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Interstitial

Interstitial-〔鉱物の〕割れ目の、裂け目の〔人体の〕間質(性)の、間質内の、侵入型の、組織内の、介在の、介在性の、中間部の

辞書ので引くと今回のタイトルは上のような言葉が出てくる。要するになにかとなにかの「あいだ」のようなものだ。ただ、なぜこの単語を選んだのか引っ掛かった。「あいだ」を示すもっと簡単な言葉があるはずだ。

間質という普段聞き慣れない日本語の意味を調べてみた。

-臓器のうち、その臓器の機能を直接担っている部分(実質)以外の組織のことである。 血管、神経、膠原繊維(こうげんせんい、コラーゲン線維)などを含む。 基質、ストロマともいう(英語のstromaに由来)。 

なるほど、と思った。彼女の言葉がいう「あいだ」はもしかしたらただの隙間のようなものではないかもしれない。

ベッカ・トーマスの今回の展示は、布やドローイングを中心とした松戸の滞在中に制作した新たな部分と、アメリカで制作した部分で構成されている。生地は日暮里の繊維街まで出向き、調達をしてそれが今回の枕のような特徴的な形の部分に用いられている。

マルチメディア・アーティストと名乗る彼女。それは、布やドローイング、空間など様々な要素がミックスされ、クロスジャンルな彼女の表現方法から来ている。インスタレーションとも言えるが彼女の作品は素材が特徴でもあり、その点マルチメディアという言葉を選んでいる意図を感じられる。

中でも布は重要な要素のひとつだ。それを多用することは彼女にとって大きな意味を持つ。布は平面であるが、触ると布そのものが持つ手触りがあること。また縫い合わせれば枕のように立体になりそこからまた違った感触も得られる。そして使用するシルクオーガンジーの布は透過性もあり、風が吹く度に形も変わり、軽やかな空気感も持ち合わせている。そんなところに大きな魅力があると語っていた。彼女にとって質感や感触、素材から受ける印象ということが非常に重要な要素といえる。

また不定形なかたちは何かを表しているわけではなく、布をカットする時に彼女自身の勘や感覚でその時々に生まれているそうだ。何かを意図しているわけではなく、それこそ即興でダンスを作るかのように、布をカットする時の動きから自由に生まれている。

水彩紙の上にドローイングと布を貼り合わせた作品は松戸で生まれた新しいアイデアと語っている。スケッチからかたちを起こしたものもあれば、上記のように自由な線の動きの中から生まれたものまで様々である。そのようにして滞在中の日々のプロセスからも彼女ならではの発見があったそうだ。

今回、「読書推進センター」という子どもたちが集まる場所で展示をする彼女。ギャラリーなどとは違い、小学校にも隣接し子供が多く集まる場所だ。そこで自身の作品から何を子供たちに感じて欲しいか、とアーティストにとって少し難しい質問を投げかけてみた。

まずは、触ったり、部屋の中で動きまわったり、まくらのようなクッションに寝転がったりして欲しい。布が波打ったりする動きを感じて欲しい。そしてこの場所で遊んだり、静寂を感じたり自由にして欲しいと。ただし吊り下がってる布は引っ張らないでね、と答えてくれた。

さて、「あいだ」とはただの隙間のようなものでないと冒頭に書いた。彼女の感じて欲しい「あいだ」とは何なのだろうか。今回の展示タイトルについて聞いてみた。

今回の展示作品と部屋の間、ビルとビルの間のように何かとの間のには空間がある。私とあなたの間、作品の垂れ下がっている布と布との間。もしかしたら性別かもしれないし、人間同士の関係かもしれない。その2つの間に生まれる空間が重要なことなのだと。

間質という言葉の意味を調べた時、そこにある重要な部分に彼女の眼差しが向いているのだと感じずにはいられなかった。日本語だと重要な臓器と臓器を繋ぐ部分、血管や神経などを指す言葉でもあるらしい。つないでいるあいだの部分。その場所こそ今回のタイトルとなっているのだ。

目の前にあるやわらかな布と不思議な形のクッションを触ってその感覚を得る。そして目線をすこし先に向けて作品と作品の間に見える空間。彼女の作品を通して見える「あいだ」の空間をそっと見つめて欲しい。当然だと思って普段気にも留めていなかったことがもしかしたら見つかるかも知れない。



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