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ミダス王とパクトロス川の伝説 ゴールド5

鋳造貨幣(エレクトロン貨)を、世界で最初に発明(紀元前7世紀ごろ)したのはリュディア人だと言われている。リュディアはアナトリア半島(現在のトルコ)に位置する。

リュディア

リュディア人が貨幣を最初に発明し、さらには交易を発達させることが出来たのには理由がある。

一つは、リュディアの首都、サルディスは東西交易路(エーゲ海からユーフラテス川、さらには東アジアを2800キロ近くに渡って結ぶ)の要衝にあったということ。交易と商業活動は自然に発達し、商売に便利な貨幣を作る必要が生じた。そして、貨幣が生まれれば、銀行業が必要となる。こうしたことで、サルディスは大都市へと発展した。

そして、もう一つは砂金の流れるパクトロス河畔にサルディスが位置していたということ。このパクトロス川には、ミダス王(紀元前700年ごろ)の伝説が残されている。


ミダス王とパクトロス川

ミダス王は、酒神ディオニュソスに「自分の身体に触れたものすべてが黄金になる」という願いを叶えてもらった。しかし、すぐに、ミダス王は過ちに気付いた。口にしようとした食物が黄金に変わり、抱きしめようとした愛娘が黄金の像に変わってしまったのだ。そこで、ディオニュソスに元に戻して欲しいと願いでた。ディオニュソスはその願いを受け入れ、パクトロス川で身を清めるように指示をした。こうして、ミダス王は触れるものすべてが黄金になるという力をパクトロス川に譲ることとなった。

そのために、パクトロス川は砂金を算出するようになったという伝説が残されている。リュディア人は、このパクトロス川の豊かな金と周囲の山々から流れ出すエレクトラムがあったからこそ、貨幣を発明し、交易を発達させることができた。


パクトロス川はどこに?

過去に貨幣制度を発達させた国はあったが、リュディアのように制度がしっかりして、広く流通したものはなかった。ギリシア、ペルシア、ローマ、そして最終的にはヨーロッパやアメリカの諸国は全てリュディアが開いた道を辿っていった。

リュディア人には知恵があり、人格に優れていたと言われている。しかしながら、ミダス王の伝説がなければ、リュディア人は名を残さなかったかもしれない。やはり、リュディア人の繁栄は、パクトロス川の豊かな金があったからこそである。

しかしながら、このパクトロス川の場所は今でも分かっていない。


ゴールド 金と人間の文明史 ピーター・バーンスタイン

(2020年7月19日更新)

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