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鬼と子龍

📌鬼と子龍


川の方から
ピーィピーィ と聞こる

川の浅瀬に
小さく ひ弱そうな

子龍が居た

龍なんて放って置けばよいと
思ったが…

怪我が目に入り

子龍を川から上げた

羽織っていた服を
叢の中に敷き
子龍を降ろし
側で取れた木の実を置き

運が良けりゃ
生きれるだろう? と

言い去ったんだ

📌鬼と子龍②

冷たい川の水に
身を削られてる

傷口に水が鋭く刺し込む

鳴く事だけが
唯一の抵抗と
落ちる意識に反抗してた

けれど
川の中で
僕は気を失ったんだ

気が付くと
羽織り物の中に寝ていた

薄れる意識の中
見えていたのは
鬼の姿…だったか と

羽織り物からは
強い杉の薫りがしていた

📌鬼と子龍③

あれから
傷が治って

空を飛べるくらいに
回復したんだ

あの服からは
杉の樹の薫りがしてた

きっと
此の山の上なら
気付く筈と
旋回して飛んだ

気のせいか
あの鬼と
眼が合った様な気がした

其処に
居たのかもしれない

風が吹く度に
杉の樹が薫る
此の景色の中に

📌鬼と子龍④


自分の縄張り近くに棲む

顔見知りの鬼が来て言う

『近頃 此の近くを゙大鉈の鬼゙が
 彷徨いている』 と

噂で聞いた事がある鬼

大鉈の鬼は
人でも鬼でも
気に入らなければ
大鉈で切って行く

鬼達の中ても
噂になっていた

📌鬼と子龍⑤


顔見知りの鬼は

度々 山に来て物々交換と称し

持って来た物を置いて
山の物を勝手に持って行く事を
よくしてた

会えば世間話をする仲で

「また大鉈の鬼が
鬼を斬り付けたらしい」

「またか此の辺を
彷徨く様になって どの位経つ?」

「もう数十年は経つだろう?」と

こんな感じだ

📌鬼と子龍⑥


今夜は
強い月明かり

夜空は
黒さが無く
闇の雰囲気も薄れて
わずかに緑みを帯びた
暗い青色

鉄紺色の夜空だ

今宵は満月

深く高く夜空に響く声に
振り向くと

龍の声だ

一陣の夜風が
山を吹き抜けて行く

鉄紺色の龍が
夜空を駆け抜けて行く

夜空を纏う龍
夜空に溶けて行くんだ

📌鬼と子龍⑦


鉄紺色の夜を
楽しもうと
山を歩く

道の先に

顔見知りの鬼が
知らぬ鬼と言い争っていた

間に入るが
争う鬼達の声が
どんどん大きくなる

低い声で
どんどんどんどん
地響きも起こる位に

もう
手が付けられない程に

鬼同士の
諍いが止まらないんだ

📌鬼と子龍⑧


夜の大騒ぎに
気に要らない者が
怒りをぶつけて来る

気付いた時には遅かった

あの
大鉈の鬼が騒ぎの中心を目掛け
大鉈を振り回す

大鉈が当たったのは
自分の角

根こそぎ斬られた

鬼は角がなければ
生きていけない

身体中に走る激痛に
声にならない
叫び声を上げ
意識も焼き切れた…

📌鬼と子龍⑨


死んだ……と

思ったんだ
…身体中が痛い
動けない キツい辛い…

…生きてる…?

意識朦朧の中
手探りで
無い筈の
自分の角を確かめた

が…

此れ?角…?

もう意識が限界で
眠りに落ちた

📌鬼と子龍⑩


何とか
身体が動ける様になり
体力も大分回復し
歩ける様になった

改めて
自分の角を確かめると
元の角とは
全く別物の
角らしき物がある

あの夜に
何があったのか…

確かめる為に

顔見知りの鬼を
態々探し
会いに行った

📌鬼と子龍⑪


顔見知りの鬼は言う

大鉈の鬼は
用は済んだと早々に消え

知らぬ鬼は
関係無いと直ぐに逃げた

其の後だ
龍が現れたんだ

お前の叫びが聞こえて
此処に来たと

龍は
自分の角の一部をを折って
お前に付けたんだ

そして

「運が良けりゃ
生きれるだろう? 」と

笑いながら言ってた

📌鬼と子龍⑫


助けてくれたのは

鉄紺色の龍で

怪我してた子龍で…

龍の角を持つ鬼は

陽が沈む夜を待つ

山を駆ける風が吹き

深く高く夜に響く龍の声に

夜空と龍を知る

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