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事業計画書と資本政策

フェムトパートナーズの磯崎さんの起業のファイナンスを読了した(と同時に改訂版があることを知る)。その中でも特に勉強になった事業計画書と資本計画についてまとめたい。

スタートアップの資金調達

まず、前提としてほぼすべてのスタートアップは株式で資金調達を行う。
銀行からの資金調達は難しい。それは、銀行の融資の仕組みではリスクが取れないからだ。例えば100万円を金利1%で融資した場合、利益は一万円だ。しかし、仮にすべての融資が同じ条件だと仮定すると1件が不良債権になってしまうと、それをカバーするために100件の融資が必要になってしまう。実際に一流企業を退職し起業しようとした人が融資を断られたというツイートを見たこともあ。
一方で、株式でエクイティファイナンスを行う場合はIPOやM&AでExitに成功すると投資額は何倍にもなるのが一般的だ。その分、失敗も多くなっておりリスクをとって投資ができる。
そして、投資家から資金調達を行う際重要になるのが事業計画書と資本政策だ。事業計画書がなくても、投資を受けるスタートアップもあるが数は少なくほとんどの場合で必要になる。また、これらは資金調達だけでなく創業者やチームの事業についての理解を深めることにも役に立つ。
もちろん、どんなにきれいな事業計画を作っても事業自体がイケてるものでないと意味はない。

(銀行はエクイティファイナンスしないのか?)

事業計画書のフォーマット

本書で上げられているオーソドックスなフォーマットとしていかが挙げられている。これといって決まっているわけではなく政策金融公庫のHPにもテンプレートが載っているし、AirbnbUberのシンプルな初期のスライドも参考になるだろう。
・EXECUTIVE SUMMARY
 エレベーターピッチのようにA4用紙2~3枚に要約されて、面白い事業と思われるように書く。
・会社概要
 資本金などの基本事項、経営陣の概要、組織図、現在の事業内容、顧客
・外部環境
 マーケットの状況、市場規模、競争環境の現状と競争の要素、KFS(Key Factor of Success)
・数値計画
・検討している資金調達の概要や資本政策
 Exit戦略、想定企業価値の根拠、資金調達のスキーム、株主構成

数値計画

特に重要となる数値計画では事業戦略、販売計画、人員計画をもとにした損益計画が含まれる。損益計画は「会社がどれくらい儲かるかりそうか」を示す。
まずは、市場規模、顧客占有率、顧客単価、売上、経費、利益(損失)をおおよそ考える。Ecelで数値を何度もシュミレーションし議論を重ねることで具体的にイメージが固まる。
売上は市場環境(他社のベンチマークなど)や販売方法(ネット、得代理店など)、売上数量×売上単価を考慮に入れる。
他にも、売上原価や人件費、福利厚生などの販管費、法人税といったPL項目の見立てを立てる。
それが、まとまってくると貸借対照表の計画も立てられるようになる。
そして、最後にCF計算書となる。設備投資やその他の資産が重要でなくフロー中心のスタートアップならばBSやCF計算書はあまり重要視されないかもしれない。



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上記のAirbnbのスライドから数値を見てみると
まず、市場規模としてTAM、SAM、獲得市場がそれぞれ1.9B、532M、10.6Mとしている(宿泊件数)。またベンチマークとしてコーチサーフィンを用いている。そして、顧客単価を20ドルとして200Mの売上を立てている。

資本政策

資本政策とは「どの株主に、いくらの株価で、何株分の株式やストックオプションを割り当てるか」という計画。
事業計画から割り出したCFから企業価値を算定することでいつどのくらい発行すればよいかを決めることができるようになる。この事業計画(PL、BS、CF)→バリュエーション→資本政策のサイクルを何度も考えることで適切なモデルができてくる。
資本政策の修正は事業の修正よりも難しく、一度薄まった創業者の持ち分は高まることはほぼない。そのため、入念に考えることが必要である。

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創業者や従業員、投資家(VC)の株式数、比率をそれぞれの資金調達の段階でシュミレーションをする。また、ストックオプションを発行する場合には株式ではなく潜在株となり分けて考える。

持株比率

投資家の適切な持株比率はケースバイケースであるが、基準として以下がある。
・2分の1以上
 過半数以上の株式を1人の投資家が持つと普通決議が思い通りになり、取締役や監査役の選任などが自由に行えるようになってしまう。そのため、慎重に考えなければいけない。
・3分の1以上
 定款の変更など会社法上の会社の重要な決定には3分の2以上の賛成が必要となり3分の1以上の持株を保有する投資家は拒否権を持つことになる。
・3分の2以上
 創業者が3分の2以上の株式を手放すと拒否権がなくなり重要な決定事項を下せなくなる。

またストックオプションの比率が高すぎると上場時に悪影響が発生したりするため注意が必要で一般的には10%前後が多い。


他にも本書では投資契約や種類株について重要なことが記述されている。
種類株はほぼすべての資金調達で用いられる。つい先日、資金調達をした五常・アンド・カンパニーの資金調達でも「同社が発行する優先株式と転換社債型新株予約権付社債をそれぞれ引き受けたもので、調達した資金は23億3000万円。」とある。
見落とされることが多い事項がファイナンス周りで多くあり、起業家も投資家も繊細な注意を払うことが求められる。

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