Satin Doll ジャズスタンダード深堀り : リズムラボ

 さて!今回の記事で取り上げるのは、1953年に作曲された "Satin Doll(サテン・ドール)"。
 作曲者はアメリカ合衆国のジョージア州出身の作曲・作詞家のJohnny Mercer(ジョニー・マーサー)氏。作詞は ジャズオーケストラのリーダーでピアニストのDuke Ellington(デューク・エリントン)と Billy Strayhorn(ビリー・ストレイホーン)の両名によるものです。

 当時のテレビの映像の冒頭に興味深い場面がありました。
 ドラマーはしっかりとブラシを持って演奏しているにもかかわらず、ほんの少ししか音がマイクに収音されていません。
 この当時の音源や映像を見てドラムのサウンドを研究するときは、音源から聞こえる音量=当時の演奏音量では無い可能性を頭に入れておく必要がありますね。


歌詞でみる Satin Doll

Cigarette holder- which wigs me
私を飾るタバコケース。
Over her shoulder - she digs me
彼女の肩越しに、彼女は私を魅了する。
Out cattin' - that satin doll
堂々としている。サテン・ドール。

Baby shall we go - out skippin'
他へ行きましょう。
Careful amigo - you're flippin'
親友よ。気を付けて。ヤケドするよ。
Speaks latin - that satin doll
「ラテン」を喋る。それがサテン・ドール。

She's nobody's fool so I'm playing it cool as can be
彼女を悪く言うものはいない。私はクールに行くよ。
I'll give it a whirl but I ain't for no girl catching me
彼女アタックしてみるよ。でも束縛はごめんだ。

Telephone numbers - well you know
電話番号は知っているだろう。
Doing my rhumbas - with uno
ルンバを踊るなら「1」と共に。
And that'n my satin doll
それもまた私のサテン・ドール。


ドラマーで見る Satin Doll

Buddy Richのスタジオ録音

 バディらしいスネアロールやハイハットワークが多く聴ける録音です。


Jo Jonesのスタジオ録音

 終始ブラシで演奏されるテーマは、彼の表現力とフットハイハットテクニックが魅せるフレーズワークを感じる録音になっています。


Elvin Jonesのスタジオ録音

 エルビンらしい深くはねたブラシワークを感じる録音です。安定しきったビートに彼のリズムのウネリを堪能できる音源です。


Ed Thigpenのスタジオ録音

 この録音では珍しく冒頭からスティックで演奏しているエドの録音を聴くことが出来ます。間を意識した素晴らしい響きの音源です。


Tony Williamsのスタジオ録音

 はっきりと発音しきるフィルにレガート。トニーらしさが冒頭から顕著に表れている録音です。

 

おわりに

 ジャズスタンダード曲のサテン・ドールを深堀してきましたがいかがでしたでしょうか。
 歌詞の中で、ラテン語を扱う人は妖艶であるとか、スペイン語の「uno」を英語の「You Know」に聞こえるように歌うなど、現代の音楽表現でも見られる手法が約70年前のこの楽曲からも見られました。

 1953年はソビエト軍が東ドイツでの「暴動」を武力鎮圧、朝鮮戦争の休戦、中日球場のナイター設備が完成、エリザベス二世が戴冠、 ソビエト連邦が水爆保有を発表、奄美群島が沖縄に先駆けてアメリカ合衆国から日本に返還、クリスチャン・ディオール来日。
などがありました。

 未だ戦勝に沸いていたといわれる合衆国で生まれたこの楽曲を書き、演奏した音楽家たちはどの様な景色を見ていた事でしょうか。

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