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73 ただより高いものはない

普段クーポンなどまったく使わないタチなんだけど、この間スタバでソイラテを買った時に、レシートについているクーポンのことを店員さんが懇切丁寧に説明してくれたので、どれ、使ってみるかとクーポンを大事にとっておいた。

どうやらそのクーポンを使うにはまずアンケートに答えてクーポンコードをゲットする必要があるらしい。レシートに印字されたQRコードを読み取って、飛ばされたアンケートページでいくつか質問に答えるとクーポンコードが出てきた。5分もかからなかった。クーポンコードをレシートに書き込み、後はこれを持ってスタバに再訪すれば良い。

今日のお昼、よし、今日外出する時に使ってやるぞと、そのクーポンをスマホケースに忍ばせた。高額当選した宝くじでも持っているかのように、ポケットの中にあるクーポンのことをいちいち気にしながら最寄りの駅までの道を歩く。

駅のそばのスタバにつくと、小さなレジ横の通路に2人ほど先客が並んでいて、僕は床に記された導線表示に従って列に加わった。導線は店の奥で一度折り返すような形に引かれていて、ちょうど折り返すあたりで順番を待つために止まることになったんだけど、その止まった場所でふと顔を上げたら、目の前にドーナッツだのサンドイッチだのが入ったガラス張りのフードケース。

まず「ツナ&グリーン」というサンドイッチが目に入る。とても美味しそう。フードケースのこの照明がいけない。美味しそうな色合いになるようにきっと調整されている。食欲をそそる淡いオレンジ。ドーナッツなんかは照り具合といい芸術の域。そのまま映画の画になるくらい。

お昼でお腹が空いていたのもあって、結局僕は最初に目に入った「ツナ&グリーン」を頼んでしまったのだけど、まんまとやられた感を感じずにはいられない。だって、僕はただでコーヒーが飲めると思って来たのに! 「ツナ&グリーン」で550円。クーポンでゲットしたソイラテだけを普通に買ってもこの値段にはならない!

ブランド力というのか、もっと粗く言えば雰囲気というのか、スタバに入ると調子が狂う。550円のサンドイッチなんて普通だったら絶対買わないのに、上品上質な雰囲気がそれを当たり前にさせる。恐るべしスタバ。

ちなみにクーポンでソイラテを頼んだ時に、店員さんに「トッピングなどもなくてよろしいですか?」と聞かれたのだけど、「トールサイズのドリンクなんでも良い」というクーポンなのだから、もっと思い切った注文をすべきだっただろうかと後になって思う。店員さんもそう思っての質問だったのだろうか。僕はひとつもスタバの呪文を覚えていないのでシンプルにソイラテ。

おかげで僕はクーポンでゲットしたソイラテのことよりも「ツナ&グリーン」のことばかり考えている。店を出て広げた「ツナ&グリーン」を見ると、やっぱりさっきいたフードケースの中とは違って見える。太陽の光で描画された「ツナ&グリーン」は青々としていてさっぱりした印象で、こうしてみると、はっきり言ってなんてことないサンドイッチだ。味も可もなく不可もなく。特段美味しいわけじゃない(まずいわけではもちろんない)。良い質の材料を使っているのかもしれないけど、特別くせになるような味ではない。実際食べ終わってこの記事を書いている今「ツナ&グリーン」がどんな味だったかもう思い出せない。

「ブランディング」って大事だなという学びの話でした。

……違うか。

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