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あるイラストからの創作詩

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Twitterで絵を創作題にして書いた詩です 📌Twitterリンク先を貼ってあります
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#創作

夜の扉

此の扉の開け 僕は行くよ 陽の扉の世界は マスクを外せなくて 息苦しいんだ 夜の世界に紛れ 夜に喰われても 普通に 息が出来る場所に 居たいんだ

柑橘

飲み込んだ 柑橘の実の 思わぬ強い酸味 触れた所から 口が爛れていくんだ 果汁がジリジリと 喉を焼いて 声も出せず藻掻く 柑橘の実の落ちた 腹の中から 此の身を焼け爛れさせ 溶かしてく

寝物語

今夜は寝物語に 何を聞かせようか 代々呪われた者達の話 無惨で残酷な話 欲にまみれた者達の話 恐怖と不愉快な話  と、 目を覆いたくなる様な話をして 目を閉じさせていく 私の寝物語を聞いた者は 目覚める事が無く 悪夢の中を 彷徨い続けている

鳴きたく無いのに 鳴いて居たくなる 泣いてたく無いのに 泣いて痛くなる 遠くに響く咆哮 心に響く涕泣 居たいんだと痛いんだと 鳴いているよ 泣いているよ ないているんだ

本とTV 

積読された本とTV 何方を見るか 今夜の気分で選ぶんだ ただ 本を広げている筈なのに TVを点けている筈なのに ある事がスイッチになり 思考の迷宮に迷い込む 視界に靄が掛かり 本もTVも見れてないのだ 其処に居ないのに 眼に映らないのに 心に映り込むものを見ているんだ

なかなおり

もう、かなり衰弱してた 息をするのも 苦しそうで 痛々しかった 心配で伏せている 私の前で "僕はもう大丈夫だよ 泣かないで" なんて元気な姿を見せて もう大丈夫なんだ と私に思わせて… あの時の姿は 逝く前に 私に言いたい事を 伝える為の "中治り" だったんだね

墨色の空 

燃え尽きた空は 墨色の空 景色は灰に 世界は炭になった 炭から出る煙は 真っ黒で 星さえ見えない 此の世界で生きて居た者の 表面の皮膚を焼き 生命有った者の形を 此の世界に残した 生命の欠片を遺せたのだ

腐怪

其の身は腐り腐敗し 奇形化した身体 人の形は、既に無く 足も腐れ膨れ捥れたか? 変形しても 膨れ上がった瞼で 瞳の在り処が分かる 醜き顔 もっと 其の身体が 腐り腐敗して 朽ちるのは未だか? と カラスは側で 死臭が漂うのを待つ

ワイン

痩せこけた身体を 大きな布で包み隠し パンとワインを頼む ワインを飲むと 地べたを這いずる複数の音 音に気を取られ グラスを落とした 下を見ると物欲しげに 此方を見てくる者が居る 零したワインの赤が ヤケに鮮明に見えるのだ 這いずる者が欲するのは ワインか? それとも…

薄闇色

薄闇を描いた キャンバスを前に 血を混ぜた赤色が零れた 描こうとしたのは 血生臭さの表現 本物なら描く事が出来るかと 誰かの血を手に入れたのに 勿体無い 描く前に零したのだ 柩の上の 筆差しの中に 死者の為の一輪の花 倒れた空き缶からは 零れた赤色が滴り 血の臭いが漂う

鏡や硝子に 映る自分の姿は 本当に、自分の姿か? 人の目に映る姿と 違って見えて無いか? 見なければ 気付か無ければ よかったのだ 無表情に過ごす自分に こうして 側に居てくれる人の 表情さえも 見え無くなるのだ