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ゴールド 金と人間の文明史-36 イベリア半島の目覚ましい発展

悪魔の時代を生き抜いた14世紀の人々は、あの暗い時代が晴れる日が来るとは思っていなかったに違いない。

だが、この苦難の恐ろしい14世紀がついに幕を引いて新世紀、15世紀が始まるとヨーロッパの状態は好転した。平和の訪れとともに、放置されていた農地が利用され、食料供給が改善された。そして、人口が増え、都市生活が元に戻り、商業と工業も息を吹き返した。


進歩はヨーロッパ全土で同時に起こったのではない。イタリアが最も発展し、ヴェネツィア、フィレンツェが商業、工業、金融、芸術で繁栄した。


そして、15世紀に最も目覚ましい発展をしたのはイベリア半島 -中世のヨーロッパでは辺境とされていた地域- だった。

1469年にスペインは統一され、イスラーム教徒のムーア人を駆逐し、ユダヤ人も追放した。スペインは外交政策でその勢力をヨーロッパ全土に広め、いずれはアメリカ大陸にも進出していく。


小国のポルトガルも揺れていた。1385年に即位したジョアンⅠ世はイングランドと永遠の同盟を結んだが、その盟約はいまでも有効である。

ジョアンの三男であるエンリケ航海王子は世界探検に意欲を燃やした。エンリケ航海王子の活躍から、喜望峰をまわって東方に至る航路とアメリカ大陸の発見が導かれ、マゼランによる世界周航で大西洋から太平洋への航路が発見された。

ポルトガルはこれらの探検の成功に勢いづき、ポルトガル本国で働く世代の男性人口が著しく減少するほどだった。


ゴールド 金と人間の文明史 ピーター・バーンスタイン

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