂いたことで、日本文化との邂逅やその可能性など、新たな着想を得ることができた。実は、現在使用している油絵具の抜本的な見直しと研究を行っている最中で、更に麻に関して学べたことは幸運だった。早速この素材を使い、制作を行っているところ。写真は麻福で展示してあった大麻草。素材そのものに魅了される。

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菊池パール
こちらで、あこや貝の貝殻を提供して頂く。以前スペインでの滞在の際に美術館で見た、貝殻の裏に絵が描かれたものが強く印象に残っていて、ずっと貝殻を探していたんだけど、、実際どこで手に入れたものかという段階で頓挫していたので、嬉しかったな。
お話伺うと、菊池さんのルーツは熊本県の菊池という土地ということで、そうした縁にも結びつけられたのかなと。こちらも戻ってきてから鋭意制作中。こちらでは真珠の取り出し体験も出来るので、おすすめ。

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夜は次の作品のリサーチもあって、持参のプロジェクターでひたすらツインピークスThe Returnを観る。ドラマだと、中々まとまって観る時間取れなかったりするので、実はこういう時間こそありがたかったりする。

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移動することが何かと困難を伴う時代になりましたが、僕はこれまで動くということをベースに生き方を設計してきました。新たな地を訪れ、生活を行うことで見えてくる、新奇の視点や考え方に常に刺激をもらう。「いつも」ではない場所に身を置くことで、自身とその環境を省みる機会としています。そして、それは物理的な移動だけに依らず、時間や歴史を横断するということでもあります。
伊勢での滞在を通して、物理的に移動することが困難な今だからこそ、繋がる・繋げていくという文化や伝統の本質に改めて、今とこれからを生きるヒントをもらったような気がしています。
今回の滞在で終わりという訳ではなく、伊勢で着想を得て制作した作品とともに、この地とこれからと繋がっていくきっかけとなればと思っています。そういった意味でも、いずれ伊勢のどこかで作品を、お見せすることが出来たら最高です。 最後に、こうした機会を提供頂いた伊勢市役所と、お世話になった伊勢市のみなさまにお礼を申し上げます


興梠 優護|KOHROGI Yugo
u5oguy@gmail.com
http://oguy.jp
https://www.instagram.com/yugokohrogi/?hl=ja

【滞在期間】2020年11月16日〜11月28日

※この記事は、「伊勢市クリエイターズ・ワーケーション」にご参加いただいたクリエイターご自身による伊勢滞在記です。
伊勢での滞在を終え、滞在記をお寄せいただき次第、順次https://note.com/ise_cw2020に記事として掲載していきます。(事務局)