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伊勢滞在記-01 / 庭園美術家 長崎剛志 / N-tree

自分は美術と庭園のエッセンスを曖昧に混ぜ込んだような作品をつくっています。独立して25年ほど経ちますが、木と石のつかみどころのない自然観に魅了され、庭仕事に尽くしてきました。


「神社の庭」を探しに。

2020年に長崎県諫早市の諫早神社で庭園計画の依頼があり、デザインを進めていく中、ふと「神社の庭って何だろう?」と考えはじめました。奈良生まれ、高校は京都のお寺にある学校という環境で育ったこともあり、いつか神社仏閣の庭をつくりたいと思っていたので、その部分を掘り下げて見ようと思いました。そんな中、伊勢クリエーターズワーケーションの記事を美術手帳でみつけ、参加させてもらいました。コロナの影響下での伊勢訪問でしたが、この時代に、大神宮の庭(神社の庭)を見つけることが、滞在の目的となりました。

2023年1月5日から7日、家族でバケーション
2023年1月8日から12日、庭の研究


豊受大神宮(外宮) 川原祓所の三ツ石


伊勢の岩石風景

長崎県、諫早神社での庭園工事も進行し、700トンもの岩石を一石一石動かしている中で、その生命力にやられながらもエネルギーを与えてくれる「石」という存在が人間との関係にどのように影響しているか? 樹木、緑の風景は、ほぼどんな民族にも安易に好まれるが、岩石の風景となると身構える人も多いのではないか?しかし、その硬い物質は様々な可能性を持ち、過去、現在、未来の風景を伝える生物のようにも思える。

外宮東御敷地 石垣のくぼみ


2023/ 1.07 早朝の外宮参拝

上から押さえ込まれた石
石の突起を強調した石積
中央の石への合わし方を変えた目地表現
多賀宮遙拝所は石の線上に絡められている場
板垣南御門の差石と手前縁石の役割
繊細に合わされた石張の目地を補う小さな砂利たち
最下段の石は全ての重さを受けるために深く根入れされているに違いない
可愛いコビト石のアクセント 一石一木の風景
月夜見宮 石垣のでっぱり


2023/1.08 二見へ移動

宿泊先「日の出館旅館」前 世木神社
手水鉢の盃状穴 石に穴をうがつ
穴の目的は不明らしい
石垣の角石、造形的なもので押さえている。青い象?
二見夫婦岩表参道
茶屋庚申堂 緑地の縁石の美しい石英
石の細胞風景
朝日稲荷大明神の石垣 技術に裏づけされた、
出っ張りのバランスや天端ラインの遊び心
大明神の崩れ石組
無作為な傾きと崩れ方は山で見る風景を思い起こす


2023/1.09 御塩殿神社と平和之塔

御塩殿神社の縁石

「曲がりまっすぐ」という言葉があるが便利な言い訳言葉で、庭の仕事中よく使わせていただく。同じ形がない自然な石をまっすぐに並べるのだから幾何学的な直線は作れる訳がない。きれいな直線を作ることが目的であるなら機械で加工してならべればいい。ただ、自然石でも技術力の高い伊勢の石工さんなら、もっとまっすぐなラインを作れるのではないかと思って見てきたが、どうも作為的にずらしている気もする。もしくは地面の動きによるものなのか?そうだとすると石を据える行為は、人と自然の共同作業。

石を据える時、形と相談しながら決める。
特に階段の石は実用性が求められるが、神聖な領域への方向を指す意識は持ちたい。
平和之塔 慰霊碑
ヘキサゴンの積み重なる石の塔

伊勢滞在記-02 につづく


Takeshi Nagasaki

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長崎 剛志(Nagasaki Takeshi) 庭園美術家

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【滞在期間】2023年1月5日〜12日

※この記事は、「伊勢市クリエイターズ・ワーケーション」にご参加いただいたクリエイターご自身による伊勢滞在記です。
伊勢での滞在を終え、滞在記をお寄せいただき次第、順次https://note.com/ise_cw2020に記事として掲載していきます。(事務局)