短すぎる生涯現役 Clifford Brown :リズムラボ
トランペット奏者の Clifford Brown (クリフォード・ブラウン) は1930年10月30日にアメリカ合衆国のデラウェア州で生まれ、バンドリーダーとして16作品、サイドマンとして10作品に参加。
彼は25歳の時に自動車事故で亡くなりました。彼の活動期間は4から8年と言われ(録音参加とライブステージでのパフォーマンス)、短い期間ながら多くの音楽家に愛され、多数の録音やステージ・ショウに関わりました。
クリフォード作曲の Sandu (サンドゥ)、Joy Spring (ジョイ・スプリング) Daahoud (ダフード) はジャズのスタンダード曲として広く親しまれています。
Sandu - Clifford Brown
Joy Spring - Clifford Brown & Max Roach
Daahoudは過去に投稿した記事があります↓
クリフォードが生まれた1930年から56年のアメリカ合衆国
アメリカ合衆国では1929年に株価が大暴落。その一年後にクリフォードは生まれました。
33年には、ルーズベルト氏がニューヨーク市長を経て大統領へと就任。
ルーズベルト新大統領は「ニューディール」政策を推し進めます。ルーズベルト大統領は国民に向けた就任演説で、「われわれが恐れなければならないものはただひとつ、恐れそのものだ」と宣言しました。
このころの合衆国は多くの失業者がいました。
約1300万人もの合衆国民(労働力の4分の1ほど)が失業しており、食料配給所で見られる人々列はほとんどの都市で一般的にみられる光景でした。
何十万もの人々が、食料、仕事、住居を求めて、全米各地を渡り歩いた。「Brother, can you spare a dime?(兄弟よ、10セントわけてくれないか?)」という歌が流行りました。
ドイツがポーランドに侵攻、パリを陥落させてイギリスとの空中戦に入り合衆国も戦争へと向かい、終戦。45年の「戦争終結」の時のクリフォードは15歳。日本で言うならば小学校の高学年から中学生にあたる期間に世界大戦をしていた世の中で、彼が受けた影響が気になります。
戦後から54年までのお話は過去記事の ”Daahoud” を参照してください。
クリフォードのリーダー作品
New Faces, New Sounds (Lou Donaldson/Clifford Brown Quintet) (Blue Note, 1953)
Swing Jazzの名残があるビートに愉快なメロディが雰囲気を盛り立てる。そんなリズムを感じます。
Jam Session (EmArcy, 1954)
これでもか!という様な早いフレーズ。
クリフォードのテクニックを物凄く早いビートが支えています。
Clifford Brown with Strings (EmArcy, 1955)
一転してゆったりとした豊かな響きが楽しめるアレンジに仕上がっています。タイトルにもある様に弦楽器を多用したアレンジは今の感覚で聞くと、アメリカの古典映画を観ているような感じがしてきます。
Clifford Brown & Max Roach (EmArcy, 1955)
ドラムヒーローのマックス・ローチとの連名での録音。
クリフォードとマックスのフレーズの相性の良さをひしひしと感じる録音です。
Brown and Roach Incorporated (EmArcy, 1955)
続いてもマックス・ローチとの連名での録音。
物凄いテンポ感の楽曲に高い次元で即興演奏をしあっている彼らの音楽が聞こえてきます。
Study in Brown (EmArcy, 1955)
Jazzスタンダードの中で最速クラスのCherokee(チェロキー)から始まる録音。
徐々に速さを増して行く録音からは、前作を超えたい!という彼らの情熱を感じます。
Best Coast Jazz (EmArcy, 1956)
いわゆる聞きやすいテンポの録音になっているCoronadoから始まります。
絶対的なテクニックに裏付けられた演奏の余力からは、並々ならぬリズムの懐の深さを感じます。
Clifford Brown All Stars (EmArcy, 1956)
クリフォードが演奏するCaravan。
彼らしい早いパッセージが続きます。
Clifford Brown and Max Roach at Basin Street (EmArcy, 1956)
マックスのリズムにクリフォードのリズムが溶けていく。
そんな録音に聞こえます。彼らが残してくれた音楽に感謝しながら記事を書いています。
Jazz Immortal (Pacific Jazz, 1960)
クリフォード自身によるDaahoudの再録音から幕をあけます。
前作とは雰囲気が全く違い、参加ミュージシャン全員で音楽を創っているという事がここからもわかります。
The Beginning And The End (Columbia, 1973)
フィラデルフィアで1956年の6月25日のライブ録音。
当時のライブハウスの雰囲気が伝わってきます。
Live at the Bee Hive (Columbia, 1979)
マックスとクリフォードによるライブ録音。
マックスのリズムは改めて気持ち良いと感じます。
Pure Genius (Elektra Musician, 1982)
バラード曲から始まる、クリフォードとマックスの連名での録音。
クリフォードがサイドマンとして参加した作品
Art Blakey and The Jazz Messengers, A Night at Birdland Vol. 1 (Blue Note, 1954)
ドラマーのアート・ブレイキーと演奏したライブ録音。
Sonny Rollins, Sonny Rollins Plus 4 (Prestige, 1956)
サックスプレイヤーのソニー・ロリンズの録音に参加したクリフォード。
おわりに
ドラマーとしてもクリフォード・ブラウンのリズムやメロディにはわくわくさせてくれるものが多くあり、好きなトランペット奏者の一人です。
特にマックス・ローチとの演奏でみせるクリフォードのトランペットの躍動感はたまりません。
願わくば一度生演奏を肌身で感じたかった。そう思う振り返りになりました。
次はドラマーのマックス・ローチへと迫ってみようと思います。