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Wildcats Glass House • 前田一郎

maeta ichiro

crafts days 2020

フタのあるコップ

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photo by neonhall (http:neonhall.com) natsumi

シャーレのような縁が立ち上がった小皿を作っている時に、ふと思い立って、縁を折り曲げれば、フタになるんじゃないかなと、試しに作ったものだった。あまりに安易だったし、少し滑稽さを匂わせている。なにやってんのさ〜と、嘲笑気味にからかわれるものと思っていた。しかし、見た人の反応は違った。不思議なものを見るようで楽しそうだった。「なにに使うんですか?」一応そんな質問には答えを用意してあった。「上にはおつまみを、下のコップには、これだけだよと我慢して一杯分の酒を入れて、、」ひとそれぞれにいろいろな使い方を思いつくものだ。薬味とつゆで冷麦、ざるそば。チョコとアイスコーヒー。和菓子とお茶。コーヒーとアイスクリームでアフォガード、これはどっちがコーヒーで、どっちがアイスクリームなのだろう?上の皿に穴を開ければ、ヒヤシンスが置けるね、それは勘弁してください。

いつのまにか36

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今年中止になったクラフトフェアまつもとは36回目の予定だった。ガラスのコップを作って、それを売るのを生業(なりわい)にしようと決めたのが36年前。長野市の郊外にある難波硝子製造所に技術を覚えたいから使って欲しいと訪ねて行った。そのころ難波ガラスではコバルト色の縁取りが波打っている昔ながらの金魚鉢とプラスチックに押されてほぼ医療の現場からはなくなりつつあったガラス製の尿瓶を作っていた。難波家と近所の人たちに手伝ってもらって成り立っている工場だった。
当時はガラスの情報などほとんどなく、やっと知ることのできたガラスコップ作り方と難波ガラスで採用している金魚鉢を作る方法は違っていた。当初は本など外側から入ってくるコップの作り方を必ず踏襲しなくてはならないと頑なに思い込んでいた。しかし、コップを作るそのことにはなにも違いはなく、慣れた作り方をすればいいのだといつ頃からか思い始めた。さらに、山から引いた天然ガスと廃油を燃料にし、常に身近にあるもので道具を作り、工場の横を流れる犀川の河底から鉱泉を引きガラス溶解炉の余熱で風呂まで沸かす難波ガラスのやり方は、後々とても役に立つものだった。ただ、作業場の散らかり具合まで似てきたのは、困りごとだ。

いつの間にか35

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ガラス溶解炉を作る場所が必要なので、庭の広い家をと探して借りたのは、35年前だった。そのときこの家の借主は若い夫婦に決まりかけていたそうだ。結婚したばかりの妻は、慣れない土地でひとり夫の帰りを待つのに台所の窓から墓が見えるのは不安でならないと直前に取りやめたそうだ。
目の前の畑のりんごの木は切られたしまったが、この窓からの景色は35年前とほとんど変わらない。
隣の桃の畑がアパートに変わって、夏が暑くなった。
毎年秋に境内で獅子舞と仕掛け花火が行われる犀川神社。そこへいく道は人ひとりしか通れなかったのが広くなり車が通るようになった。そして、さらにアパートが一棟二棟と増えた。
犀川神社に行く途中には、安寿さんがひとり住む阿弥陀堂があった。安寿さんがなくなり、なかに阿弥陀仏を祀る公民館に建て替わった。
作業場の横には沢が流れている。そのせいで、まわりよりも気温が低く、冬は寒く、春の花の訪れも遅いが、暑い季節にガラスを吹くのには助かっている。

なにやさんなの?

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ときどき呆れたように言われる。
電源入れてもあかりは点くけどそれだけで立ち上がらない、診てくれよと西表島から2009年のwhite macbookが送られてきた。起動システムが誤動作してるだけで故障ということもないだろうとたかを括っていたので、届いたmacbookの電源を入れて、案の定、ボ〜ンと言って画面が灯ったときなには、やっぱりとニンマリとした。ただそこまででそれっきりだった。その先に進むことはなく二度と画面が灯ることはなかった。バッテリーを交換したりといろいろ試したのだが、そのうち、電源を押してもうんともすんとも言わなくなった。ここで、もうお手上げ、ロジックボードの交換には二の足を踏むし、ましてや故障箇所を探しての部品を交換などは夢のまた夢。 悪いことにデーターまでが壊れてた。安いのをネット探して2011年のmacbook pro core i7 を購入した。性能はいままでよりかなりいいはずだ。メモリーを増やしてSSDに交換すれば充分に使える。データーは西表島にあるTime Machineから復元してもらうことで我慢してもらった。
そのmacbook が西表島に着くのになぜか10日間かかった。着いたの連絡をもらったころに、鳥取の知人からインスタグラムのダイレクトメッセージに「電源が入らなくなりました。ダメ元でいいから、診てくれたら泣いて喜びます。」と入っていた。こちらは電源を押している間だけ、ランプが点滅するという症状だった。やはりお手上げ。データは全く影響を受けていなかったので、ハードディスクをケースに入れて、ダンボールにりんごも一緒に詰めて送り返す予定。
そんな2020年の10月です。ジャンクのmacbookが手元に残るのは初めてのこと。秋になってこんなにせっせとガラスコップを作るのもガラスの箱詰めに忙しいのもめずらしいこと。事前に3通も書類を送るようなグループ展は初めてのこと。いつも暇になる秋にJavaを勉強してみようと、なぜか先にサーブレット&JSPの本から読み始め、いよいよJavaの本を開く手前で10月のいそがしさに迷い込んでしまった。

クラフトフェアまつもとが中止になって

そういえば、一昨年からクラフトフェアまつもとの参加作家の出店場所がすぐにわかるようなシステムを作ろうと画策しています。ウェブ版はほぼ昨年で出来上がったのですが、グーグルマップの仕様の変更で心配事が出てきてしまいました。そこで、今年はiosアプリに挑戦してみようと、嫌だった2ファクター認証に切り替え高額な年会費を払込んでアップルデベロッパーに登録し、準備万端整えてクラフトフェアまつもとの開催を待っていました。けれど秋に延期、そして中止。来年がんばるぞ!でも、いいのだけれど、これがまたたいへん。いつもはガラス屋なので年に一回のこと、前の年のことをすっかり忘れていて同じことを思い出すのがたいへん、そのたいへんなことを始めようとする心の持っていきようがひと苦労なのです。しかし、ここで萎んでいくのはやりきれず、また3月のころに気持ちをグッと持ち上げていきます。





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