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コンセプトアーティストという職業

子供の頃「コレが未来の車だ!」みたいなイラストを見てワクワクした人は多いんじゃないだろうか。


「コンセプト」という言葉は、既に和英語としても定着して、普通に使われている感がある。直訳すると「概念・発想・構想・考え」転じて「基軸となる方針」のような意味で、原語とほぼ同義で使われている。


僕はイギリスのゲームスタジオでコンセプトアーティストという仕事をしている。

コンセプトアートというのは、ザックリ言ってしまえば「完成予想図」だ。いわゆる青写真、プロジェクトの最初に、散り散りの漠然としたアイデアや仕様をまとめて、想像図を可視化・具現化する作業だ。これによってチームが目的地のイメージを共有できたり、ピッチング資料に用いて出資を募ったりできる。


コンセプトアートは、プロジェクトに応じて大小様々なスタイルのものが作られる。

例えば映画とかハイエンドゲームのコンセプトアートは、超絶絵師による超絶リアルアートが多く、一瞬で場をどよめかせる破壊力を持つ。しかし画面インプレッションやムード重視なので、よぉく見ると細部は「雰囲気描き」だったりもする。一方、ミニマルなプロダクトのコンセプトの場合は、ファッションデザイン画のようにラフスケッチぽかったり、逆に設計図やインフォグラフのようにかなりカッチリと現実的な仕様に落とし込まれていたりする。

要は「こういうものを作ろうとしてるんだ」という共通理解、それと同時に「すげー面白そう!」という期待感が得られれば、それはつまり良いコンセプトアートである。上手下手は最重要ではない。しかし制作ラインが進む過程で、様々な事情により仕様は変化していくので、初期コンセプト通りに完成に至るケースは稀である。そしてどんな美麗アートも基本的にはプリプロ資料であり、表に出て来る事は殆ど無い。


僕自身は、割とどんなスタイルも描き分けるジェネラリストタイプだが、個人的には、細かいディテールや説明書までごちゃごちゃ描き込まれているコンセプトアートが大好物だ。宮崎駿とかがよく描いてるストーリーボード的なやつ。想像力を刺激されて、ついワクワクしてしまう。

以前姪っ子が「夢のおうち」を描いていた事があった。「ここはリビングでここがキッチン。ココを押すとアレがこうなって…」高純度イマジネーション。僕が常日頃目指しているのも要はこれ、つまりは楽しい楽しい「夢の何か作り」だ。一応僕は大人でプロなので、当然スペックやコスト、クライアントやマーケットまで意識しながら描く訳だが、メンタル的な部分では実は姪っ子の年頃から全然成長していないとも言える…。

僕も子供の頃から絵を描いていて、まかり間違ってプロになった。アーティストとかいうと、なんだか特別な才能を持ってて、天から降りてきたアイデアを黙々と生産していくようなイメージがあるが、他の様々な仕事と変わらず、実はかなりプロダクティブなチームワークだったりするのである。


ものづくりは楽しい。産みの苦しみも含めて、まだこの世界に無い新しいものが現れるのは、いくつになっても興奮する。その中でも、コンセプトアートというのは始まりのプロセスだ。なにせ何もない段階からいきなり完成図を描くのだ。ディテールばかりに拘っていたら、基軸はブレブレになってしまう。「カレーを作ろうとしてた筈が、気付いたらラーメンになってた」とならないよう、俯瞰思考で全体のバランスを保ちながら、想像と現実の間で「夢の何か」を実現へ導いていくのだ。


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