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妖と山桜

📌妖と山桜①


妖は森の中ある
闇の薫りが濃い場所に行く

其処には
葉も無い弱った
闇色に染まった山桜と

幹に寄り掛かる
朽ちた闇の者の躯

妖は
此のまま
逝こうとしてるのか? と
山桜に問う

山桜は
静かなままで
冬風に凪いでいるだけだ

📌妖と山桜②



妖は山桜に

お前に聞いても
答えぬなら
此の者なら代わりに答えるか?

なんて言って
闇の者の躯を見て
妖は嗤う

山桜からの
強い不穏な気配が
妖を包むが

妖は気にせず
夜桜に言う

此の者の呼び方
知っているのだろう? と言い

闇の者の躯に
薬草を煎じた薬を掛けたのだ

📌妖と山桜③

春に山桜を見に来る闇の者がいた

月明かりを避ける様に
山桜を見に来る闇の者を

春風に花弁を乗せ呼ぶ様になってた

だから ずっと
花を咲かせ続けられたらと
強く願ってた

と感情露わにした
山桜は闇の力で
満開の桜を咲かせたのだ

📌妖と山桜④

妖は
躯では霊魂が安定して
留まれやしないからな と

薬を掛けた
闇の者の躯が姿が変わるのを
見続けていた

そして気が付けば
其の傍らで
山桜が満開になってた

妖も見惚れる
満開の山桜の姿だ

綺麗だなって

思って見てた

呼ばれた身体の持ち主が
帰って来たみたいだ

📌妖と山桜⑤

薬で変形した躯に
闇の者が入って
ぎこち無く蠢くのを見て

妖は

随分と醜い獣になったものだ と

可笑しそう言う
妖は山桜に聞く

いくら闇の力を持っていても
強く願わないと霊魂は呼べ無い
何と思って闇の者を呼んだ? と

と妖は問うのだ

📌妖と山桜⑥


山桜は 妖の問いに

ずっと
花を咲かせ続けられたらと
強く願った事を
思い返していた

妖は山桜に言う

強く願った事は
呪いになる
何を願ったのか知らないが…

と言うと妖は去って行った

闇の者は以前と違う
全身黒い獣の姿になったが

間違いなく
あの闇の者の気配を纏っていた

📌妖と山桜⑦


此の森の闇の気配が有る処

闇色に染まった
山桜の木が有って

桜の花は
赤みの強い
山桜の色のままに咲く

其の山桜が
常に満開で咲いているのだ

其の傍らには
醜い黒色の獣がいて
容易には近づけない

森の者達は皆
あの山桜の事を

万年桜と呼んでいる

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