幻の初監督作品を発見!
こんばんわ!
ついに見つけました!私、堂ノ本敬太が人生で初めて作った映画を。
その名も『お兄ちゃん』
お兄ちゃんの成り立ち
大阪芸術大学映像学科の二年次の必修授業である制作Ⅰという授業。
この授業では1年間を通して、
16mmフィルムでの映像制作を学ぶんですが、その授業、学年全体で6班に分かれて制作するわけです。
で、私もどこかの班に、と思って初回の授業に臨んだのですが、なんと既にどこの班も、チームを組んでいるわけです。
同期とほとんど関わってなかった私は、まぁ、余りものになったわけですよ。で、余りもの集団の中に紛れていると、「監督誰がやる?」となるわけです。
いやぁ、面倒だな、とか思っていたわけですが、そこが決まらないと進まないので、仕方なく手を上げることに。
こうして、『お兄ちゃん』という映画が誕生するのです。
制作過程
この授業は、毎週月曜日に撮影が行われ、大体14:00~17:00くらいの3時間の撮影が5週間続きます。合計15時間程度の撮影です。
と、書くと、まぁ10分の作品だし、そんなものか、と思うでしょう。
ただ、問題は、この映画を16mmのフィルムで撮らなければいけないこと、それから授業なので、先生方ががっつり指導に入ること。
そう考えると、どう考えても時間がない。
ということで、もともとあった脚本から、大幅に改変に改変を重ね、もともと15シーンあった脚本を5シーンに変更。また、すべてをデイシーンに変更し、内容も大幅に書き換えました。
もともとの脚本はこうです。
まあ、こう書けば、うまくまとまっているように感じるのですが、結局10分でそんな重い内容を描けるはずもなく、なんで小学生の女の子が、そんな短時間で受け入れられるんだよ!と、心底辟易する脚本でした。
ということで、内容はそのままに、
と書き換えました。
この変更に関して、大森一樹学科長をはじめ、先生方は死ぬほど激昂。
どういうことだ!と怒るのです。
まぁ、それは想像通りだったのですが、当時尖りに尖っていた私は、反論。
「フォードの静かなる男がイメージです。わからないんですか?フォードも知らずに、よく映画なんかやってきましたね。まぁ、どうせわからないか」
なんとなく、静かなる男という映画の、乱闘シーンみたいにしたいな、と考えていたにすぎないのですが、さすがの教授陣も、「ジョン・フォード」の名前が学生から出たことに嬉しかったのか、沈黙となりました。
今思えば、よく大人な対応をしてくれたな、と思いますね(笑)
余談ですが、今に至るまでお世話になりっぱなしの金田監督とも、この授業で担当だったことが、縁の始まりでした。
この『お兄ちゃん』の初号ラッシュのあと、くそみそに貶された私は、
「あのジジイ共は何もわかっちゃいない」と激昂し、
唯一褒めてくれた金田さんと喫煙所でたむろしてました。
「で、ドウノモトは次、何をするんや?」
「俺、ピンクがやりたいんです」
こうして、『濡れたカナリヤたち』『海底悲歌』が制作されることとなります。
決めごとについて
現場ではずっと、私と、カメラマンのサイコ君の暴走が続きます。
ただ、無秩序に見えた我々でも、決め事はありました。
「ロケマッチ」を目指さない。
ロケマッチとは、あるシーンとシーンがつながっているように見せることですが、例えば、洋風の扉を開いても、和室が広がっててもいいじゃないか、と思うわけです。普通こうだよね、という風にカットをつながないということを決めました。
それは、ロケ地だけにとどまりません。美術でも衣裳でもそうです。
キャラクターに合わせて、そのキャラの背景や生活、性格を滲み出させるのが、脈々と受け継がれた現代映画美術・衣裳の基本的なスタンスですが、そんなものは忘れようと決めました。
家だからって、土足厳禁にする必要はなく、家だからって、風船があったり、映画の照明機材を、ルームライトにしていてもいいじゃないか、と決めました。
「学科長を劇中で殺す」
これは完全に、おふざけですが。とにかく、面談でコテンパンにキレられた私たちは、こいつを殺そうと決めました。でも、単に殺しても面白くないので、なんとか考えました。撮影中、「勝手に殺すなよ!」と、学科長はニンマリしてました。
「無の映画を作らない」
この制作Ⅰにおいても、学内で作られた他の学生映画であっても、とにかく無味無臭のなんの味もない、ただ下手な映画が多かった。それだけは作りたくないと、切に願い、せっかく大学のお金でフィルムを使って作れるのだから、馬鹿みたいにふざけて、ただ自分たちだけが楽しい映画を作ろうと考えました。少なくとも、なんの味もない作品よりも、「オナニー」の方が幾分かマシだろうと考えたわけです。
以上、3点をもとにできた作品が、こちらです。
ぜひ、見てみてください。
『お兄ちゃん』
16mm / 10min / 2018年 / 監督:堂ノ本敬太
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